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「餡子好きは絶対に誤魔化せないで!」

平日昼下がりのフィットネスのサウナでは、健康のためにフィットネスとサウナに毎日通っているという初老のおばさんたち数人が汗を流していた。
みんなヨガなどのグループレッスンの仲間なのか親しそうにおしゃべりをしている。
その中の「大の豆好き餡子好き」と言うおばさんの話していることがとても面白かった。

お豆さん。特に黒豆と小豆は大好きで新年には一年分の黒豆と小豆を買い、ぜんざいや煮黒豆は、常に作り置きしているという。
餡子も大好きで当然和菓子には目がない。
特に6月の和菓子として有名な「水無月」は大好きであちこちのお店に買いに行くらしい。

6月の和菓子水無月

そしてこれまた大好きなのが御座候(ござそうろう)。
小麦粉と卵の生地の中に餡子を入れた焼き菓子で地域によって回転焼、大判焼、今川焼などの呼び名がある。
御座候は、姫路の和菓子屋さんの商品名らしい。
安くて美味しい!
もちもちの皮にたっぷり餡子。
御座候のお店には、たいてい行列ができている。

この餡子好きおばさん、以前は大阪市内まで御座候を買いに出向いていたが数年前に家の近くにできたショッピングモールに御座候が入ったので大喜びでいた。
ところが、「ムムム??」と思うことがあり、ある日店員さんに詰め寄った。

「ちょっとここの店の御座候、他の店の御座候と違うんちゃう?」

「いいえ。同じ御座候です。」

「絶対ちゃうと思うわ。ここのんな、薄いねん、薄い。味も薄いし皮も薄い。
そやからここから家まですぐやのにその間に皮が破けてる時あるねんで。おかしいやんか。」

「いいえ。他の店と同じ御座候です。」

「絶対にちゃうて。私な、めちゃくちゃ餡子好きやねん。餡子好きは絶対にごまかせないで!」

そこで店長登場。
「申し訳ございません。ふつう50個作るところを52~53個作っていました。」

「そやろ。やっぱり。そやと思てん。なんかちょっとちゃうねんもん。私は誤魔化されへんで。はははは。」


!!!すごっ。
このおばちゃんは、50個の分量で2、3個多めに作ったことを長年の餡子好きの勘で見抜いたのだ。
へえー。すごいなぁ。
・・・・なんて感心してたら御座候が気になって、気になって、帰り路でそのおばちゃんの話していた店で御座候を買ってしまった。

御座候

ひょっとしたらあのおばちゃんは御座候の営業の人やったんちゃうかなぁ・・・。
まんまと買ってしまったがな・・・。
おばちゃんの話も実際ウソかホントか分からない。
皮も破れてないしいつもの美味しさだった。



この話をいつも髪をお任せしている美容師さんに話した。

「50個のところ数個多く作ってたって素直に認めて謝る店長さん、憎めないですねェ。店長さん、嬉しかったんとちゃいますか。そんな些細なことにも気づいてくれるほど御座候が好きなお客さんいるねんもん。おばちゃんの言い方もただのクレーマーと違って愛がありますやん。
いいなあ。いい話ですやん。
私も御座候食べたくなってきたわあ。美味しいもんねえ。」

まったくその通りやと思います。
きっとこの美容師さんも御座候買って帰らはるんちゃうかな・・・。笑













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