バンコクマダム連載コラム『タイ生活』より  第16話・・・「ピー・スワイ」

ピー・スワイというのは、うちの近所のちょっと裕福なタイ人のお宅のお手伝いさんをしていたラオス人の女性スワイさんだ。
ピーは、年上の人に付ける呼称だ。近所のおばちゃんたちは、彼女のことをそう呼んでいた。その頃40歳になったばかりの私は、ピー・スワイをずっと年上の50代後半だと勝手に思っていた。40歳近い息子がいると聞いていたし見かけもそれぐらいに見えた。
近所のおばちゃんたちが毎日決まって井戸端会議をする時間がちょうどピー・スワイの暇な時間なのかピー・スワイもよく会議に参加していた。そこからの情報によると、ピー・スワイには、27歳の長男を筆頭に7人の子供がいるらしい。家を建てる資金調達のためにご主人と夫婦でタイに出稼ぎにやって来た。ピー・スワイは住み込みのお手伝いさんに、ご主人の方は、なんと!来てすぐにタイ人の恋人ができ、そっちへ行ってしまった。ありゃりゃ・・・


ピー・スワイは、井戸端会議の人気者だった。彼女の話は、タイ人のおばちゃんたちをたまげさせる内容がいっぱいだったのだ。アメージングタイランドもビックリのアメージングだ。50代後半と思っていた年齢も、本当は当時の私とあまり違わない40歳過ぎだったらしい。
長男が27歳って・・・。
結婚したのは、なんと14歳の時なのだそう。
「結婚するのが早いねえ~」とみんながビックリしていると、さらに追い打ちをかけるビックリの事実が!
なんとご主人は2つ年下なのだとか・・・!!14歳の2つ下って、どう数えても12歳やよなぁ。えっ!?ひよっとして小学生!?驚きモモノキだ。

働き者で倹約家のピー・スワイは、こつこつとお金を貯め、家を建てる資金もできラオスに戻る日が決まった。その頃から、いつもの質素なブラウスとパートゥン(腰布)姿とは打って変わったオシャレとメイクをして出掛けるピー・スワイを見かけるようになった。珍しいなぁ、一体どこへ行くんかなぁ・・・と近所のおばちゃんたちも気になる、気になる。

その行き先は、タイ人の恋人のところへ行ってしまったご主人とヨリが戻りデートに行っていたらしい。それを知った近所の井戸端会議会員のおばちゃんたちは、余計なお世話と知りつつも心穏やかでない。
「なんですってーっ!ダメ、ダメ。そんな男。妻が一生懸命に働いてお金を貯めている時はよその女の所に居て、さあ家を建てるとなったら帰って来るなんて!都合よすぎの勝手もんでしょっ」とみんなで寄ってたかってピー・スワイのご主人を大非難。
当のピー・スワイは、何を言われてもニコニコと黙って聞いているだけ。そして、いよいよ帰国となった時ピー・スワイは、とても嬉しそうに自分の元に戻って来たご主人とラオスに帰って行った。
人の幸せなんてその人にしか分からないものだ。ピー・スワイは、他の人が何と言おうとも幸せだったんだろうなと思う。今もラオスで14歳で一緒になった2つ年下のご主人と新築した家で仲良く暮らしているのだろう。



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これは、タイのフリーペーパー『バンコクマダム』に2013年から連載させてもらっているコラムをちょこっと編集し、まとめておきたくて書き留めています。

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