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韓国製造業と日本と民族主義と

◉朝鮮日報が興味深い記事を配信していました。韓国の産業は、朴正煕大統領の時代に結ばれた日韓基本条約と、その後の技術的な協力のおかげで、日本の産業と似たものが多いです。鉄鋼や造船、自動車産業、家電、半導体などなど。ジャンルによっては、日本以上に発展しているのですが。産業構造的には、日本からの部品に頼っているというのは、あまり韓国人には知られていないようで。こういう記事は珍しいですね。

【サムスン半導体もLGバッテリーも…日本製の素材・装置がなければ生産ストップ】朝鮮日報日本語版

韓国最大手の電池メーカーであるLGエナジーソリューションは、液体化学物質である電池を安定的に包む重要素材である「アルミニウムパウチフィルム」を日本の大日本印刷、昭和電工から輸入している。2019年に日本が半導体・ディスプレーの重要素材3種類について、韓国に対する輸出規制を実施すると、LGも速やかに代替供給元の確保に乗り出した。同社関係者は「国内と中国メーカーに接触し、製品テストを実施し、納品を受けるために各方面に問い合わせた」と話した。
 しかし、LGは現在も世界市場の70%を掌握する日本企業2社の製品を使用している。複数のパウチフィルムをテストしたが、価格と性能のいずれも基準を満たさず、量産は到底不可能との判断を下したからだ。それ以外にも二次電池の電極を安定させる正極・負極バインダー、電解液添加剤、銅箔製造設備など日本に絶対的に依存する製品が依然として多い。韓国自動車研究院のイ・ハング研究委員は「国内企業が国産化に取り組んでいるが、ノーベル化学賞の受賞者を何度も輩出した日本が重要な技術の特許を相当数掌握している状況だ」と話した。日本の技術特許を避けながら、素材・部品・装置の国産化を進めるのは口で言うほど容易ではないのだ。

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、釜山港国際旅客ターミナルだそうです。

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■対日依存の韓国経済■

日本と韓国の経済的な関係を、鵜飼いに例えたのは経済学者の小室直樹先生でしたか。日本は韓国にいろいろな技術移転をしましたが、そこは何も善意ばかりではなく。韓国の産業が発展して儲かると、そのために必要な部品や素材、工作機械などを日本から輸入しないといけません。フッ化水素の輸出管理強化で明らかになったように。その結果、韓国の対日貿易は慢性的な赤字というのが実情です。

韓国の日本に対する貿易収支の赤字は、2004年から年間200~300億ドルで推移していましたが、日本政府による韓国への輸出管理強化措置と日本製品の不買運動が影響し、2019年には16年ぶりに過去最低の192億ドルとなりましたが、去年は再び209億ドルに増えました。

なのでこの記事は、多くの韓国人にとっては〝不都合な真実〟だったりします。韓国の掲示板翻訳サイトなどを見ますと、こういう事実を知らずに、SAMSUNGはパナソニックやソニーを抜いた、と自慢してる人が多いのですが。残念ながら、まだまだ地力の点では脆弱と言わざるを得ないでしょう。韓国は北海道ぐらいの面積で、日本の半分以下の人口、経済的な実力は3倍から8倍の開きがあるでしょう。

■韓国と日本と米国と■

もっともこれは、日本とアメリカの関係にも似ています。やはり経済的な面では日本とアメリカの差は、数字以上に大きいです。毎年当たり前のごとくノーベル賞科学者を輩出するアメリカの、基礎研究の強さと膨大な知的財産は、日本はもちろん世界的にも圧倒しています。日本やドイツやイギリスやフランスイタリアなど、G 7の他の国が束になっても叶わない程度に。石原慎太郎氏的な国粋主義に、自分が与しない理由でもあります。

そして韓国のナショナリズムと言うか国粋主義は、石原慎太郎氏の意見に近かったりします。これは Twitter などでも昔から、繰り返し書いてることですが。でもそれは当然で、中華帝国のコピーになることが国是であった朝鮮半島に、民族主義を教えたのもまた、日本だったのですから。極真空手の大山倍達総裁や、その師匠である曺寧柱が、石原莞爾に心酔し、思想的な影響を受けたように。

日本というのは、中国の後漢王朝が黄巾の乱で混乱し、人口が1/3とも1/10ともいわれる大激減をへて、おおきく落ちた時期に、民族主義の萌芽が生まれた部分があります。もっともこれは日本だけの話ではなく、ベトナムや朝鮮半島などの周辺国では、同じような状況でした。ところが、三国時代から五胡十六国などの混乱の時代を経て、隋唐の巨大な統一王朝が出現すると、事情が変わってしまいます。

■民族主義のルーツは■

隋王朝は高句麗との対外戦争での敗北などもあって、比較的短期間で滅亡してしまいましたが。唐王朝は強大な国家として、高句麗を滅ぼしてしまいます。当時半島の新羅は、高句麗や百済よりも遥かに国力は低かったのですが、唐王朝に接近することによって、高句麗と百済を滅ぼしてしまいます。これに対して、大和朝廷は白村江の戦いで百済復興を目指すのですが、大敗。

日本は、島国という地の利を生かして、天下とはこの日本列島だけであると言うごまかしで、一種のモンロー主義を採用します。鎖国の原型と言ってもいいでしょう。そして、日本国号・天皇号・元号という三つの号を用いることによって、擬似的な中華帝国になろうとした部分があります。聖徳太子による対等外交への試みなどにも表れているように、日本というのはそのアイデンティティの深いところにナショナリズムがあります。

それは、大文明の周辺の小国としては、よくある反応ではありました。朝鮮半島はその地理的な位置から、そのような民族主義者国粋主義がうまく育ちきらず、李氏朝鮮時代には中華帝国のコピーになる小中華主義を、とらざるを得なかったのですが。外国と文明開花によっていち早く西洋文明を取り入れた日本が、朝鮮半島を取り込む歴史の中で、民族主義を教えた部分があるわけです。根っ子が一緒だから似ていて当たり前ですね。

■反米主義の限界とは■

その意味では、こじれている日本と韓国の関係というのは、日本とアメリカの関係を考えると、整理できる部分はあるでしょうね。日米関係というのも、国際法違反の大都市空襲による非戦闘員の大量殺害、原子爆弾の使用など、アメリカに対する抜き難い反発は存在します。60年安保や70年安保の学生運動があそこまで盛り上がったのも、左翼の側というよりも一般の日本人の心の奥深くにあるナショナリズムが、応援した部分が大きいでしょう。

しかし現実には、もう一度日本がアメリカと戦争して、勝つことはできません。その恨みを持ち続けるのか、どこかで折り合いをつけるのか。そして、左派からはウルトラ極右などと呼ばれていた安倍晋三総理大臣の時代、アメリカ議会で演説し、オバマ大統領の広島訪問を実現させたわけで。外祖父である岸信介も、本質は国家社会主義者であり、反米ナショナリストなんですが、アメリカとの和解と共存を選択したわけです。

現状の日本は、アメリカの属国状態ではありますが。相手の懐に飛び込むことによって、信頼を得て、その状況から抜け出すのが現実対処的と言えるでしょう。国粋主義者にはそれが不満でならないとしても。たぶんそれは、反米を軸においてもダメだという福田恒存の思想に近いものですが。三島由紀夫や西部邁氏は、反米ナショナリズムに、傾倒してしまいましたが。韓国と日本の関係も同じ。韓国は反米ナショナリズムも抱えていて、そのぶん根深いですが。

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