◉京都アニメーション放火事件の犯人は、京都アニメーション大賞に応募した小説を盗作されたと妄想をつのらせ、逆恨みから犯行に至ったのですが……。彼の小説は応募は形式が整っておらず、一次審査で落選していたようです。規定のページ数を守っていない投稿作とか、あらすじによほど魅力がない限り、スパッと落とされます。だって、そういう作品ですごい内容なんて、100本に1本科それ以下ですから。また「400字詰め原稿で178~536枚が規定枚数」と書いてあるのを、400文字×536枚=21万4400文字以内と誤解して、ワープロアプリの字数表示を元に、規定オーバーの作品を投稿してしまいます。
文字数ではなく、改行した後の空白のマス目も含めてですから、400字詰めの原稿用紙に入る実際の小説の文字数は、250文字から350文字ぐらいでしょうかね。京都アニメーション大賞は、手書き原稿でも大丈夫でしたが、原稿用紙にプリンターで出力して送ったりとかも、かなり読みづらいです。そういうところはクリアしても、基本的なルールを守っていない応募作とか、ちょっと調べればわかることも守っていないのかと、かなり不利になりますね。なので、中学生が小説などの縦書き原稿を書くときを想定して、最低限のルールを簡単にまとめてみますね。
ルールという書き方をすると〝そうしなければならない義務〟と誤解する人もいるのですが。バスケットボールやバレーボールのルールが変わるように、ルールは何も不磨の大典でもなければ、金科玉条でもありません。都合に合わせて、変えて良いのです。なので、マイルールぐらいのつもりで、自分なりに執筆の禁則事項をカスタマイズすればいいと思います。本当に、ごく基本的なことですから、読む人が気持ちよく読める文章を、意識しましょう。
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①字下げ
・小説の行の始まり(行頭)は一字分空ける(全角下ガリ)
・書き出し・改行後など、地の文章は行頭に一字分の空白を設ける
・ただし、カギ括弧などを使う場合には不要
②約物
・約物(punctuation mark)とは、記述記号の総称
呼び方と使い方を覚えておくと便利
・踊り字(重ね字・送り字・繰返し符号・反復符号)は項目⑨で解説
・音符(♪♬)やハート(♥)や矢印(↑↓→←)なども約物とすることも
③句読点
、:読点 文章の区切りに用いる
。:句点 文の終端を意味する
「 」内の文章の最後に句点を基本的に入れない
・引用文の場合は、句点を入れることもある
理由:引用文がそこで完結していることを示すため
④感嘆符と疑問符
・感嘆符と疑問符の後は一字空白にするのが基本
・感嘆符(!)や疑問符(?)の後に句読点は不要
理由:それ自体が句点の代わりなので
・ただし文脈によっては空けない(特に強調のための使用)
文脈が読めず、機械的に感嘆符や疑問符の後に空白を入れる編集者や校閲マンがいるので、
・彼は「いい加減にしろ!」といいたげな顔で、まくし立てた。
など、括弧で囲む方が無難。ただ、鉤括弧を使うと幼稚な感じになる。なので、ダブルミュートを用いて、
・彼は〝いい加減にしろ!〟といいたげな顔で、まくし立てた。
の方がオススメ。
⑤全角と半角
・文字には全角文字と半角文字がある
・全角は原稿用紙の升目1文字分
・半角はほぼ半分の大きさを想定(文字によって異なる)
・小説では基本は全角文字を使う
特に欧文と数字は使用に注意
・括弧類は横書きだと差に気づきにくいが、縦書きだと一目瞭然
例:(全角の丸括弧)と (半角の丸括弧)の違い
・括弧類は基本全角
半角だと縦書き表示にした時に表示が崩れることもある
半角の丸括弧は避けるほうが無難
・横書きだと、全角と半角の違いを、さらに気づきにくい
・アルファベットは縦書きは全角が基本
・半角文字だと縦書きにした時に文字が90度転倒する
全角の例:Tシャツ 容疑者X
半角の例:Tシャツ 容疑者X
・英語の略称は基本は全角で
例:WWF IMF
・長い単語は、縦書きでも基本半角
・ただし固有名詞は全角表記で統一する出版社もある
・英語でも略称は4文字から独自読みになるので
例:NATO(ナトー) Gafa(ガーフぁ)
略称や固有名詞でも、4〜5文字以上は半角のマイルール設定でも良い
例:DWCNT: Double Wall Carbon Nanotube
二層カーボンナノチューブ
⑥数字の表記
・数字は漢数字か全角数字が基本
2桁と3桁は半角数字で書き、組版で縦中横処理で90度回転する出版社も
・4桁以上の数字は全角にする事が多い
理由:本作り作業(製版)での文字の調整が難しく、読みづらくなる
・命数(十・百・千・万・億)を用いるのが基本
例:一万年と2千年前から愛してる
・時に省略も有効
例:昭和六十三年→昭和六三年
・〇(ゼロ)を有効に使う
例:十二月三十日→一二月三〇日
例:一億五千三百二十万円→一億五三二〇万円
⑦括弧
・括弧は多様な種類がある
・使用法に傾向はあるが、必ずしも明確ではない
・欧米では16世紀から数学の記述などで使用され始める
・日本ではオランダ語の訳書での使用が最初で19世紀
・明治以降に一般にも普及した、新しい記述記号
「 」鉤括弧:
会話・ダイアローグに主に使う
引用や注意語句にも使う
( )丸括弧:
独白・モノローグに主に使う
※モノローグは本来、独り言の意味
口に出さない心の声=心声 をできれば普及させたい
『 』二重鈎括弧:
書名・題名・企業名・固有名詞などによく使う
小説では括弧内の会話に使う作家もいる
〝 〟ダブルミニュート:
本来は強調する語句などに使う
括弧内の会話で『』の代わりに使う作家もいる
理由:『』は書名や題名など専用にして使い分けるため
[ ]大括弧:
本来は補足説明や注記など
角ばっているので機械音やシステムメッセージに使う作家もいる
{ }波括弧:
本来は補足説明や注記などで多く使われる
〔 〕亀甲括弧:
本来は補足説明や注記など
小説では機械音やスピーカーからの音に使う作家も
テレビ・ラジオからの音に使う例も
システムメッセージに使う作家も
〈 〉山括弧:
引用や言葉の強調で多く使われる
小説では地名や技の名前
渾名や通称に使う作家も
《 》二重山括弧:
引用や言葉の強調で多く使われる
電子書籍のルビ指定にも用いるので使わないほうが無難
【 】隅付き括弧:
タイトル・見出し・語句の強調などで多く使われる
新聞や雑誌の見出しに使われる
例:【緊急速報!!】今夜あの大物が重大発表【離婚か?】
「「 」」鉤括弧の重ね:
複数人のハモリ表現に使い作家もいる
※二重大括弧〚〛がハモリ表現には向きそう
オマケ:
・各種括弧の呼び名は、いろんな呼び方がある
・出版社ごとのローカルな呼び方があるので注意
・単純に括弧と呼ぶ場合は丸括弧のこと
⑧省略符
・省略符=リーダー=…
・二点リーダー‥と三点リーダー…がある
講談社以外は三点リーダーが主流
※ただし近年は講談社も使用が減っている
・基本的に2文字分を連結して使うことが多い
1文字分と3文字分とを、意識的に使い分けるといい
⑨長音記号
・長音符・長音符号・棒引き 伸ばし棒とも
例:「あー、それは気づかなかったわー」
・慣用的に省略することもある
例:コンピューター→コンピュータ エレベーター→エレベータ
・半角の長音記号は小説では基本的に使わない
・いくつかバリエーションが有る(表示できないこともある)
波ダッシュ(~)
WAVY DASH(〰)横書き用 俗にブル罫とも呼ぶ
WAVY LINE(⌇)縦書き用 比較的新しい
⑩ダッシュ
・ダッシュ=ダーシ=―
長音記号(ー)とは異なる
・基本的に2文字分連結して使うことが多い
ダッシュの2文字分連結では間に隙間ができることもある
デジタル製本では実際には罫線(──)を代用している
リーダーやダッシュの使い方に興味がある方は、こちらの本をどうぞ。文章の微妙なニュアンスを、単純な文章で学ぶ良書ですと自画自賛しておきますm(_ _)m
⑪踊り字
・前の文字を繰り返すときに使う
重ね字・送り字・繰返し符号・反復符号とも呼ぶ
々ヽゝ仝〻〳〴〵 など
・漢字には「々」を用いる
例:佐々木さん 諸々 近々
※俗称でノマ
・平仮名には「ゝ」濁音には「ゞ」を用いる
例:ぶぶ漬け → ぶゞ漬け
・片仮名には「ヽ」濁音には「ヾ」を用いる
※表記に対応していないブラウザもある
・2文字の繰り返し表現には「〱 〳〵」を使う
例:ますます→ます〱(ブラウザによっては表示されず)
・繰り返し部分が連濁する場合は濁点付きの「〴〵」を使う
例:まずまず→〴〵 しかじか→しか〴〵
⑫特殊な記号
・やや特殊な約物記号
・多数あるが、現在も使用頻度が高いもの
〃:ノノ点 ノノ字点
表などで、上の項目と同じであることを示す記号
〽:庵点(いおりてん)
歌詞の行頭につけて、歌っていることを表す
活版印刷の活字では2文字分ある連結活字だった
♨:温泉マーク
湯気を図式化した、温泉を表すマーク
別名「逆さクラゲ」
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