近畿大がウナギの完全養殖に成功
◉ニホンウナギの完全養殖自体は、すでに他の研究機関でも成功しているのですが、大学とししては初の成功とのこと。完全養殖とは、卵から生まれた 稚魚を成魚にまで育て、その成長した個体から再び 卵を採取して成魚にまで育てるサイクルのことです。日本各地で行われているウナギ養殖は、野生のシラスウナギ捕獲して、養殖場で育てるものですから。商業化まで、あともうちょっとです。
https://research-er.jp/articles/view/127379
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、うなぎの蒲焼の写真です。美味しそうですね。
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■完全養殖と部分養殖の差■
ニホンウナギの場合、遠くマリアナ海溝近くで卵から孵化した仔魚は、レプトケファルスと呼ばれる透明で平べったい柳の葉っぱのような姿に成長。さらに変態してシラスウナギと呼ばれる5センチぐらいの稚魚に成長して、河川などを遡上して数年過ごし、成魚になります。で、日本の養殖鰻は、このシラスウナギを河口で捕獲して、養殖場で魚粉などを与えて育てます。
鹿児島だと、このシラスウナギの密漁が盛んで、昔はよく逮捕者が出ていましたね。暴力団のシノギにもなっていました。逆に言えば、ある程度の比率でシラスウナギのレベルにまで育てることが成功すれば、ウナギの養殖は一気に商業ベースに乗るということでもあります。ウナギ自体は、マンボウほどではないにしても、魚類の中ではかなり大量の卵を産むタイプの魚ですから。
■まだまだ未解明なウナギ■
天然のニホンウナギの場合は、平均120日間で卵から仔魚から稚魚になるようです。でも国立研究開発法人水産研究・教育機構の研究では、人工飼育だと生後300日以上飼育して40%が稚魚になったようで。人工飼育かの方が成長が遅いということは、成長段階に合わせてどのような餌を与えた方がいいのかが、まだまだ解明されていないということなのですが。
卵から帰ったうなぎの稚魚が、サメの卵を与えたらそれを食べて消化し、生存する日数の記録が飛躍的に伸びた……なんて、当時としては大発見だったんですよね。今はマリンスノーを餌にしていることが分かり、イロイロ工夫されています。レプトセファルスは遊泳力がなく、黒潮に流されて北上する中でシラスウナギにまで育ちますから。その間に変化する環境に合わせて餌を変えているのでしょう。
いろんな研究機関が、シラスウナギにまで育てること自体は成功しているので、後は 効率化とコストの問題。前日したようにうなぎは非常にたくさんの卵を産み、一尾から100万個から300万個。検索すると、どうも個体差が大きく、500万個から800万個という記述もあったりしますので。日本のウナギの消費量は年間約3億匹で、そのうち国産は約1億匹とされています。かなりの部分で、輸入に頼っているわけです。
■ウナギと反社と国際問題■
シラスウナギ漁は、ピーク時には200トンを超えていたそうですが、2013年には5.2トンと壊滅的な数字に。日本の水産行政はこんなのばっかりですね。国産のシシャモなど、もう絶滅寸前。そのため 香港から大量のシラスウナギを輸入しているのですが、そもそも香港でそんな大量のシラスウナギが取れるはずもなし。輸出が禁止されている台湾などからの、密輸品の転売が疑われており、国際問題になる勢いです。
しかし、普通のウナギから100万個以上の卵が取れるのですから、100匹もいれば 1億個以上の卵が最終可能。シラスウナギまでの生存率を、30%ぐらいまで高めることができれば、10億個の卵があれば十分。1000匹のうなぎ からそれだけの卵は取れますから、ウナギの養殖の研究は単に、日本人の食の問題だけでなく、絶滅を回避し、反社会的勢力の財源を断ち、国際問題を解決する非常に重要な研究でもあると言えます。
近畿大学は関西の日本大学的なポジションの大学で、京都大学を頂点に、大阪大学や 神戸大学、その下に関関同立と呼ばれる、関西大学・関西学院大学・同志社大学 ・立命館の私立大学があり、その次のグループという扱い。東京なら、東京大学・一橋大学・東京工業大学の下に、早稲田 慶応、MARCHがあって、日東駒専のポジション。でもマグロの完全養殖に成功して以降、水産研究で一気に知名度を上げましたね。今後も期待したいです。
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