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AI作画でアシスタント失業? アナログ作画とデジタル作画の話

◉AIによる作画レベルが、かなりのレベルになったことで、いろんな意見がTwitter上でも飛び交っています。個人的には首肯する意見もありますが、素人意見には苦笑することが多いです。プロの漫画家さんは、さすがに深い意見が多く、なるほどとメモすることも多いです。個人的に気になったことなどを、ちょっとまとめてみますね。デジタル作画とアナログ作画は、何も対立するものではありませんから。

【適当なラフで漫画背景を描けるAIが出来たら漫画家さんたち大歓喜なのでは?→アシスタントたちの生活が…】Togetter

なんでAI絵師にキャラばっか学習させとんねん 教え込むは背景だろ テキトーなラフで綺麗な背景を描くAIを作るんや、ちゃんと同じ部屋で色んな角度描けるようにするんだ、3dモデルだと線画の手間があるからそこ越えるんだよ! アシ雇う必要なくなれば新人漫画家の生活費が増えるから大助かりやぞ

https://togetter.com/li/1956520

ヘッダーはMANZEMIのロゴより、平田弘史先生の揮毫です。ちなみにこのnote、2000個目のエントリーになりますね。思えば遠くに来たもんだ( ´ ▽ ` )ノ

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■一流は困らないが三流は困る?■

以前にも書いたことですけれど、AIによる作画が普及したとしても、クリエイターは一流であるほど困らないけれど、三流のプロは厳しくなるでしょうね。ミュージシャンも、初音ミクの登場で失業したのはごく一部です。楽譜が読めないアイドルのために、仮歌をうたうようなタイプのプロは苦しくなると、ミュージシャンの友人談。同様に、売る技術があるアシプロ(アシスタントプロ)はともかく、中途半端なアシプロはともかく、中途半端なアシプロは苦しくなるだろうなぁ……というのが自分の感想です。

でも、ちゃんと時代の変化を認識し、自分に何ができて何ができないか、努力すれば身につけられることは何で、できないことは何か。そこを考えて準備するのなら、三流でも生きる道はあると思うんですよね。自分自身が才能的には三流ですが、三流なりの生き残り戦略を身に着けたので、フリーになってからもなんとか20年近く、業界で生きていけていますしね。というか、ウチの講座自体が元々、そういう才能に恵まれない人間が、どうやって生き残るかがテーマですし。

■デジタルで変わった漫画家生活■

ちょっとその前に、デジタル化で漫画家の生活がどう変わったか、自分の見聞きした例を書いてみましょうか。ある漫画家さんが作画をデジタルに切り替えて、物は試しと地方のデジタル・アシスタントを使ってみたところ、めちゃくちゃレベルの高い背景画が、サンプルとして多数寄せられたそうです。不思議に思って事情を聞いてみたら、ほとんどが元プロの漫画家だったそうな。漫画家に挫折した人もいましたが、家業を継ぐためとか親の介護で、田舎に帰った人がほとんどで。これは、熊本の老舗和菓子店の跡取りだった園田健一先生なども、そうですね。

とはいえ、せっかくの作画技術を腐らせておくのももったいないし、そもそも絵を描くのが好きだし、田舎のサイドビジネスとしてかなり割がいいしで、デジタルアシスタントをする人は多いようで。漫画家さんの方も、通いのアシスタントなら交通費や昼飯代や晩飯代などの食事代はかからなくなるし、仕事場を別途借りる必要もなくなるしで、大幅な経費節減に成功。その上、背景の作画技術的には、格段にレベルアップ。けっきょく、チーフアシだけを残して、他のアシスタントは連載終了を機に解散となったそうです。

■諸経費も削減できるデジタル化■

通いのアシスタントと言っても、技術はイマイチだけど人手が足りなくて仕方なく使ってたようなタイプは、技術を売ることができないので。ただし、チーフ・アシスタントは、アシスタント作業全体の差配と進行管理、各アシスタントとの連絡や目配せとか、事務的な能力も必要ですしね。結果、デジタルに切り替えたら、何も家賃や地下がバカ高い東京に、無理に居を構える必要もないなと、気づいた方も出たようで。

日本の出版社は、9割が東京に固まっているため、漫画家も東京在住が多いですし、漫画家志望のアシスタントも、同じく関東近県に住むことが多いんですよね。でも、デジタル化で原稿料は同じですから、生活費が安い地方に移住したほうがお得。昔は地方では画材とか入手しづらかったのですが、デジタルならパソコン1台で完結しますしね。それに東京から遠く離れた地方でも、出来上がったら原稿はこれまたデジタルデータですからでサーバにアップして終わり、原稿を無くす心配もないですから。

■ベテランこそデジタル化する?■

実は10年ぐらい前から、ベテランの漫画家さんから、デジタル化したいと相談を受けることが、多くなりました。理由は、視力がきつくなってきたと。目を酷使する商売ですから、禁止の漫画家が多いのですが。50代60台となると遠視も加わりと、目がきつくなる。大型のルーペを利用して作画しても、限界があるのですが、デジタルなら1200倍まで拡大ができますからね。デジタルと言ってもしょせん道具、どう使うかですしね。漫画家さんによっては、愛用のスクリーントーンが生産中止になり、自分で似たものを手作るため、デジタル導入した人も。

でも、漫画家がデジタルになんの興味がなくても、デジタル化できるんですよね。ある漫画家さんは、相変わらずアナログで、ペンで紙に絵を書いていいるのですが。その漫画家さんは奥さんがデジタル強者なので、そうやって書いたアナログ原稿を、スキャンしてデジタル化し、地方在住のデジタルアシの絵を合成し、トーンを貼ってホワイトで仕上げというスタイル。極端な話、そういうチーフアシが入れば、漫画家はアナログのままデジタル化が可能なんですよね。

■職人の技術は十年の修行が当然■

背景をAIで描けたとしても、漫画の線って実はミクロン単位でコントロールされてるんですよね。例えば、大工の一流の人は、木材への鉋掛けの技術で、12ミクロンという薄い削りができます。これは単なる技術自慢ではなく、そのレベルで表面を滑らかに仕上げると、水を弾いて家が格段に長持ちするんですよね。ちなみに、全国大会だと8ミクロンから上は表彰され、日本一を狙うなら5ミクロンが必要。赤血球の長径が8ミクロンですから、その超絶技能がわかりますよね?

これは、同じく10年の修行期間が必要な、包丁人(和食の料理人)も同じです。ホリエモンが、寿司屋での10年の修業なんて馬鹿らしい、専門学校なら1年で教えてくれると放言して、顰蹙を買いましたが。プロの技術をなめすぎです。10年の修行期間で、一人前の技術を身につけるにあたって、手本になる師匠無しで習得は無理です。コーチ無しではイチローも村上宗隆選手も、あのレベルにはいけませんから。職人の魚の切り身の断面は滑らかで、舌触りが違いますしね。漫画家の技術もそれと同じ。アシプロも、10年やってしか描けない線があるんですよね。

■デジタルでもアナログ感は必要■

でもデジタルだったら、そういう精密な線を引くのは、もっと簡単ではと思う人もいるでしょう。しかも機械的に生成された正確な線は、逆に味わいがなくなるんですよね。例えば、漫画で多用される集中線や流線。これはあるアシプロがアナログで引いた線です。noteは画像のデジタルコピー防止のため、画質がやや劣化するようですが、等幅・等間隔の高い技術は、理解できますよね。

アナログ集中線

一方コチラは、上の絵から一本抜き出した線を使ってコピペして生成した、人造集中線です。完璧な等幅・等間隔ですが、正確すぎて無機質になり、味わいがないですね。書家が印鑑や印章を作る時、彫り上がった印章の角をわざと欠けさせて、アナログの味わいを出すように。正確さを追い求めても、機械的な正確さは味わいがないんですよね。正確すぎて、モアレ(干渉縞)も出やすいですし。

人造集中線

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