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電磁砲の次の課題は連射

◉レールガンは、物体を電磁気力(ローレンツ力)により加速して撃ち出す装置のこと。個人的には、超電磁砲と呼びたいです。『超電磁ロボコン・バトラーV』に胸を熱くした人間ですから。昨年から、発射実験の動画が発表され、想像していたのとは違って、あっさりとした音でポンポンと発射していて、トマだった部分もあります。やはり、対物に命中しないと、迫力は出ませんね。この超電磁砲、次の課題は連射だそうでして。兵器としては、水爆でもない限り一撃必殺とはいきませんから、連射能力は大事。

【「電磁砲」の次の課題は連射、民間のパワエレ技術に期待】日経クロステック

 防衛装備庁が実用化を目指している「レールガン(電磁砲)」の開発が、いよいよ“フェーズ2”に移行している(図1)。レールガンはSFの世界ではおなじみの存在だが、世界で実用例がない。同庁は「まだ装備化が見えている段階ではないが、注目の技術なので速やかに実用化したい」(技術戦略部技術計画官付総括班長防衛技官の松井弘樹氏)と意欲を示す。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02438/040400038/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、手前の111が汎用護衛艦たかなみ型おおなみ、奥が110汎用護衛艦たかなみ型ネームシップ1番艦たかなみだそうです。

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■大艦巨砲主義への先祖返り■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。ちなみに日本海海戦では、東郷元帥率いる日本海軍の砲弾の命中率が4パーセントだったのに対し、たジノヴィー・ロジェストヴェンスキー少将率いるロシアのバルチック艦隊は2パーセント。100発の内98発が当たらない砲が96発が当たらない方に負けたのですから、的中率とは残酷ですね。超電磁砲の的中率とか、明らかにはされていませんし、多分に発射訓練を積み重ねてデータを取っていくでしょうけれど。安定度の高い大型艦から発射しても洋上は不安定ですし、敵も回避行動を取りますしね。

戦前は、より遠いレンジから相手を攻撃できる、巨大な艦砲が戦争の趨勢を決めていましたから。だから日本は、戦艦大和や武蔵を開発して、対米決戦に備えたわけで。戦艦大和の45口径46センチ砲の最大射程は42026メートル。アメリカの新戦艦アイオワ級の50口径40.6センチ砲の最大射程は38720メートル。3306メートルも遠くから攻撃できるのですから、そりゃあ大艦巨砲主義に走るのは当然です。その大艦巨砲主義は、見本軍が有効性を示した空母打撃群による機動部隊に変換し。ドイツのV2ロケットの大活躍によって、戦後はミサイル攻撃が主流に。そういう意味では、超電磁砲は先祖返りといえば先祖返りなのですが。

ミサイルの的中率とか、どれぐらいかわかりませんが。イスラエルのアイアンドームとか、迎撃する動画を見ると、あんな高速な飛翔体でも、迎撃できるんだと驚きがありました。動画で見てると、そんなに高速には見えませんが、それはロケットのスピードが遠くから見学してるとそうで速く見えないのと同じで。でも、アイアンドームの命中率は約95%とのこと。100発発射されれば5発はかいくぐって命中してしまうわけで。それ以上の飽和攻撃を食らったら、かなりのダメージに。超電磁砲も連射できなければ、大艦隊には無力ということに。

■予算の低さは期待の低さ?■

160億円とは、少ない予算ですね。まぁ、まだ可能性の段階の兵器に、そうそう予算はかけられん、ということでしょう。官僚というのは、当たり馬券なら買うという人種ですから。逆に言えば、超電磁砲への期待度の低さの現れなのか? どうも日本の軍事関係企業には、独自技術にこだわる悪癖がありますね。もちろん、独自技術は安全保障の点で、重要なんですが。どうにも、F-2戦闘機の開発過程で、国産開発にこだわって、実際はエンジンとかアビオニクスとか、全然アメリカに追いついてもいないのに、素晴らしい戦闘機が開発できる幻想を持てるんですよね。

 ただし、現在は1発撃ったら充電を繰り返す「単射」で、これでは実戦で威力を発揮できない。そこで2023年度予算の160億円を充てて連続射撃(連射)の実現を目指す(図2)。この開発には4~5年の歳月が必要だという。

同上

アメリカのように、原子力空母や原子力潜水艦を何台も建造し、運用のノウハウもある国が、莫大な電力が必要なレールガンを諦めたわけですから、これは仕方がないのですが。ただ日本は、より安全性が高い第四世代の高温ガス炉の研究は、進んでいますから。小型ゆえ出力は弱いですが、小型モジュール炉(Small Modular Reacto)の別名があるように、構造自体がコンパクトですから。そこの実用化とか睨んでの、開発研究なのかもしれませんね。そっちの研究予算は、別枠で付けられますし。そうやって、戦前の大和型戦艦も、予算から存在を見破られないように、カモフラージュしていましたし。

■対極超音速誘導弾用兵器?■

ただ、この部分は重要に思います。超電磁砲は「既にロシアと中国が実戦配備し、北朝鮮なども精力的に開発を進めている極超音速誘導弾に対する防衛で威力を発揮すると期待されている」の部分。日本の仮想敵国は、ロシア・中国・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)なのは、疑いないわけで。その三カ国が注力している極超音速誘導弾への防衛で有効という点。日本も、マッハ3で超音速巡航するASM-3を保有し、さらに速いタイプも研究中ですが。こちらは2023年から2031年にかけて総額1851億円をかけて研究する予定とのこと。8年の長期スパンとはいえ、額が大きいですねぇ。超電磁砲との差は明白ですが。

 こうした特徴から、レールガンは、既にロシアと中国が実戦配備し、北朝鮮なども精力的に開発を進めている極超音速誘導弾に対する防衛で威力を発揮すると期待されている。この誘導弾は、マッハ5(音速の5倍、約1700m/秒)以上の極超音速で、通常の弾道ミサイルより低い軌道を長時間飛翔し、さらに任意のタイミングで速度や高度を変えたりする機動性を持つ。既存の防空網をすり抜ける可能性がある新たな脅威として、世界各国が対策を急いでいる。

同上

ウクライナ侵攻の行方として、ロシア連邦が核兵器の使用に踏み切るかはわかりませんが。使わずに敗北するかで、核兵器の扱いはまた変わってくるでしょう。使った時点で、国際政治的には負けになる可能性が大。そうなると、通常兵器の戦いはますます重要に。極超音速誘導弾に対応する意味でも、やはりレールガンの研究は、放棄できない面はありそうですね。自分はしょせん無責任な一般人ですから、超電磁砲は名前がかっこいいなんてアホなことを言ってられますが、国防に関わる人達は、国民を守るという切実な目標のために、研究しているわけで。できれば、超電磁砲が有効な兵器になってほしいですが。


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