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新クールジャパン戦略

◉赤松健先生が国会で、質疑に経ったようですね。売れっ子漫画家が国会議員に転身し、自分たちの代表として岸田文雄総理大臣に対峙する、胸が熱いですね。表現規制派が相変わらず、アレコレと批判をしていますが。ああいう人達の共産趣味(主義というほどでもない薄甘くフワフワした空理空論なので)的な批判は、意味はないと思っていますんで。現実的な政策を、どんどん提案していただきたいです。

岸田首相「アニメ・映画・音楽・ゲーム・漫画は、鉄鋼業や半導体産業にも比肩する一大産業、国家戦略として推進」国会で質疑

▶ https://youtube.com/watch?v=9E5HxunFk2g

自民党の赤松健参院議員による質疑。「"文化で食べていく"ために、高市早苗大臣を中心とした新たなクールジャパン戦略を展開」と答弁

https://x.com/nico_nico_news/status/1800064020097245569

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■雑な議論をする人々■

詳しくは、上記リンク先の動画を、ぜひ視聴していただくとして。X(旧Twitter)に流れてきた、赤松先生批判のポストがコチラ。赤松先生の経験からくる知見を、薄っぺらい藁人形論方で捻じ曲げていますね。自分も、描きたいなら誰でも歓迎ですが、そこに才能もない人間が公金にたかってチューチューするシステムにしては、いかんのですよ。そこを、わざとゴッチャにして、議論を捻じ曲げて誘導する。

「ヒットしたヤツしか絵を描くな」って社会より「絵を描きたいなら誰でも歓迎するぜ!」って国の方が文化力は強くなる。聞いてるのか赤松健。

https://x.com/lamrongol/status/1798225413292130314

これに対する、投弾兵アカウント氏のポストがコチラ。

ヒットしていないクリエイターにカネを注ぎ込んでいる状況が現代美術なり文芸映画・演劇なわけで、彼らの文化力が向上したか?
さらに言えば若いクリエイターではなく、是枝監督や藤田オリザのように業界内地位の強い老人がヒットしない作品のために補助金をせしめるという構造が出来上がるのだが。

https://x.com/tekidanhei/status/1800140613335367836

まさにそれで。平田オリザ氏やその弟子筋の、日本版CNCだのと言いながら、アニメの儲けをこっちに寄越せ的な動きには、断固反対です。自分は作品の芸術性を大事にしたい人間ですが、

■10%が70%を支える■

いちおう業界の端くれの人間として言うと、本当に才能あるのは上位10%なんですけれども。日本の映画界は、下記のような残酷な現実があります。2021年公開の490本の邦画の中で、興収10億円以上はわずか32本で、6.6%にすぎません。ところが、この6.6%が全興収の約70%を占める状況です。『スタージョンの法則』ではないですが、「どんなものでも9割はガラクタ(crap)だ。」は事実と言えそうです。まぁ、日本の邦画界は、それとは別の問題を抱えていますが。それは一旦置いておいて。

・2021年公開の邦画は490本
・興行収入は1283.39億円
・興収10億円以上は32本(前年21本)
・32本の興収総計は898.9億円
・32本(6.6%)で全興収の約70%を占める
・32本中19~20本がアニメか、漫画や小説が原作
・興収50億円超え3本は全部アニメ
・3本で全興収の約19%を占める

では、無駄な90%を切り捨てていいかといえば、それは暴論です。実は上位10%のその下、11〜30%の二線級が、作品の多様性を支えていて、ここが市場を支えている側面があります。中国や韓国でも、ラノベも漫画もアニメも、今は才能が出てきていて、それは日本と比較しても遜色ないレベルなんですが。ニッチな趣味のファンを満足させる二線級が充実していないから、多様性が形成されず、日本のような市場が形成できないんですよね。裾野が広くないと、頂点が高くならない部分はあります。

また日活ロマンポルノ、その後のVシネマが、どれほど映画や俳優の、人材を育てたか。エロは、ある程度の固定客がいて、未熟な人間でも修練の場になり得るんですよね。そこを考えないで温泉むすめなどを燃やそうとする表現規制派は、文化の目を摘む者たちなんですよね。

■裾野の広さが支える■

スポーツでもアマチュアの裾野が、プロの頂点を支える部分がありますからね。それは、囲碁・将棋や野球もそうで。プロのみならず、アマチュアの裾野の方も、併せた拡充が必要です。プロ野球でも、強いチームはレギュラー選手が故障で離脱しても、二軍から活きの良い選手が上がってくるチーム。あるいは、脇役が充実しているチーム。阪神タイガースの代打屋であった川藤さんが、代打屋は月に1本ヒットが打てたら御の字と語っておられましたが。月に25試合前後の中、代打で出るのは10試合ぐらいのようで。多くても年間50打席とか60打席のようで。

年間500打席から600打席のレギュラー選手とは、比べ物になりません。でも、その代打屋や代走屋、あるいは送りバント職人、守備固めの職人、レギュラーで無い人間の厚みが、チームの強さになるように。平田オリザ氏やその弟子筋とかの、共産主義(共産趣味)的な互助組織化は論外なんですが、同時に二線級が食えるようなシステム作りは、必要なんです。そこをゴッチャにして、All or Nothingの雑な極論に持ち込もうとする人たちがいます。代打屋は10人も必要なく。逆に中継ぎや押さえは、10人でも足りず。

福岡ソフトバンクホークスの千賀・周東・甲斐・牧原選手など、育成出身の選手たちを観ていると、必要なのは2軍最低年俸制度ではなく。育成契約と3軍制度なんだな、とつくづく思います。ただし、ホークスの場合は野球事業を広く捉え、マネタイズのアイデアを次々に出して、儲けを選手やスタッフに還元するという、健全なスタイル。親会社の金によって、高額な年俸を出しているわけではありません。それどころか、パシフィックリーグマーケティング株式会社を設立し、パ・リーグ全体の共存共栄を目指しています。

■大事なのはシステム■

漫画家協会による、出版社に対する改善要求とかを、期待する方もいますが。漫画家協会は、圧力団体ではないので。ただ、アメリカだと売れた作家は弁護士付けて、印税25%とか交渉できるのに、日本では鳥山明先生や尾田栄一郎先生クラスの売れっ子でさえ、印税10%で事実上のカルテル。この構造を壊し、才能に見合った改革は必要なのですが。難しいというか、出版社側は二進も三進もいかなくならないと、動かないでしょうね。電子書籍でさえ、一方的に敵視して、ビジネスチャンスを失い。Amazonという外資に、プラットフォームを牛耳られてしまったわけで。

自分は、漫画家が出版社を通さずマネタイズできる方法論を、ずっと模索してきました。おかげで、自分自身も試行錯誤し。教え子の何人かは、SNSで人気に火が付いて、マネタイズに成功した人間がボチボチ出てきたので。漫画家協会などに過剰な期待はせず、自分で動いて変えてる方の人間です。蟷螂の斧ですが。なので「日本版CNCを~」とか言ってる映画関係者とか、酷いもんだなと思います。トンデモ映画『新聞記者』にお手盛りの賞を与えまくる人間たちに、そんなカネの分配の利権を渡したら、長老の権力の源泉になるだけです。

生前の市川森一さんなどが、業界で二線級以下の脚本家に仕事を斡旋する「シナリオ・エージェント」という組織を2000年頃に設立するも、殆ど機能しないまま自然消滅したのを覚えています。この出来事も、日本の映画やTVドラマ界の暗部でしょう。

https://x.com/Tetsuya_Kuroki/status/1800433884565508434

市川森一さんの志(こころざし)は素晴らしいですが、それが機能しなかったという点に、日本版CNCは必ずや失敗するだろうという、確信を得ますね。朽木は雕るべからず。糞土の牆は杇るべからず。出版業界に関しては、むしろ今後はAmazonなどがどんどん作品発表のプラットフォームになり、雑誌文化は一部を残して、消滅するでしょうね。重要なのは、ほっといても才能が出てくる構造と、それが淘汰されて行くシステムを整備することであって。出版社や業界ゴロに、公金をチューチューさせることではないです。

■大事なのはシステム■

中小の出版社は編プロ化して、才能ある作家の本作りの、下請けになるか。逆に大手出版社は、アニメスタジオを含む巨大企業化して、ひとつのヒット作でアニメや映画を制作し、スピンオフ作品を作り、10年20年食っていく感じになるのではないでしょうかね? イメージとしては、ディズニー社やマーベルみたいな感じで。たぶん、それができる日本の出版社は、上位4社ぐらいでしょうけれども。逆に、京都アニメーションのように、アニメ制作会社が出版部門を持ち、新規に参入していく可能性も、充分にあるでしょうね。

そうなったとき、上位10%の才能には30%の印税が出され、11~30%には20%の印税が、31~70%には10%の印税が払われ。そうなれば、下位の30%は逆に3~5%の印税率下げられて、ほっといても淘汰されるかもしれませんが。辞められずにズルズル続ける層に、引導を渡してやるのもまた、愛情だと思いますよ? 新陳代謝も促しますし。邦画行昭の歪さを見ていると、共産趣味的な互助社会では、けっきょくは成長も拡大も期待できませんしね。最初から世界を相手に商売する、若い世代に期待したほうが良さげ。

そして作家は、自分自身も個人出版社を持ち、大手や中堅と、契約しながら仕事する感じになるのかもしれません。編集経験者が、マネジャー的なポジションに入り、ボクサーとマネージャーとジムのような、そういう構造ができれば、才能に見合った収入を、地力で得る。ただそれは、才能の無さを残酷に見せる、ハードな世界になりますけれどね。その厳しさが、クオリティを担保するのも事実ですしね。ぬるま湯の、共産趣味的な世界に浸りたい層には、反発を受けるでしょうけれども。


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