三遊亭圓丈師匠死去
◉ああ、名人がまた一人……。76歳は長寿の印象がある落語家の中では、早いですね。新作落語家なので名人、というイメージは希薄という人もいるでしょうけれども。古典をやっても、やはり昭和の名人の六代目三遊亭圓生の直弟子ですからね。近年は圓生直伝の古典も、演じられていましたし。新作落語をやるために、古典をきっちりやったという方ですから。そして、新作落語家としては、先駆者としての凄さと、後世に与えた影響で、群を抜いていますから。
【落語家の三遊亭円丈さん死去 76歳、古典にとらわれない新作の名手】朝日新聞
型破りな作風で現代新作落語の礎を築いた落語家の三遊亭円丈(さんゆうてい・えんじょう=本名大角弘〈おおすみ・ひろし〉)さんが11月30日午後3時5分、心不全のため死去した。76歳だった。葬儀は近親者で営んだ。喪主は妻ユリ子さん。
ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーから、落語の扇子です。業界の符牒では、風と呼ぶそうですが。
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三遊亭 圓龍師匠が8月20日に、川柳川柳師匠が11月17日に亡くなり、後を追うように弟弟子の圓丈師匠も。これで六代目圓生の門下も、三遊亭圓窓師匠のみになってしまいました。こうなると、六代目円楽一門が正統後継者として、七代目圓生の名跡とか、持っていくんでしょうけれど。思えば、落語会の保守本流であったはずの三遊亭一門も、落語協会分裂騒動で、あれ程の人材を揃えながら、落語界の孤児に。あの分裂騒動は本当に、大きな禍根を残しました。
【落語家の川柳川柳さん死去】時事通信社
川柳 川柳さん(かわやなぎ・せんりゅう、本名加藤利男=かとう・としを=落語家)17日午前0時48分、肺炎のため死去、90歳。埼玉県出身。葬儀は行わない。
55年に六代目三遊亭円生に入門し、74年、真打ちに。78年の落語協会分裂時に五代目柳家小さん門下へ移り、川柳川柳と改名した。
この川柳川柳師匠と三遊亭圓丈師匠という、両極端な新作落語家を生み出しただけでも、凄いんですけどね。自分は古典落語が好きですが、新作派が新たな演目を開拓していかないと、ジャンルとして先細っていくんですよね。クラシック音楽の世界でも、やはり新しい血が入り、異端が正統を活性化し、正統が異端を飲み込み、少しずつ変化していくものですから。圓丈師匠の切り開いた地平は、弟子の白鳥師匠らにも受け継がれ、発展していますから。
桂三枝(現六代文枝)師匠も、古典では笑福亭仁鶴師匠や桂枝雀師匠という怪物が居て、本人はタレントとして売れに売れていたけれど、落語への思いも絶ち難く。そこで圓丈師匠の新作落語に出会い、自身も新作を手掛けるようになったとか。その意味では東京落語のみならず、上方落語界にも大きな影響を与えていますしね。自分はこの三年、コロナ禍ですっかり寄席から足が遠のいたのですが、好きな噺家さんの訃報が相次ぐと、堪えますね。
三遊亭圓丈師匠のご冥福をお祈りします。合掌