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地熱発電の問題点と課題

◉Twitterで、こういう疑問を述べている人がいらっしゃいました。10年前の東日本大震災でも、風力や太陽光に期待する人が多く、またベースロード電源として地熱発電所に期待する人が多かったですね。日本は全世界の火山の7-9%ほどが集中する、大火山地帯です。戦国時代の鉄砲伝来は、黒色火薬に必要な硫黄の産地として、日本が有数の産地であった面もあるかと。しかし、そう簡単な話ではないんですよね、地熱発電って。

そして、これに対するリプライなどを集めたTogetterがいくつか作られていますね。Twitterの集合知が発揮される部分ですね。勉強になります。

ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーより、ニュージーランド随一の地熱地帯ワイオタプ・サーマル・ワンダーランドの、レディ・ノックス間欠泉だそうです。

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■地熱はただ掘れば得られる?■

地熱発電自体は、自分がガキの頃のオイルショックのあとの省エネブームの頃から、ずっと有望と言われていますね。でも、反射鏡を使った太陽熱発電などや石炭液化の研究とかと同様に、なかなかうまく行かない発電技術のひとつですね。けっきょく、こういう人たちはちょっと調べればイロイロと無料で解るし、専門書の一冊も読めばかなりのことが解るのに、それをしない。それどころか、リプライで丁寧に解説している人がいるのに、無視しているように見えます。問題点を挙げるなら、こんな感じでしょうか?

・地面を掘れば地熱は得られると思っている
・地熱発電はどこでもできると思っている
・地熱発電で原子力発電なもの大規模発電ができると思っている

地面を掘れば、地下の熱源に近づき自然に温度が上がると思っている人がいますが。んな単純な話ではないです。南アフリカにあるタウトナ鉱山は、金鉱山として3.7キロの深さがあり、人工的に掘られた穴でなおかつ人間が到達できる穴としては、最も深いのですが──岩盤の温度は60度。これでは水は沸騰しません。まぁ、地熱発電ではもっと沸点の低い液体を使う研究も進んでいるようですが、いずれにしろ富士山ぐらいの深さまで掘っても、そう簡単に温度は上がらないわけで。

■地熱はどこでも得られる?■

ロシア北西部コラ半島の超深度掘削坑は1万2262メートルだそうですが。これぐらいになると、地熱も180度とかに達するようですが。ある程度の深さでも、地熱が充分な温度になるには、地表近くにマグマだまりがあるような、火山地帯になります。推定で地下2~4km程度の深さにありますから、こういうところでないと、なかなか掘削は難しいでしょうね。しかしながら火山地帯は、先ごろの阿蘇山同様に、いつ爆発があるかわからない危険地帯ですし、地震も多いです。

火山の側に暮らしていない人には、これがわからない。自分は東日本大震災の震度6とかでも割合落ち着いていたので、ちょうど話していた友人にも驚かれたんですが。鹿児島って、桜島の爆発で震度2とか3とか、普通にある土地柄ですしね。そして、火山がある場所って意外に偏っているんですよね。星野之宣先生の『ヤマタイカ』でも指摘されていますが、宇佐八幡宮から伊勢神宮までの地域は、火山がほとんどないんですよね。昔は休火山に分類されていた三瓶山や、有史以降の活動は無い阿武火山群ぐらいなもんで。

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■地熱発電の発電能力は?■

地熱発電は総発電量のわずか0.2%を占めるのみで、地熱発電の研究や導入が盛んな火山王国・九州でも2%に過ぎません。日本最大の地熱発電所である大分県の八丁原発電所の出力は11万kWで、一般家庭約3万7000軒の需要を担う能力しかありません。日本最大でも、地方都市分の電力しか得られていません。北海道の泊原子力発電所の発電設備容量の合計は207万kWで、比べ物にならないのが解るでしょう。この泊原発でも、北海道全体の電力の40%しか賄えません。

単純計算で、泊原子力発電所の代わりになるベースロード電源として地熱発電所を作ろうと思えば、北海道各地に八丁原発電所レベルが20箇所は必要。北海道の電力需要全部を地熱発電所で賄おうと思うなら、50箇所は建設しないとダメでしょうね。北海道ですらこれですから、全国で原発の代替となる地熱発電所を建設しようとなると、地質調査で好適地を発見し、地元の理解を得て建設しても、5年や10年でベースロード電源になるはずも無し。

ちなみにこちらのデータによれば、福島第一原発事故前の2010年3月31日時点で、日本の原発は沸騰水型軽水炉30基で2856.9万kW、加圧水型軽水炉24基で2027.8万kW、総計54基で4884.7万kWの発電能力を持ってたそうです。八丁原発電所の444倍の発電力。長嶋茂雄さんのホームラン数か。原発のベースロード電源を地熱発電で代替しようと思ったら、各都道府県に10箇所ほお、地熱発電所を建設しないといけません。そんな好適地が多数有るはずもなく。四国・中国・関西・東海、ほぼムリ。

■超高温ガス炉の可能性■

Togetterでも、メンテナンスの大変さやパイプの目詰まり問題など、地熱発電の問題はイロイロと指摘されていますが。源泉の枯渇や地盤沈下の可能性とか、他にもイロイロ。でもそれ以上に、大規模な発電になりえないというのが問題なんですよね。それだけ現代は、エネルギーをがぶ飲みして文明が成り立ってるんです。化学肥料と農薬がないと、食糧生産が維持できないように。

快適な都市のインフラに背乗りしておきながら、エコなライフを実践してると勘違いした、朝日新聞のアフロ編集委員じゃないんだから。フランスの原発から電気を買っておいて、エコだエコだと言うドイツ同様、偽善です。それはエゴです。現実を見ましょう。そんな文明なら要らないとか、安易なことを言うのは、もっとダメです。病院の機器とか電気がないとどうしようもなく、夏場には暑さで、冬場には寒さで、バッタバッタ人が死にます。人の死を前に、エコロジーのために諦めろと、言えますか?

2029年にはアメリカやイギリスで高温ガス炉のSMR(小型モジュール炉)が稼働予定なのに、そこに予算を配分するのは、うるさい反原発派への妥協であって、洋上風力発電に600億円かけて検証しましたがやっぱダメでした、と同じ結果になるでしょうね。メルトダウンしづらい構造の第四世代の原子炉の一種である、高温ガス炉は中国では9月に商用実証炉が臨界に達し、世界的にも期待されていますので。こちらのほうが有望なのは間違いないです。投資すべきはコチラ。

■地熱発電所への期待■

とはいえ、九州は全体でも人口が1271万2425人(2021年9月1日時点)ほどと、東京都より少ないですからね。地熱発電の小規模発電でも、小さな都市なら供給できますし。これは火山が比較的ある東北(人口850万2483)や北海道(人口519万4753人)でも、同じでしょう。研究は継続すべきでしょうし、技術的なブレイクスルーで、日本が地熱発電大国になる可能性を、まったく否定するものではありません。原発や火力発電の代替には、現時点ではなりづらいと言うだけで。

ただ、よく知りもしないことを、調べようという気もなく、教えてもらっても聞く耳持たず、でも自分は日本の未来を考えてる正義の人と自己陶酔する反原発派の皆さんには、もうちょっとだけ勉強してほしいです。それは、ほんとうの意味での脱原発───第三世代原子炉の順次廃炉───をかえって損なう態度ですから。第三世代炉は順次再稼働させて使い切り、そこで浮いた燃料費を次世代のエネルギー研究や発電研究に使う方が、よほどエコロジカルかと。

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