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講談社とAmazonが直接取引の衝撃

◉朝日新聞は〝異例の事態〟とか〝衝撃〟と書いていますが、それは再販制度に胡座をかいている朝日新聞並びに朝日新聞出版の記者の主観であって、出版業界自体はそうでもないんじゃないですかねぇ。現時点では全体に占める量はさして大きくないですし、対象になっているのも講談社現代新書・ブルーバックス・講談社学術文庫と、シリーズとしてのタイトル数は多いけれど、そうバカ売れしてる分野ではないのでないので。

【講談社とアマゾン、直接取引を開始へ 「異例の事態」に衝撃広がる】朝日新聞

 ネット通販大手アマゾンと出版大手・講談社が今月から、取次会社を経由しない「直接取引」を始めたことが関係者への取材で分かった。消費者に本を届ける日数の短縮やコスト削減を狙う。取次会社などに衝撃が広がっている。
 出版流通では、書店と出版社の間に問屋にあたる取次会社が入って全国に本や雑誌を配送する。ネット書店のアマゾンも取次会社から書籍を入手し、消費者に届けてきた。今回、講談社から直接、取り寄せることで、日数の短縮が期待される。

そもそも、日販(日本出版販売)という取次会社最大手の筆頭株主が、講談社(6.34%)ですから。日販の不利になることはやりませんよ。元出版社勤務のフリーランス編集者として、解説をば。

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■シリーズ書籍の特殊性■

例えば、岩波新書や中公新書とか、多種多様な新書がありますが。都会の大型書店では、ズラッと並んでいますね。アレはアレで、棚が取れるのはありがたいですが、1タイトルあたり10冊とか、入るはずもなく。売れるときも、新刊の時期とか、大河ドラマや朝ドラの主人公や主要登場人物の関連本とか、時期的なモノが大きいですからね。かといって、そうそう歯抜け状態を放置もできないタイプの本です。

書店としては少部数で種類が多いが、月1とかの補充で良いわけでもない、ちょっと面倒臭い本です。そして、書店以上にそういうのを面倒くさがるのが、取次会社です。そりゃそうでしょう、ちょっと考えれば解ります。例えば『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』の最新刊を100冊、書店に発送するのと。講談社現代新書の100タイトルを1冊ずつ発送するのと。どっちが面倒くさく、なおかつミスが発生する可能性が高いでしょうか?

■単に流通コストの問題■

講談社現代新書だけでも、既刊で2000冊を超えているようです。絶版になったモノも多数ですが、それでも数百冊は在る訳で。それが、書店→取次会社→講談社→取次会社→書店 というクッションを置くより、書店→講談社→書店 という流れを、Amazonに流通の手伝いをしてもらおうってだけの話ですよ。取次会社が持つ流通のマンパワーより、Amazonがヤマト便などと併せ持つ流通コストの方が、たぶん安いんですから。

Amazonが全国に流通させる商品のウチ、あの本屋の近くに荷物を運ぶついでに本も運んじゃえ、って話です。本だけ運ぶ取次会社よりAmazonとかイロイロ運ぶので、有利で当たり前。一冊の本を取次会社が僻地の小さな書店にかかる輸送費は、トラック一台だろうが軽トラックだろうが差はないですが。Amazonでその地域に運ぶ他の荷物といっしょに運べば、輸送費は浮きます。こういうのを古来より〝脇荷〟と呼びます。

■WIN WINの取引■

そもそも、宅配業者としてみれば、個別の個人宅の配送に比較して、書店はその地域で数が限られていますからね。ウチの田舎だと、10万都市でもたった10軒しかありません。しかも、ブックオフを加えて。売り場面積数坪の、文房具店と兼務の小さな書店を合わせても、数十軒レベルでしょう。配送としてはかなり楽な部類。なんなら、週1〜3回程度のルート配送に組み込めますから。自分、引っ越し屋のバイトも長く、親父は日通の運ちゃんだったし。

ちなみに自分がガキの頃、スゴく好きだった漫画の単行本が地元書店に配本されず、注文したことがあるのですが、届いたのは44日後でした。地方都市はそんなモノ。今はもっと改善されてるでしょうけれど、それでも取次会社としては、そうそう迅速に対応できません。こういう少部数注文は、取次会社としても、できれば他所に押し付けたい。この話は渡りに船というか。まぁ、ヤマト運輸としてはどうかは解りませんが。

なので他社も今後、こういうルートに乗っかるかもしれません。ちっとも異例の事態でも衝撃ではありません。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ