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エネルギー問題:地熱・レーザー核融合・人工光合成・水素専焼エンジン

◉エネルギー関連ネタを、幾つかまとめて。ひとつひとつ取り上げたいぐらいなんですが、何故かエネルギー関連ネタは、同じ時期にまとまって出るのですよ。総花的ですが、割と重要な話題かと。まずは、地熱発電について。自分も地熱発電にはかつては期待したんですが。どうにも、エネルギーの密度が低いんですよね。地方の地産地消には有効でも、大規模なベース電源になるかといえば、現状では難しそうです。

【日本の地熱が「正念場」…30年目標150万kW達成厳しく】ニュースイッチ

 日本の地熱発電が伸長していない。この7―8年間でも全体の規模は増えず、数万キロワットの新規案件は見当たらない。政府が2030年の発電目標とする150万キロワットの達成が厳しくなっている。1万キロワット級中心の新規プロジェクトが各地に立ち上がるのか。この数年が正念場だ。(いわき・駒橋徐)

https://newswitch.jp/p/37620

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、大洗磯前神社の海に浮かぶ鳥居だそうです。夜明け直後の太陽がエネルギーを感じる写真とのことですので、ぴったりですね。

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■地熱発電の限界と問題■

地熱発電と言っても、今は温泉水を利用して蒸気でタービンを回して発電するというのは、蒸気機関車の昔から原理は同じです。でも、温泉って100度の沸点の温度で出てくるような温泉って、そうはないんですよね。間欠泉とかは、圧力もあって100度になることもあるのですが、そうそうない。25度以下の温泉は冷泉と呼ぶのですが、あんがいそういうぬるい温泉が多いです。だから、国内最大の八丁原地熱発電所並みの発電力でも、原発を代替しようとしたら、単純計算で444箇所ほども必要に。そのためのボーリングは、何万箇所必要やら。

【北海道・蘭越町で高濃度ヒ素検出の蒸気噴出続く 現場からは飲料水基準の2100倍ヒ素検出 掘削会社の社長が町長を訪問】TBS NEWS DIG

北海道蘭越町の掘削現場から蒸気が噴出し、高い濃度のヒ素が検出された問題で、きょう、掘削会社の社長が町長を訪問し、今後の対策などを報告しました。
(中略)
先月29日から続く蒸気の噴出は今も収まっておらず、掘削現場からはきのうも飲料水基準の2100倍となる高濃度のヒ素が検出されています。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/592863?display=1

で、ボーリング調査すると、こういう事故も起きるわけで。北海道のように、有害物質を含む例もあります。深い場所での高温岩体地熱発電とかもあるのですが、こちらは地震を引き犯す面もあるようです。メンテナンスも体現で、普及しないのはなにも電力会社の陰謀ではなく、ちゃんと理由があるんですよね。火山大国の日本ですが、火山がある場所ってけっこう偏っていて、それだけ温泉の出る地域にも偏りがあるわけで。温泉街との兼ね合いもあり、難しいでしょうね。新技術開発に期待です。

■レーザー核融合実証炉■

大阪大学は、レーザー核融合に関しては、部材の開発なども含めて、度々名前が出てきますが。技術検証をするための実証炉を、国内に建設するとのこと。アメリカの、ローレンス・リバモア国立研究所で投入したエネルギー以上の出力を得て、核融合はひとつのブレイクスルーに達したのですが。自国内でも、世界初の検証炉ができるってのは、やはりワクワクしますね。核融合には期待しすぎないようにと、日経サイエンスが釘を差しているのですが。そこは割引いても、技術的に興味深いです。

【阪大発スタートアップ、レーザー核融合で世界初の実証炉 18億円調達、30年代商用化へ本格設備】日経新聞

大阪大学発スタートアップのエクスフュージョン(大阪府吹田市)は、レーザー核融合反応を繰り返し起こすための技術を検証する世界初の実証炉を国内に建設する。核融合発電は脱炭素に貢献する次世代のエネルギー源として期待されているが、技術的なハードルが高く実用化への工程はまだ見通せていない。2030年代半ばの商用化を目標に、本格的な設備で知見を蓄積する。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72519030V00C23A7TB1000/

日本もアメリカのような、大学発のスタートアップ企業が出てきて、産官共同の事業が増えると良いのですが。基礎研究は金にならないと言われますが、金になる研究で金にならない研究を支える、みたいな部分は必要ですよね。公的機関が金を出せ、ではやはり必死さが不足したり、空理空論が先行しがち。アメリカの大学とか、基礎研究と応用研究、商業主義の中で折り合いをつけていますしね。

■人工光合成と光増感剤■

こちらは、東京大学の人工光合成の研究のニュースです。光増感剤というと、ナンノコッチャと思いますが。太陽光を吸収し、電子源から触媒に電子を受け渡す働きを持つのが光増感剤なんだそうです。ここの高性能化が、より高効率の人工光合成実現に、必要不可欠と。こういう素材開発は、日本のお家芸ですし、期待したいですね。使用されるイリジウムというと、恐竜絶滅の隕石衝突で知られるように、非常に希少な元素。白金の精錬時に得られる副産物として、採取されているんだそうです。でも今回の研究は、豊富にある金属にも応用できる手法のようです。

【人工光合成へ向けた新手法を開発 ――プラスとマイナスの2つの分子が助けあって光触媒機能を高める】東京大学

・実用的な人工光合成の実現に必要な「優れた可視光吸収能力」と「高耐久性」を同時に満たす光増感剤の新しい開発指針を見出しました。
・これまでは1種類の分子に光増感剤としての役割を担わせる方法が一般的でしたが、プラスとマイナスの2種類の分子に役割分担させて性能を高めることに成功しました。
・カーボンニュートラルに資する人工光合成技術への貢献が期待されます。

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0109_00085.html

人工光合成については、トヨタ自動車のグループ企業である豊田中央研究所が、世界最高効率10.5%を実現したのですが。こちらも、技術的なブレイクスルーで、実用的な変換効率まで後もうちょっと。ただし太陽光発電も、地熱発電同様にエネルギーの密度は低いのですが、ただ諸外国には砂漠など、発電に適した広大な空間がある地域がありますし。日本は、世界第6位の排他的経済水域を持つ国ですから、洋上人工光合成とか、未来への可能性をみたいですね。

■水素専焼エンジン発電■

さて、最後は水素専燃エンジンについて。こちらも、トヨタ自動車が水素エンジン推しで、EV車推しの欧州とは対立していますが。個人的には、電気自動車はインフラ的な部分で無理があると思っていますし、TOYOTAの合理的な判断として、ガソリン内燃機関から水素エンジンへという流れを見越したのですが。老舗の三菱自動車を抱える三菱グループも、水素のみを燃料とする水素専焼エンジンを採用した自動車の、実証試験を行うようですね。こうなると日産やHONDAが、どう動くかですね。日本対世界の構図か?

【MHIET、水素専焼エンジン発電セットの実証試験設備を相模原工場の所内発電所エリアに建設開始】三菱重工

◆ 6気筒500kWクラスの水素専焼エンジンを用いた実証試験を行う
◆ 自社工場敷地内に水素専焼エンジン発電セットの実証設備および水素供給設備を導入して検証を進め、水素利用拡大による脱炭素社会実現への貢献を目指す

https://www.mhi.com/jp/news/230706.html

三菱といえば、三菱ふそうトラック・バスもありますし。水素エンジンに関しては、まずは大型のバスやトラックのほうが、需要はあるかもしれませんね。特に、運転ルートが決まっているバスの場合は、燃料の問題やガスステーションの問題が、解消できますし。運輸用のトラックも、高速道路中心の運用なら、かなり効率的にできそうですし。供給設備とセットの研究というところに、かなりの本気度を感じます。というか、三菱のほうがTOYOTAよりも、会社の構造的に、水素専燃エンジンの有効性が活かせそうです。

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