見出し画像

ゼレンスキー大統領が米議会で演説

◉この演説に対して、吹き上がっている日本の国粋主義者がいるようですが。典型的な、日本国内だけで通用する論理で頭に血を昇らせているパターンに見えます。世界的には、真珠湾攻撃は「ナチスの仲間がやった卑怯な騙し討ち」という認識。いやアレはルーズベルト大統領にハメられたんだとか陰謀論を言う前に、駐米全権大使とその部下の役人の無能で、日本政府がやろうとしていた直前の宣戦布告に失敗している、という事実を認めなければ、お話になりません。

【「真珠湾攻撃や9.11を思い出して」ウクライナ大統領、米議会で演説】毎日新聞

 ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、米連邦議会でオンラインによる演説をした。「ロシアはわが国の領土だけでなく、基本的な人間の価値や自由に生きる権利を攻撃している」と強調。ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定、防空システムや戦闘機の供与などの追加支援、ロシアからの米企業の全面撤退などを求めた。
 ゼレンスキー氏は「1941年の(日本による)真珠湾攻撃を思い出してほしい。(2001年の)米同時多発テロを思い出してほしい。空からの攻撃で街が戦場になった。私たちはロシアによる空からの攻撃で毎日、毎晩、この3週間、同じことを経験している」と訴えた。

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、お馴染みのウクライナ問題用のヘッダーです。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■国際政治の生々しい現実…■

事前の宣戦布告なしでの奇襲が正しい判断ならば、日本は最初からそうすればよかったわけで。でも、東條英機内閣は事前に宣戦布告しようとした。それに失敗してしまった以上、とんでもなくまずいことをやってしまったというのは認めざるを得ないでしょう。ハル・ノートの内容の酷さとか、当時の日本の逼迫した状況とか、アメリカ取って宣戦布告なしで戦争を始めることがちょいちょいあったとか、そういうので相対化できるとでも思ってるんでしょうか?

そんなの、ただの後付けの言い訳ですよね。ゼレンスキー大統領にしてみれば、ウクライナとして是非とも味方につけておきたいのは国際政治で外交力のあるイギリス、そして圧倒的な軍事力を持つアメリカ。極端な話、アメリカさえ味方に付けられるなら、自衛隊を海外派兵することさえできない日本の動向とか、気にする必要はない。アメリカさえ動けば、日本はどうにでもなるわけですから。

■日本政府も気にしていない■

そもそもゼレンスキー大統領自身は、あの演説で真珠湾攻撃に触れることが日本に対して無礼だとは思っていないでしょうし、アメリカの議会の議員たちもほとんど思っていないでしょう。そしてなりより大事なことは、岸田内閣総理大臣をはじめほとんどの閣僚も、そうは思っていないということ。アメリカにとって、国土を攻撃された恐怖を思い起こさせるには、この二つぐらいしかないのですから、当然の言及です。一部の吹き上がった国粋主義者の意見が、日本全体の意見のはずもなし。

ロシアや9.11テロと一緒にすんなという心情は、自分も保守派の人間ですから、いちおう理解はできますが。それは幼稚な情緒論だというのも、理解してほしいです。日本人の大多数にとって、例えば米墨戦争なんて名前も知らないでしょう。よその国で起きた戦争なんて、そうやって大雑把な理解でしか共有されないわけです。そして真珠湾攻撃というのは「日本軍が卑怯な騙し討ちをした」というぐらいが世界的コンセンサス。批判すべきは、昔も今も無能な財務省と役人。

■日本が敵国だった歴史事実■

ちなみに米墨戦争、アメリカは宣戦布告なしに戦争を始めちゃっていますけどね。そこで「アメリカだって米墨戦争で宣戦布告してないじゃないか!」とか「そもそもフライングタイガーが〜」とか言い募っても、「それで真珠湾の卑怯な騙し討ちがなかったことになるのか? やったことは事実だよな?」で終わりでしょう。その論法で攻めても、ただの悪手でしかないのです。日本止むに止まれずやった、なんて感情論は通用しませんって。

こういう部分での評価はありですが。それはまた別の話。石油の輸入をアメリカにほとんど頼っているのに、アメリカに戦争を仕掛けるなんて、当時だって常識的にはおかしな事だったわけで。日本は軍事施設だけを攻撃したのでテロとは違うとか、「そんな世界中の大外の人間が知らないような枝葉にこだわって、切れ味の悪い演説なんか出来っか! 当時の日本が亡国の危機にやむを得ず立ち上がったって言うなら、うちだって亡国の危機なんだぞ」でしょう。

■国際政治のプロコトルとは■

慰安婦問題で、アメリカのニュージャージー州で発行されてるローカル紙のスター・レジャー紙に意見広告を出した、櫻井よしこ女史らと同じ。本人らは慰安婦問題に無知なアメリカ人を啓蒙しているつもりだったのでしょうけれど、ただの言い訳をしているようにしか見えない、という自覚がなかったようで。昔からのフォロワーなら理解されてるでしょうが、自分は韓国による慰安婦問題のフレームアップには、かなり批判的な人間です。

しかしその立場から見ても、あの意見広告はダメな手法だったと。そう思います。安倍晋三元総理大臣が韓国の朴槿恵大統領と、日韓慰安婦合意を取り付けた時も、はっきり言えば怒っていました。でも結果的にあの合意は、韓国に対して強いカードを握ったわけで。国際政治の現実とはこういうものかと、気付かされた部分です。真珠湾攻撃の事前通告が遅れてしまった、その歴史的な大体に関しては日本の非として認めた上で、対応していくのが大事。

■したたかな政治力に外交力■

広島や長崎への原爆投下だって、欧米の感覚では歴史的な事件入りする100年のスパン、つまり2045年以降にはアメリカから、原爆投下への謝罪があり、日本もそれを受け入れ責任や損害賠償はしないという形での、最後の手打ち式が行われるでしょう。国際法違反の民間人大量虐殺である原爆投下がそれで許されてたまるかという心情は、自分だって理解できます。しかしそれが恨みをそれ以上引きずらない社会の知恵でもあります。

理解出来ない人にはとことん理解できないでしょうけれど。朴槿恵大統領の被害者と加害者の関係は千年云々の演説とか不愉快だったでしょ? 己の欲せざることを人に施すことなかれ、です。日本は、ベトナム戦争で保留になり拷問を受けたジョン・マケイン議員が、終戦後は米越友好に奔走し、その流れで安倍晋三総理の米国議会演説のためにも力を貸してくれ、オバマ大統領の広島訪問まで引き出せたのですから。

本気で殴りあった者同士だからこそ親友になれる、というプロレスラーのディック・マードック氏も語っていたアメリカの価値観は、確かにあるわけで。中国という新たな敵の前に日米越の友好をその文脈で固めるのは、少なくとも現時点での日本の国益にかなうでしょう。その上で日本は自国の独立度を高め、在日米軍の数を少しずつ減らしていく。そういう現実対照的な方法論が大事でしょう。日米安保を改定した岸信介が、同時に日米地位協定の見直しや国連での米英の核実験を非難したりと、したたかな外交術を見せたように。

幼稚な国粋主義は、百害あって一利なし。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ