見出し画像

新聞の凋落が加速

◉新聞の部数が昨年だけで、180万部も減ったようです。毎日新聞の2021年7月の販売部数がABC調べで199万9439部となったそうですから、ほぼ毎日新聞に相当する部数が消えた計算です。というか、新聞の押し紙(販売店に押し付ける余剰部数)は約3割とも言われますから、毎日新聞の実売はとっくに120~140万部になってるでしょうけれど。新聞の凋落は止まらず、このままなら読売新聞が500万部割れ、朝日新聞が実売200万部割れ、毎日新聞が100万部割れが数年の内に来ても、仕方がないと思います。

【昨年も180万部減、全然止まらぬ「新聞」衰退の末路 「毎日」「産経」規模の部数が毎年消失している】東洋経済オンライン

 2021年末に公表された日本新聞協会の最新データで、一般紙の総発行部数が3000万部割れ寸前まで落ち込んだことが明らかになった。
 日本の新聞は高度経済成長期の1966年に3000万部台に乗り、その後は1990年代末の5000万部超まで拡大した。しかし、その後は下降を続け、部数減が止まる気配はまったくない。このまま進めば、本年中に一般紙は3000万部台を割り込むことが確実。高度経済成長以前の水準にまで落ち込むのも時間の問題になってきた。

ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーから、全国朝刊五紙です。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■多様性のない日本の新聞■

そもそも、こちらのデータによればアメリカでは最多部数を誇るUSAトゥデイですら、229万部とのこと。人口が3億人を超え、日本の倍以上のアメリカですら100万分を超えているのはわずか3紙のみ。日本だったら、読売新聞でも100万部ぐらいが妥当な部数でしょう。つまり、1000万部だ800万部だと言ってた昭和の時代の新聞の部数が、異常なだけで。ソビエト連邦や中華人民共和国のような、全体主義国家の新聞並みの発行部数だったわけです。なぜそんな事になっているのか?

①USAトゥデイ/229万部
②ウォールストリート・ジャーナル/201万部
③ニューヨーク・タイムズ/100万部
④ロサンゼルス・タイムズ/74万部
⑤ニューヨーク・デーリーポスト/63万部
⑤ニューヨーク・ポスト/63万部
⑦ワシントン・ポスト/62万部
⑧シカゴ・トリビューン/52万部
⑨サンフランシスコ・クロニクル/45万部
⑩ニューズ・デー/38万部

アメリカだと、やはり日本の20倍以上の国土の広さがありますから。そのぶん、各地の地方紙がたくさんあるんですね。それも日刊紙だけではなく、週刊新聞とか月刊新聞とか、多様にある。日本は実は新聞の多様性がなく、地方紙が受け持つべきところを、全国紙が侵食していたわけで。でも、そもそも新聞というメディア自体が時代の流れで、消えつつあるわけで。アメリカでさえ、15年間で2100紙もの新聞が、廃刊したとか。消えゆく旧メディア。

■情報の値段が変わった?■

今は、インターネットで情報は簡単に、しかも無料で共有できます。昔は、テレビやラジオの情報(ラテ欄)や株式情報とかさえも、新聞に頼らざるを得なかったわけですが。現在はそういう情報は、カネを出さずとも、簡単に入手できます。これはインターネットのせいではなく、元々情報価値が低かったものを、マスメディアが発信や流通を独占することによって、有料に変えていた錬金術に過ぎないんです。それが崩れただけ。

しかしこれは何も、新聞だけの状況じゃないんですよね。文春や新潮、ポストなどの雑誌も、どんどん部数は落ちていますし。それはもう漫画雑誌ですら、部数がどんどん落ちています。休刊廃刊も止まりません。では、本が売れなくなっているか? そんなことはありません。一昨年は、巣ごもり景気の追い風もあって、電子書籍が馬鹿売れしたおかげで、1995年の出版社過去最高益を四半世紀ぶりに更新しました。

去年も、出版業界は全体としては好調でした。雑誌と単行本という収益方法がある出版業界に対して、新聞は広告費に依存しています。だから大衆は、金を出す価値のあるものには、むしろ出してるんですよね。この不景気にも関わらず。単純な情報の消費量自体は、むしろ増えている。ではなぜ、新聞や雑誌の部数は落ち続けるのか? それはつまり、新聞や雑誌という〝抱き合わせ商法〟がもう、限界になっているわけです。

■抱き合わせ商法が終焉へ■

抱き合わせ商法〟と言われると、新聞や雑誌を作ってる側はギョッとするでしょう。売れている人気のゲームソフトと不人気のゲームソフトをセットで買わせる商法を、批判していた側ですからね。自分たちはそんな汚い商売はやっていないぞ、と反論する人もいるでしょう。しかし、株式に興味がない人間には、株価のページは不要。政治に興味がない人間には、政治面は不要。「新聞とは総合的な情報媒体だ」と言っても、抱き合わせ商法なんです。

これは雑誌も同じで、例えば『ONE PIECE』と『鬼滅の刃』だけ読みたい人間にとっては、ジャンプの他の作品は不要。読者は必要なものを必要なだけほしいわけです。実際、音楽の方ではアルバムを出しても、ダウンロードストアでは売れるのはシングルカットされたようなヒット曲だけ。アーティスト側がいくら『アルバムは自分の作品だから、全体を通して聴いてほしい」と訴えても、そのアーティストのファンでも、買わない人は買わない。

これはもう、そういう時代なんだと割り切って、単体でも通用するような情報や作品を、提供するしかないんですよね。少なくとも、マス向けには。大衆の欲望とは、そういうモノです。濃いファン相手には別ですが。バラ売りして、これならアルバムも買うかというファンを呼び込むという、濃いファンを育てていく努力は必要でしょう。音楽業界で起きたことが、遅れて新聞や雑誌の世界に来ているだけ。新聞雑誌は、先例として参考になります。

■情報の二極分化は不可避■

インターネットによって情報の収集が簡単になり、大量に無料の情報が出回ると、情報は二極分化しますね。ひとつの極が、金を払ってでも入手したくなる、貴重な情報。貴重と言っても、必ずしも、金銭的な利益を生み出すという訳ではないのが、ポイントです。ザックリ言えば、手元に置きたくなる価値のある情報、所有したくなる情報、ということになります。それはだいたい以下のような分類になります。

①希少性がある情報
②娯楽として価値がある情報
③深い考察や見識がある情報
④資料的な価値がある情報

たとえば①は、政治や企業などのディープな情報。法整備の動きや規制などの情報はカネに直結しますし、AppleやGoogleなどの新製品情報とか、それ自体に価値がありますね。②は小説や漫画などのエンタメ作品などがそうですし、③は例えば昔だと山本夏彦氏やナンシー関さんのエッセイとか、あるいは自分の興味のある分野や趣味の分野の、買って読む価値がある情報。④は学術的な情報や統計など、きちんと研究されたデータなど、やはり価値があるわけで。

■ローカルやマニアックな情報■

もうひとつの極は、需要が低く新聞やテレビや出版社など、大手マスコミが手を出すメリットがないような、ローカルな情報やマニアックな情報。つまり、ミニコミ誌や同人誌などがカバーする情報ですね。それこそ、読売新聞以外の新聞社が全国紙から撤退し、ブロック紙になることで、地元に密着した地方紙が、冠婚葬祭行事などの地域情報を網羅することで、生き残りを賭ける部分はあるでしょうね。

それは、ジャンプやマガジンがカバーしないジャンルの漫画や、地域に密着した作品とかに、ひとつの可能性があるでしょうし。例えば、浦和レッズの漫画を全国に売ろうとしたら大変ですが、浦和市内や園周辺だけで売ろうと思えば、流通とか簡単。それこそ、スタジアムや市内で売れば、80%ぐらいはカバーできるでしょうね。全国で売っても初版が5000部の本ではなく、特定地域で濃く深く売る。実際、古沢優先生のレッズ漫画は、そうやって売れたわけで。

東京から全国に発信して、全国で売る必要はないわけです。これは、マニアックなジャンルにしてもそうです。ジャンプで100万部売れた作品の印税が4800万円。でも、DMM同人のエロ漫画が、1430円の販売価格でトータル販売数8万8660冊。売上は1億2678万3800円。この価格帯だと印税率は67%前後なので、印税は8494万5146円。10分の1以下の売上で、2倍近い印税。もう、こういう形でかつての寡占市場で独占していた利益が、本来のクリエイターに利益が戻っていくべき時代。

もちろん新人の育成や、新しいコンテンツの育成の問題はありますが、それはこちらのnoteなどで論じていますので。興味がある方はどうぞm(_ _)m

■新聞各紙の生き残り戦略は?■

アホなマスコミは、今の若い人は新聞を読まなくなった本を読まなくなったとか言いますが。現実的には、現代人が接する情報の量は遥かに多くなり、膨大な量の情報を読んでいます。そうなると、マスコミの精度の低い情報のデタラメとか、簡単に見抜かれ共有されてしまうわけです。結果、精度の低い情報にカネを払うはずもなく。昔は売れた安い情報はもう、抱合せでは売れないと、自覚するしかないでしょうね。

情報をアップデートすべきは、マスコミの側です。そうなった時、経済に強い日経新聞は、生き残るでしょう。デジタル化にも早くから力を入れ、有料会員も順調に増やしています。あるいは営業力が強い読売新聞とか、例え部数が100万部になっても、全国紙として生き残るでしょう。保守系新聞として特色があり、いちはやく夕刊の廃止や押し紙の整理、ブロック紙入を見越して動いている産経新聞は、生き残りそう。

石油の時代の到来に、常磐炭鉱がハワイアンセンターで生き残りをかけたように。時代の変化に柔軟に対応するには、過去の成功体験に囚われない。これって大事ですね。船に刻みて剣を求めるの愚は、慎むべき。しかし朝日新聞や毎日新聞は、三池炭鉱のように現場の抵抗で改革が進まず、致命傷になるまで動けない可能性が。植村隆記者が退職してから、右旋回を始めた朝日新聞に比較して、野党共闘を主導した活動家に接近しているように見える毎日新聞やTBSは、危ういような……。

■昭和精算の令和になるのか?■

これからの5年間で、いくつかの全国紙がブロック紙に転落し、中には倒産の危機に陥るでしょう(本業は不動産屋と揶揄される新聞社も、既に出ていますが)。そうなったら、社員のリストラを進めて現在の5分の1かそれ以下に減らし、スリム化は必然。新聞自体はネットでの有料配信や記事のバラ売りが進み、実際にそうなっていますが。残念ながら、無料部分を読んでも食指が動かない、有料記事が多いです。

あるいは流通自体に大鉈を振るう。各家庭に大型のタブレットを貸与して、新聞配達からの脱却を進める。販売店は反発するでしょうけれど、それができないとダメでしょうね。タブレット型は安くなってますし、場合によっては新聞専用のタブレットを作ってもいいかもしれませんし。雑誌も、いちおう紙の本の販売は継続しつつ、情報のバラ売りが常態化するし、内容的にもセンセーショナルなものと、じっくり取材したものと、両方に二極分化するでしょう。

漫画雑誌は、ジャンプ+のようなネットベースで、連載形式が選べページ数もある程度自由という、柔軟な運営と新人発掘のシステムが漏れるになるでしょうね。そして作家は、同人誌と電子出版を両輪とした、個人出版がメインになり。流通は狭く限定的になるでしょうけれど、利益率は昔より多くなりそう。でも『がんばれ同期ちゃん』のような、ネット発のアニメ化作品が増えるでしょう。ここらへんの考察は、下記のnoteをどうぞ。

国民みんなが知ってるヒットは、少なくなるでしょうけれど、そういう作品が本当に必要かという問題も。『鬼滅の刃』の大ヒットのように、逆に二極分化で昔以上のメガヒットが、少数は出るかもしれませんよ? 知らんけど。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ