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映画感想:STAND BY ME ドラえもん2

◉去年観た映画の感想を、ボチボチ消化するシリーズ。上映中の作品に言及した方が、アクセスも稼げるのですが、ウチはアクセス目的でもないですし。作品のネタバレに敏感な人もいますから、ずらした方が良い部分もありますしね。自分の中で反芻する期間とか、必要な部分もありますし。さらにnoteというSNS自体が、けっこう古い記事も、読まれる媒体でもありますから。

STAND BY ME ドラえもん2

国民的アニメ「ドラえもん」初の3DCGアニメーション映画として2014年に公開され、大ヒットを記録した「STAND BY ME ドラえもん」の続編。前作から引き続き監督を八木竜一、脚本・共同監督を山崎貴が担当し、原作漫画の名エピソード「おばあちゃんのおもいで」にオリジナル要素を加えてストーリーを再構築。前作で描かれた「のび太の結婚前夜」の翌日である結婚式当日を舞台に、のび太としずかの結婚式を描く。ある日、優しかったおばあちゃんとの思い出のつまった古いクマのぬいぐるみを見つけたのび太は、おばあちゃんに会いたいと思い立ち、ドラえもんの反対を押し切りタイムマシンで過去へ向かう。未来から突然やってきたのび太を信じて受け入れてくれたおばあちゃんの「あんたのお嫁さんをひと目見たくなっちゃった」という一言で、のび太はおばあちゃんに未来の結婚式を見せようと決意する。しかし、未来の結婚式当日、新郎のび太はしずかの前から逃げ出してしまい……。大人になったのび太の声を前作から続いて妻夫木聡が担当し、おばあちゃん役は宮本信子が務めた。

2020年製作/96分/G/日本
配給:東宝

個人的には前作の『STAND BY ME ドラえもん』はかなり好きな作品だったんですが。二匹目のドジョウを狙った本作は、正直イマイチでした。ムリに泣かせに持っていく姿勢も、やり過ぎです。パート2モノは、得てして前作で受けた要素を増量しすぎて、バランスを崩すモノ。本作については、ライムスター宇多丸氏の評論が正鵠過ぎて、他にもう付け加えることもないぐらいなんですが……。

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■レギュラードラマとストーリードラマ■

そもそも、アニメ版で結婚前夜という名作があるわけで。そこと被らないようにしたのかもしれませんが。「結婚前夜+おばあちゃんの思い出でいいんじゃね?」という、素朴な疑問があります。結婚前夜自体は、しずかちゃんのマリッジブルーに絡めて、のび太の成長譚でもあったんですけれど。そこをムリに外した結果、なにかのび太が成長しないままの作品に見えちゃいました。

そもそもドラえもんはレギュラードラマ。レギュラードラマとは、要するに『水戸黄門』や『男はつらいよ』のように、毎回毎回、同じパターンが延々と繰り返される作品で、作中の人物は歳も取らず、成長もせず、押井守監督ではないですが、終わりなき日常が繰り返される作品です。長期人気作品には、このレギュラードラマが多いです。そもそも『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』や『クレヨンしんちゃん』などが、代表的な作品です。

これに対置されるのがストーリードラマ。こちらは、登場人物が物語の中でいろんあ経験を経たことで、肉体的にも精神的にも成長し、終わりがある物語です。そういう意味では、週刊少年誌とか、本来は主人公が出会って戦って葛藤して、成長して終わりの話を、無理やりレギュラードラマのように続けた結果、最終回が記憶に残らない作品を、大量に生み出してしまっているのですが。それはともかく。

■終わった作品をムリに続ける問題■

そもそものドラえもんは、のび太が成長することで、一度は連載が終わった作品でした。ドラえもんに依存していたのび太が、自分の力でジャイアンに立ち向かい、根負けさせることで克服する。成長と自立の物語でした。それは『ウルトラマン』の最終回で、ウルトラマンを倒したゼットンを、科学特捜隊のメンバーが倒すことで、ウルトラマンが去った後でも、立派に自立できる姿を描いたように。

ところが、ドラえもんがあまりの人気で、戻ってくる形にして、レギュラードラマになりました。その点は、同じレギュラードラマである『クレヨンしんちゃん』の映画版で、原恵一監督が『オトナ帝国の逆襲』と『戦国大合戦』で、成長するしんちゃんを描いて、名作傑作の誉れが高い日本に仕上がりましたが、原恵一監督がしんちゃんから離れてしまいました。成長を描いてしまったら、その後は蛇足ですからね。

その意味では、前作の『STAND BY ME ドラえもん』自体が、ストーリードラマです。のび太の成長を描く、成長したのび太を描く物語。それは成長したら終わりの物語です。そこで終わりだからこそ、感動も大きいわけで。また、完結性も高い。なのに、無理やり続編を作ったら? 内容を引き延ばされた人気連載作品のようなモノで、そりゃあスケールダウンは必然ですよね。引き延ばすならレギュラードラマ化は必然。

■本作最大の問題点■

そこが解っていない、解っていても目前の利益で動くプロデューサーは多いわけで。本作も、前作のヒットで二匹目のドジョウを狙ったと。でも、ストーリードラマからレギュラードラマになった本作を、再びストーリードラマとして描いた『STAND BY ME ドラえもん』がまたレギュラードラマ的なことをやったら、迷走と言わざるを得ないですね。やるなら、いっそ名作『のび太の恐竜』をCGアニメでやれば良かったぐらい。

それより重要なのは、この映画には、致命的な問題がある点。ライムスター宇多丸さんも指摘されていらっしゃいませんでしたが、タイムマシーンの問題やのび太の過去のバイクなどへの知識の欠如など以上に、自分には大きかったです。それは……のび太のおばあちゃんが、笑福亭鶴瓶師匠にしか見えない問題。正直、そっちの方に気を取られて、映画に集中できませんでした。本当にもう。

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みなさんは、気になりませんでしたか? ……気にならなかった? あ、そうですか。失礼しましたm(_ _)m 作品自体は、やはり全体としては充分に面白かったんですが、のび太が子供時代の文化を忘れてる点や、ジャイアン達の関係性とか、微妙にノイズになってしまってるんですよね。笑福亭鶴瓶師匠云々はともかく、そういうノイズが作品では悪目立ちをするということで。
どっとはらい

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