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脱炭素と脱原発とSMR

◉グレタ・トゥーンベリさんの「原発は脱炭素エネルギーに向けての解決策の一部となりうる」 という、国連演説が今ごろになって蒸し返されていますが。この発言自体は、別におかしくないです。欧米の二酸化炭素排出量削減派には、こういう意見はそこそこ多いのですが、日本はヒステリックな反原発派が脱炭素と脱原発を同時に言うという、しかもその矛盾に気付かないという、絶望的な状況ですが……。

【小型原子炉「安価なクリーン電力」は本当か】WSJ

 原子力産業は長年にわたり規模が縮小していたが、活況を取り戻そうとしている。その鍵を握るのは、小型化した原子炉かもしれない。
(中略)
 小型モジュール炉(SMR)と呼ばれるこの新しい原子炉は、コンパクトな格納容器に設置することができ、従来のものに比べ遮へいと監視を弱めても安全に稼働できるとうたわれている。SMRにより、発電所は巨大な砂時計のような形をした冷却塔が不要になるかもしれない。過熱を防ぐために水中に設置されるタイプのSMRもある。

ウォール・ストリート・ジャーナルの有料記事ですが、無料部分だけでも、かなり重要な情報を含んでいますね。脱炭素と脱原発とを同時に語るというのは、非武装と中立を同時に語るようなお花畑の論理と同じですから。原子力発電所や放射性物質を、穢れのように呪術的に捉える態度(本人たちは科学的な議論をしてるつもりなので議論が噛み合いませんが)は、建設的な議論に益しません。

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■第四世代原子炉の時代■

アメリカは2029年までに国内初の小型モジュール炉(SMR)の稼働を目指す。あと8年ぐらいは掛かる、ということですね。おそらくは原子力関係の研究開発ではもっとも進んでいるであろうアメリカの、ひとつの指標がここら辺。中国は今年、商用実証炉の稼働を目指します。ここで数年のデータを取って、本格的な商用炉は5年後か10年後か。ロシアは昨年、船上で稼働させてみたわけで。

どうにも、反原発派は技術は日進月歩である、という事実が見えていないわけで。第四世代の原子炉は、イロイロと研究されていますが、メルトダウンしにくい構造で安全性が高いモノが多いわけで。ウィキペディア先生情報でも、最低限の情報は触れられます。

熱中性子炉
・超高温原子炉(Very-High-Temperature Reactor、VHTR)
・超臨界圧軽水冷却炉(Supercritical-water-cooled reactor、SCWR)
・溶融塩原子炉(Molten-salt reactor、MSR)
高速炉
・ガス冷却高速炉(Gas-cooled fast reactor、GFR)
・ナトリウム冷却高速炉(Sodium-cooled fast reactor、SFR)
・鉛冷却高速炉(Lead-cooled fast reactor、LFR)

この、超高温原子炉が高温ガス炉とも呼ばれ、第三世代の原子炉よりもコンパクトなので、小型モジュール炉とも呼ばれますが。出力は第三世代の3分の1ぐらいなのですが。これはデメリットでありますがメリットでもあります。多くは本格稼働は2030年代からとされます。

■第三世代炉と岩盤と冷却水■

第二世代や第三世代の原子炉は、コンクリートと鉄筋の固まりなので、固い岩盤が必要です。固い岩盤、それは古い地層。そりゃあ、1000万年かけてプレスされて固い岩盤になった地層より、1億年かけてプレスされた地層の方がカッチカチなのは解りますよね。なので、原子力発電所を建設するにはは第三紀(6430万年前から260万年前まで)より古い地層の岩盤が理想とされます。

原子力発電所がある福井・福島・玄海・川内・泊・島根・伊方などの近くに、恐竜化石や貝化石の産地が近い理由は、それです。恐竜の大繁栄時代の白亜紀が、約1億4500万年前から6600万年前ですから、原発がかなり古い岩盤の近くにあるのが解るでしょう。さらに、原子力発電所には冷却用に大量の水が必要です。近くに湖沼や河川が必要で、無い場合は海水が三次冷却水に使われます。

こういう条件があるため、「東京に原発を!」などと言って、上手い皮肉を言ったつもりの反原発派がいますが。無知です。関東平野は火山灰や土砂が流されて堆積した沖積平野だと、中学で教わらなかったか、寝ていたか。岩盤まで、分厚いところでは3000mも掘らないとダメなので、原発は造れません。大量のパイルを打ち込めば可能ですが、費用対効果で無意味に。むしろ、東海村第二原発とか、かなり東京に近い、努力した方です。

■第四世代炉のメリット■

しかし、第四世代の原子炉は、冷却水に水を使いません。正確には使わないタイプのモノがあるので、事故で制御が暴走して、使われてる水が熱によって水蒸気爆発を起こすような事故が、防げるというメリットがあります。福島原発の事故のように、冷却用の外部電源が失われても、自動的に発熱が止まる仕組みが研究されているんですね。冷却材にはヘリウムや溶融塩が使われるタイプがあります。

記事にもあるように、水中タイプも研究されていますが。こういう構造なので、地震に耐えるために、鉄骨とコンクリートの塊である必要がありませんし、固い岩盤が必要でもありません。また、冷却材には水が必要ではないので、湖沼や河川、海辺である必要がありません。ロシアが実証したように、船上での設置も可能ですし、大型トレーラーに乗せて、運搬できるぐらいコンパクトにできるようです。

つまり、砂漠でも山間部でも、運用が可能。出力は小さいですが、その代わり数で補うのが中国の戦略。でもこれはメリットでもあって、第三世代の原子炉は一基が停止したら電力供給に大ダメージが起きますが、3基に分散させれば1基が停止しても、2基が稼働しますし。それこそ反原発派の夢であった、東京に原発を!が実現するでしょう。まぁ、そうなったら今度は反対するのでしょうけれど。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


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