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AV新法は現代の禁酒法か?
◉拙速極まりない形で、通ってしまったAV新法ですが。審議過程でもその問題が指摘されていましたが、早くもその問題が表出してしまったようです。出演強要の被害者を救うどころか、適正AV業界の女優やスタッフの仕事を減らし、逆に地下に潜らせたり。そこで思い出すのは、アメリカの禁酒法。この法律によって、密造酒の売買で、マフィアが莫大な資金力を持ってしまったという、皮肉な歴史があります。
【「AV新法」の皮肉 悪質な業者に出演希望女性がみずから集まってしまう構図に】NEWSポストセブン
2022年4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられた。それに伴い、18歳になれば親の承諾なしに一人で契約をすることができるようになり、投資詐欺の被害とともに懸念されたのが、出演強要被害の広がりだ。それを防ぐ目的もあって短期間で成立したAV出演被害防止・救済法だが、かえって事態をややこしくする現象が起きている。ライターの宮添優氏が、出演者の権利をまもるための義務によってかえって、被害を防ぐどころか地下に潜らせつつある現実についてレポートする。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、ウィスキーで検索した画像です。
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■禁酒法とマフィアと■
確かに、お酒の飲み過ぎによってアルコール依存症になったり、よって他人とトラブルになり暴力を振るい、時には殺人事件にまで発展することはあります。しかし、だからといってそれを禁止すると、かえって反動が出てしまうもの。もともと禁欲的なプロテスタントの国であるアメリカにおいて、禁酒法というのは、通りやすい素地はあったのですが。実際には、違法な酒の流通および無許可での製造販売は激増したとか。
禁酒法は1920年から1933年まで続くのですが。1929年9月4日から始まったアメリカの株価の大暴落に端を発する世界恐慌も重なり、マフィアが一気に勢力を広げてしまいます。何しろ銀行が倒産するような時代ですから。反社会的勢力であるマフィアは、基本的に現金商売です。密造酒の製造元に対してその場で現金を払い、一般人に売る時にも現金で売る。これ自体は商売の基本なのですが、結果的にパブリック・エネミーを政府が助長してしまったわけです。
禁酒法は、ザル法案だったせいもあるのですが。結果的にマフィアを助長しただけではなく、アメリカ人の間に遵法意識というものを蔑ろにする風潮を産んでしまいました。法律なんか守らなくてもいい、あるいは法律を破ってもバレなければいい。異常に多い訴訟社会であるアメリカの状況というのは、多民族国家への価値観のぶつかり合いという背景もあるでしょうけれど。なにかこう、禁酒法時代に育まれた、法律をただの手段とする利己的な部分を生み出したのではないかと、自分などは思ってしまいます。ただの個人の感想ですが。
■AV新法の拙速と弊害■
この件に関しては、おなじみの平裕介弁護士の意見が、正鵠でしょう。法律が成立する前から指摘されていた問題点が、案の定想定通りの問題を起こしてしまっているのですから。昭和の頃のイメージで、AV業界を問題ある業界のように扱い、職業選択の自由を制限資格恋愛状況に追い込んだのですから。AV業界は自主的に適正化に動いて、過去の作品の販売停止などもスムーズにできるように、業界のシステムを変えていたのに。
相当性を欠く規制を関係者の意見をほぼ聴かないで不合理な新法を作った弊害が出ています。これは以前から指摘されていたことでしたが…
— 平 裕介 (@YusukeTaira) December 18, 2022
「AV新法」の皮肉…「裏ビデオ」に出演する女性、業界内でも相次ぐ訳 #ldnews https://t.co/diV7Zta4Uw
新法の規制が不相当であり不合理な内容であることは、法学セミナー2023年1月号で指摘しました。特集記事「2022年の新法・改正法を考える」の1つである拙稿・平裕介「AV新法と職業の自由」法セミ816号(2023年)36~41頁をお読みいただけますと幸いです。よろしくお願いします!https://t.co/SvZVRbC264
— 平 裕介 (@YusukeTaira) December 18, 2022
拙稿では、国会議員たちが無視した職業人の方々の「声」を中心に引用し、それを法的に評価しています。しかし、これは本来的には「全国民」の代表である国会議員の仕事のはず。国会議員は一部の市民の代表者ではないのに、なぜか一部の市民の声しか聴かない。しっかり仕事をしてほしい。民間ならクビだ
— 平 裕介 (@YusukeTaira) December 18, 2022
記事の写真ですが、グータッチしている議員の無神経さがまた強烈ですね。おそらく職業の自由を制限される市民の不利益や気持ちなど1ミリも考えていないのでしょう。そうでなければこんな軽率な行為はできないはず。人の痛みを感じない人が国会議員をやっているという悲劇
— 平 裕介 (@YusukeTaira) December 18, 2022
平裕介弁護士の、静かな怒りが伝わってきますね。イメージ的に反対しづらい、あるいは世間的にあまり興味を持たれない事象を利用して、政治的な発言力や何等かの公金の利権に食い込みたい人々がいるようです。特に現場から離れた昔の AV女優を引っ張り出して、まるで現在のことのように語り。そのくせ、現在の現役女優やスタッフなど業界の現場にいる人間の声は聞かない。これは由々しき問題ではないのでしょうか?
ぱっぷすの相談件数の推移を調べてみたら各資料で全部数値が食い違ってたんだけど、これはどういうことなんだろう?#PAPS #ぱっぷす pic.twitter.com/T9BzCn2xms
— 25 (@nijiyuugo) December 16, 2022
■信仰の押しつけは誰■
ハッキリ言えば、立憲民主党などの野党のみならず、自民党などの与党の議員も巻き込んで、AV新法が成立した裏には、昔から警察官僚に食い込んでいたプロテスタント系の宗教団体───公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会の存在があります。もちろん、どんな信念や信仰を持とうが、思想信条の自由であり信仰の自由であります。矯風会については、Wikipedia先生の記述をそのまま転載させていただきます。
1870年代のアメリカ合衆国で、禁酒運動をキャリー・ネイションらが大々的に展開していたプロテスタント系ピューリタンの禁酒運動婦人団体「女性キリスト教禁酒連合(Women's Christian Temperance Union)」の日本支部として、矢嶋楫子らが組織した。
活動初期は禁酒禁煙運動、公娼制度の廃止運動(廃娼運動)、婦人参政権獲得運動に力を置いていた。1900年頃からの廃娼運動では、救世軍中央婦人救済部と共に婦人ホーム、職業紹介、教育、人事相談、医療といった婦人の救済を目的とした活動を行った。関東大震災後は特に力を入れて活動を行った結果、売春婦は減っていったが、代わりに「裏と表と二重の職業を持っている婦人」が増えていった。
もともとアメリカの禁酒法に賛成する団体として生まれた矯風会が、現代の禁酒法的な問題を引き起こしているという皮肉。それだけでなく、かつての廃娼運動でもけっきょくは、売春婦は減ってたが「裏と表と二重の職業を持っている婦人」が増えていっって……。今も昔も理想を押し通そうとして、帰って社会に歪みをもたらしていませんか? もう一点、矯風会の創設者・矢嶋楫子について。矢嶋楫子――彼女は、妻子持ちの書生との間に、女児を宿しています。
■心の闇を投影する鏡■
ただし、そのこと自体を責めているのではありません。人間である以上、他人の夫を愛してしまうことも、不倫関係に陥ることもあるのですから。自分だって、いつそうなるかわかりません。人間という不完全な存在である以上、いくらそれを法律や宗教で禁じても、必ず逸脱してしまうものです。自分自身がそのような経験をした人間でありながら、他者に自分の倫理観を押し付けるという生き方を選んでしまったことが、問題なのです。
現在よりもはるかに同性愛者に対する偏見が厳しかった時代、FBIのエドガー・フーバー長官は同性愛者であったことを周囲に隠し、社会的な地位を得たのですが。彼は、盗聴が大好きだったそうです。ケネディ大統領やキング牧師の浮気の証拠を掴み、その結果は長期にわたってFBI長官の地位を保持し続けたとされます。ここらへんは、レオナルド・ディカプリオ主演でクリント・イーストウッド監督の映画『J・エドガー』でも描かれていましたが。それって、魔女と告発されないために他人を魔女と告発するのと同じ真理ですよね。
同性愛者でありながら、同性愛者でも普通に生きられる社会を目指すのではなく、逆に同性愛者を攻撃する議員とか、アメリカにはいるそうです。矢嶋楫子には同じものを感じます。本人の主観では信仰に目覚めて、他者にも福音をもたらそうとしていたのかもしれませんが。それは、『尼僧の告白』ではなかったのか? 本書は、仏教に帰依した女性たちの、悟りを得た喜びの処と見るのか、実際は煩悩を捨てきれず、悟っていないのに悟ったと勘違いした「魔境」の書なのか、読んだ人によって感想は違うでしょうけれど。
■万機公論に決すべし■
そういえば「小児性愛を助長と漫画批判したCNNプロデューサーが児童性的虐待で逮捕」云々という話題がTwitterに流れてきましたが、どうやらこれは事実を一部歪めているようですが。しかし、CNNが頭のハエを追えていないのは同じ。一般社団法人Colaboの賛同者にキメセクした元反社牧師がいたってのと、似ていますね。仁藤夢乃代表が犯罪を犯したわけではないですが、理事がやスタッフが犯罪を犯したのと同じような状況ですからね、CNNの立場は。
繰り返しますが、人間はそもそも弱い存在です。弱い存在であるがゆえに理想を求め、自分を変えていこうとする部分も確かにあります。ですがその弱い部分を認めず、他者にそれを強制するのは、必ずどこかに歪みが起きます。己の欲せざる所は人に施す勿れ。その妥協点が、法律という存在なのかもしれません。そしてその法律は不磨の大典などではなく。時代や状況に合わせて変化して行くものだし、変化させるべきだとも思います。拙速に過ぎた AV新法に関しては、見直しいや廃案も視野に入れて国会議員には動いていただきたいところです。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ
売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ