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中華空母の実力差

◉韓国では保守系とされる大手日刊紙・朝鮮日報が、中国初の国産空母である山東を、けっこう詳細に批判しています。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)ベッタリで中華恐怖症だった文在寅政権では、なかなかこういう記事は出せなかったですし、これも尹錫悦政権になって風向きが変わったので、伝統の事大主義が発動したのか? 日本人から見れば保守的とされる朝鮮日報・中央日報・東亜日報(略して朝中東)の新聞も、反日色と中華フォビアは顕著ですけどね。ただ、記事自体は有用です。

【中国初の国産空母「山東」の屈辱…米国に誇示する訓練で実力差が浮き彫りに】朝鮮日報日本語版

空母「山東」、就役から4年を経てグアム海域まで進出し、力を見せつけたが…
「スキージャンプ台を用いた発艦に限界、燃料補給の問題など、弱点ばかりがあらわに」との評価

今年4月、中国空母の勢力誇示は最高潮に達しました。中国初の国産空母「山東」は、4月8日から10日まで台湾東方370キロの海上で台湾包囲攻撃訓練を行いました。台湾の蔡英文総統が米国で連邦議会のケビン・マッカーシー下院議長と会談し、戻ってきた直後のことでした。

 訓練が終わると、今度は南東へと向かいました。グアム西方710キロの海上まで進出して1週間、140回にわたりJ15(殲15)艦載機の離着艦訓練を行いました。有事の際に台湾を支援するルートを遮断する訓練をしたのです。中国国営の各メディアは「山東が遠距離総合作戦能力をアップグレードした」「台湾は今や袋のねずみ」と大々的な宣伝を打ちました。

https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/05/29/2023052980010.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、空母赤城の自動カラー化写真です。

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■中華空母と艦載機■

中国も、遼寧や山東でアメリカの海軍に対抗できるとは思っていないでしょうね。アメリカのは原子力空母、しかも10隻でローテーションする体制。もう、軍事力的には比較にならないんですよね。ベトナム戦争やアフガンのような、ゲリラ戦に巻き込まれない限り、アメリカの正規戦力はやはり、圧倒的です。というか、ゲリラという言葉が生まれた1808年からのスペイン独立戦争も、ナポレオンのフランス軍の圧倒的な戦力に対して、ゲリラ戦が有効だと、証明した部分があるんですよね。正規軍はゲリラに弱い。

でも、空母という真っ当な戦力で対抗しようとすると、アメリカとの戦力差は明らかで、それこそアメリカの所有する強襲揚陸艦ですら、中うか空母は対抗できないでしょう。だって、ロシア連邦軍のウクライナ侵攻によって、ロシア製の武器が西側の兵器に差がついていることが、判ってしまいましたから。中国の戦闘機などは、そのロシア製の兵器の、技術供与によって生まれ、もちろんいろいろと独自の研究や工夫が施されていますでしょうけれど、たぶん艦載機は陸上基地から飛び立つ通常のタイプの戦闘機より、一枚も二枚も下でしょう。

■彼我の差はまだ大きい■

アメリカ空軍のF-15は、50年以上前の設計ですが、公的には撃墜された機体はゼロ。そのF-15が模擬戦では、F-35には全く勝てなかったので。艦載機タイプのF-35BやF-35Cには、殲15は歯が立たない。というか、現在の空母艦載機のF-18にも勝てないでしょう。ウクライナにF-16が投入されたら、ロシアは制空権を奪われるという見方が強いのも、自分は納得できます。もっとも中国自身も、海軍力ではアメリカとの戦力差は大人と子供と思っているでしょう。中国は2040年にアメリカと対抗できるレベルを目指しているという指摘も。

 中国にとって2隻目の空母となる山東は、2019年の就役後、一度も西太平洋に進出せず、「性能に問題があるのではないか」という見方がかなりありました。2021年6月には、造船所に入った山東の飛行甲板にぶすぶすと穴が開いている様子が衛星写真で捕捉され、手抜き工事疑惑が持ち上がったこともあります。

中華戦闘機・殲15の排気熱で甲板に穴ができた、という噂ですが。これって穴ですかね? 単に黒ずんでるように見えますが。

 山東は、外観は遼寧と似ていますが、甲板上の艦橋(アイランド)を大幅に縮小して戦闘機の搭載数を大幅に増やしました。また、飛行甲板の下にも艦載機を積む空間を作るなど、西側式の設計を導入しました。遼寧にはJ15戦闘機24機が載りますが、山東は36機積めるといいます。

こういう情報は、有用ですね。搭載機は36機。日本のいづも級が10機前後の搭載となるようですので、たぶんF-35Bを搭載したアメリカ級強襲揚陸艦が相手では、全滅の危険性が。中華空母がこのまま10隻体制になっても、艦載機のレベルはそうそう追いつけないでしょうし。なにより、優秀なパイロットは一朝一夕では育ちませんから。日本は先の大戦で、人命軽視のゼロ戦の設計で、ベテランパイロットを失い、学徒動員の新兵まで特攻に使う状態に追い込まれ。パイロットの育成に時間も金もかかると判っていたアメリカは、合理的に人命重視に。

■人の振り見て我が振り直せ■

朝鮮日報は批判的ですが、でも自国の独島級強襲揚陸艦が、似たような状態というのは、判ってるんですかね? いや、ある意味で山東や福建よりも、酷いです。日本に対抗しようと造ったはいいけれど、ヘリコプター搭載感としては、そもそも使えるヘリコプターが間に合わず、きちんと役目を果たせず。訓練中に度々事故を起こし、韓国海軍の稚拙さの、象徴になっています。これも、日本の日向型の全長197メートルに対抗して、199メートルで東洋最大の全通甲板の艦艇という、無意味な面子を優先した疑い。

日本は、全通甲板の艦艇は178メートル・満載排水量1万4000トンのおおすみ型輸送艦が1998年から就役し、全長197メートル・満載排水量1万9000トンのひゅうが型護衛艦が2009年に就役し。さらに全長248メートル・満載排水量2万6000トンのいずも型護衛艦が2015年に就役と、段階を踏んで大型化しています。ハードウェアを揃えても、人間はそうそう育ちませんから。戦前の、海軍のノウハウとかはもうだいぶ失われ、一から構築していかないといけませんから、当然ですよね。一朝一夕に空母とは行かない。次は5万トン弱の強襲揚陸艦でしょう。

中国が空母ヴァリャーグをウクライナから購入したのは、1998年。奇しくも、おおすみ型輸送艦が就役した年です。建造再開が2005年で、完成式典が2011年と、ひゅうが型護衛艦の就役に前後しています。そこから、山東と福建を矢継ぎ早に建造したスピード感は、流石ですが。マンパワーはそうそう育たないもの。いわんや、空母や艦載機を動かすには、やはり知性や体力的にも、ハイレベルな人材が求められます。徴兵したそこら辺のアンちゃんに、操船やら戦闘機の操縦ができるはずもなく。そういう意味では、2040年にアメリカに追いつくというのも、かなり無茶な目標なんですよね。2年毎に一隻、原子力空母を建造するレベルですし。

ただ、ないと思われていたウクライナ侵攻も現実になったように。油断せず、日本は出来ることを積み重ねていくしかないでしょうね。

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