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クモの遺伝子を持つカイコ

◉昔から、蜘蛛の糸と蚕の糸は同じく昆虫が作る糸として、よく比較されますね。蚕の糸は細く、光沢が美しく、高級天然素材として愛用されていますが。強度で言えば、蜘蛛の糸は昆虫由来の糸としては地上最強クラスで、種類にもよりますが、高強度合成繊維に匹敵する強度を示す種もあるんだそうですが。残念ながら、蚕の繭のように安定した蛇たちで糸を取る方法がないため、蜘蛛の糸を使った製品は、ごく限定的なんですが。遺伝子操作で、絹の美しさと蜘蛛の糸の強さを併せ持つことが可能に。

【「クモ遺伝子を持つカイコ」が誕生!”防弾チョッキ繊維の6倍”丈夫なシルクを作る】ナゾロジー

ときに生物が自然に生み出す繊維の方が人類の発明品より優秀なことがあります。

有名なものがカイコ生み出す「(シルク)」で、その光沢や滑らかな質感、生分解性(自然界で分解される性質)から、長年重宝されてきました。ただ、絹に丈夫というイメージはありません。

一方、クモの生み出す糸も非常に強い繊維として注目を集めています。

ただクモはカイコほど扱いやすい昆虫ではなく、まとまった糸を効率よく回収する方法がまだありません。

そこで、中国の東華大学(Donghua University)生物科学・医工学部に所属するジャンペン・ミー氏ら研究チームは、クモの遺伝子を持つカイコを作り出す研究を進めており、今回カイコに丈夫な天然繊維を生み出させることに成功したと報告しました。

飼育しやすいカイコから出たそのクモの糸は、防弾チョッキに使用される『ケブラー』の6倍丈夫だと言われています。

研究の詳細は、2023年9月20日付の科学誌『Matter』に掲載されました。

https://nazology.net/archives/135306

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、黄色いタイプの蚕の繭です。

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養蚕は揚子江の下流域の、浙江省の遺跡から紀元前2750年頃の絹が出土しているそうですから、5000年近い歴史があるようで。野生の蚕は存在せず、人類がずっと飼育していたため、繭から孵った蚕蛾は、飛ぶこともできず。ある意味で、人工的に進化させられた昆虫と言えます。原種はクワコと呼ばれる蛾ですが、こちらは薄茶色の身体で、いかにも蛾という感じです。蚕は一般的に真っ白な身体をしているのですが、牛とか馬とか犬でも、人類が家畜化すると白い個体やマダラの個体が出現しやすいんだそうです。野生下では、目立って襲われやすいのが、生き残るというか、選抜されやすいので。

興味深いのは、この浙江省という点。最古の稲作の移籍は、この浙江省の河姆渡遺跡とされます。河姆渡文化は、紀元前5000年頃~紀元前4500年頃にかけて存在した、新石器時代の文化です。同じく、長江流域にある草鞋山遺跡の、イネ科植物の非結晶含水珪酸体(プラント・オパール)の分析によって、約6000年前にはジャポニカ米が栽培されていたことも解っています。日本は日本で、約6000年前に岡山県に稲が伝播していた可能性が指摘されていますから、稲作と養蚕という、日本文化の深い部分は、長江下流域から伝播したのではないか、という考えられています。下図の5のルートですえ。

『DNAから見た日本人』

養蚕は、明治日本の外貨の獲得源として、奨励されたのですが。おかげで、日本自体の養蚕とかは衰退しても、蚕を利用したバイオテクノロジーは、けっこう先進的というか。蚕をよく知りぬいた民族ゆえ、ですね。今回の研究も、その延長線上。ちなみに皇室では、明治以降、皇后が養蚕を司るのですが。小石丸という、日本在来種の養蚕も行われているそうで。非常の細い糸で、また繭も小さいため、養蚕としてはあまり育てられなくなったのですが。古い衣服の文化財修復には、欠かせませんしね。

いっぽうで、クモについてはこんな研究もあったりします。

https://web-japan.org/kidsweb/ja/hitech/spider/index.html

【鉄より強いクモの糸 日本の技術で大量生産へ】キッズ・ウェブ・ジャパン

 ビルの谷間を自由に飛び回る正義のヒーロー「スパイダーマン」が手首から放つクモの糸が持つ本当の力を知っていますか。それは、鋼鉄を上回る強さと高い伸縮性、優れた耐熱性を持った高性能素材です。そんな夢の糸を人工で大量生産することに、日本のベンチャー企業が、世界で初めて成功しました。世界中の研究者が追い求めた新素材は、空想の世界を飛び出し、さまざまな工業製品に活用されようとしています。

https://web-japan.org/kidsweb/ja/hitech/spider/index.html

自分は、日本の素材研究と再生医療、ロボット工学、バイオテクノロジー、海洋開発はまだまだ先進的で、未来の産業にも繋がっていると思いますので。こういう研究は、やはり興味が湧きます。家畜としては、哺乳類や鳥類が有名ですが。蚕とミツバチもまた、人類が家畜化に成功した昆虫ですから。ある意味で、人類が滅亡したら、蚕も滅亡する運命にありますので。養蚕の文化も、形を変えて日本の伝統として、伝わっていけばいいと思います。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


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