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業者がウナギ完全養殖に前進

◉養殖ウナギの事業者のことを養鰻業者と呼びますが、そもそも日本の養殖ウナギは、野生のシラスウナギを河口付近で捕獲して、それを養殖する半養殖ですから。卵から孵化させて育て、その親からさらに卵を取る完全養殖とは、異なります。ウナギの完全養殖自体は、研究室レベルではもうとっくに成功しているのですが。問題はそれを一般の業者でもできるようにすること。つまり、商業ベースに乗せるということが大事ですから。

【ウナギ完全養殖が視野 大分の事業者、人工授精で稚魚に】日経新聞

ウナギ養殖の山田水産(大分県佐伯市)は人工授精で誕生させたウナギの幼生をシラスウナギと呼ばれる稚魚に成長させることに成功した。養鰻(ようまん)事業者としては国内初とみられ、人工的に誕生させたウナギに次世代を生ませる「完全養殖」に一歩近づいた。天然物に依存してきたシラスウナギの安定生産に道を開く可能性がある。

完全養殖は水産総合研究センター(現水産研究・教育機構)が2010年に世界で初めて成功した...

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC144K70U2A111C2000000/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、ウナギの写真です。

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■完全養殖ウナギへの期待■

この取り組み自体は、養殖ウナギが盛んな我が故郷・鹿児島県でも、以前から取り組んではいるのですが。大分の業者が先んじて成功したようで。一旦シラスウナギまで育てる事が成功したら、もうそれ以降のノウハウが確立されていますからね。日本のウナギの供給は一気に改善するのですが。何しろうなぎというのは、マンボウほどではないですが、かなり多くの卵を産む種類の魚ですから。

その数に関しては、個体によって差はありますが300万個から700万個と、かなりの数字です。個体によって産卵数には、けっこうな差があるようですが。ちょっと古いデータですが、2017年の日本のウナギ消費量は年間約3億匹(国産は約1億匹)となっています。つもり成熟したメスの個体が100匹もいると、年間に必要なうなぎの総数に匹敵する卵が、取れてしまうわけです。歩留まり率が10%でも、1000匹いれば楽勝です。

現在のウナギの完全養殖の生存率は調べてみましたがよく分かりません。でも、とにかく多産の種類ですから10%でも、かなりの数が期待できますから。個人的にはコンビニエンスストアなどで、安価に売ら気が供給されている状況は、あまり好ましいとは思っていません。鯨肉もそうですが、安ければ買うという人は見捨てる人。とはいえ、絶滅危惧種になってしまっては元も子もありませんから。資源量保護の意味でも完全養殖は重要です。

■ウナギ対科学者の戦い■

うなぎはそもそも、産卵場所さえよくわかっていませんでした。ヨーロッパウナギの産卵場所が、オカルトファンには有名なバミューダ・トライアングルのあたりだというのが判明したのも、1920年代になって。デンマークの海洋生物学者ヨハネス・シュミットがバミューダ諸島周辺で仔魚を採取、宇宙海賊キャプテンハーロックで名前を覚えたサルガッソ海で、産卵が行われていることを突き止めたぐらいです。

これがニホンウナギとなるともっと遅く、魚類学者の塚本勝巳らの研究チームが、グアム島やマリアナ諸島の西側沖のマリアナ海嶺のスルガ海山付近が、ニホンウナギの産卵場所だと突き止めたのが2006年のこと。ウナギの生活史がわかっていなかった江戸時代には、川べりの柳の葉っぱが水に落ちて鰻になる、などと信じられていたそうで。確かにウナギの仔魚は、柳の葉っぱに似ていますけれどね。昔の人の観察眼はなかなかのもの。

卵から孵化したウナギは、レプトケファルスと呼ばれる幼体になり、まさに柳の葉っぱのような形状をしています。この状態で、プランクトンの死骸であるマリンスノーを餌にしている、というところまで研究は進んでいます。レプトケファルスは何度かの変態を繰り返し、150日から500日かけてシラスウナギに成長します。逆に言えばこの、卵からシラスウナギになるまでをうまく乗り切れば、商業ベースまでもうあと一歩。

■スシー・テンプーラ・ウナギ■

完全養殖が成功すれば、日本人のウナギの消費量は今以上に上がる可能性はありそうですけれどね。ただその場合は、値崩れなどの可能性もありますが。自分などは、ウナギが絶滅危惧種から出して大量に供給できるようになれば、海外にうなぎの蒲焼を輸出するというのも手だと思っています。外国人留学生や日本に武術修行に来たフランス人などと話をしても、ウナギの蒲焼はおいしいようで。牛丼やラーメン以上に受け入れられるでしょう。

ウナギの蒲焼の消費量が世界で増えれば、醤油とかみりんとか味付けのための食材も需要が増えますから。供給が安定したらそれこそ、寿司以上にウナギというのは、海外でも受け入れられると思うのです。そもそもヨーロッパでも鰻は食されていますからね。でもあれをうまくさばいて焼いて柔らかく仕上げるには、熟練の技術が必要ですから。高級料理店として、かなり可能性があると思っています。てりやき料理と合わせて、チェーン店でいけるでしょう。

以前の記事ですが、近畿大学の目算では2023年に完全養殖されたうなぎを飲食店に提供できるという見積もりだったようです。そう考えると今回の成果は、悪くないペースのように思いますね。遅くとも来年ぐらいから徐々に、完全人工養殖うなぎの出荷が始まるのかもしれません。そうなれば更なるノウハウの蓄積も期待できますから。ウナギはもともと温かい海の生き物ですから、鹿児島の養殖ウナギとか本当美味しいんですよね。期待したいところです。

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