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宮崎駿『君たちはどう生きるか』公開直前

◉もう公開直前なのに本当に、情報が出てきませんね。まぁ、宮崎駿監督とスタジオ・ジブリのブランド力を考えれば、宣伝しないことが宣伝になるレベルですが。噂に上っていた、『風の谷のナウシカ』の続編という可能性もないようですし、新作ファンタジーになるのでしょうか。生きる、というのは宮崎駿監督の大きなテーマですからね。そういう意味では、このタイトルに込めた思いも、あれこれ推測はできますが。

【宮崎駿監督作「君たちはどう生きるか」、作画インから足掛け7年で公開へ】GAMEWatch

 スタジオジブリは、7月14日に公開する映画「君たちはどう生きるか」に関連して、公式サイトにて「『野中くん発 ジブリだより』2023年7月号」を公開した。

 本ページでは、「君たちはどう生きるか」の公開に向けて制作の裏側が明かされている。記事によれば、本映画の企画書が書かれたのが2016年夏で、三鷹の森ジブリ美術館用の新作短編アニメーション「毛虫のボロ」の制作と同時並行で制作を開始したという。

https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1515087.html

ヘッダーはジブリが唯一公開しているイメージイラストより、やはり鳥の人系の作品になるんですかねぇ……。

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■生きるの温度差■

宮崎航空工学の経営者一族でもある宮崎駿監督は、正直言って生きることにどこまで必死になったか、解らんのですけどね。というか、それは岡山の名士の父親を持ち、あの時代に東大に進学できた高畑勲監督にしても、生きるため・食うために漫画家やアニメーターになるしかなかったタイプの人間とは、やはり違うんですよね。佐藤建志氏が『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』で指摘されたように、高等遊民やナロードニキの自分の理想とか思想に生きるであって、泥水をすするような生きるではないので。

例えば、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』も、けっきょくは人間側の環境破壊に、タヌキの側が居場所を見つけて妥協するという、非常に手前勝手な理論ですし。これがひっくり返ると、原作版のナウシカの、王蟲の卵を再生可能な量だけいただくことで、腐海の中で共存する森の人になるわけです。共存というと聞こえは良いですが、要は腐海という地球の大いなる自然浄化システムに人類は身を委ねればいい、というファンタジーでしかないです。

■進みすぎた文明批判■

現実の地球には、そんな浄化システムは存在せず、人類は自然破壊をコントロールしないと、自分自身が滅びかねない面はあります。そこで、安易にSDGsだとかクリーンエネルギーだとか、根本的解決にはなり得ないモノに逃げるのが、リベラル派の悪いところで。たぶん、将来的には核融合発電や、その前段階としては第四世代核分裂発電などで、凌いでいく必要があるわけです。そこを通り越して、文明否定まで行くのなら、それはひとつの見識でしょう。

ところが、宮崎駿監督は、文明否定までは踏み込めないんですよね。進みすぎた文明は批判するが、文明自体は否定できない。その姿勢で『未来少年コナン』から一貫しています。でも、進みすぎた文明と言っても、それは相対的な話でしかないですから。アメリカのアーミッシュのように、文明を否定して昔の生活を維持している信徒もいますが。彼らだって、アメリカに移住した頃の文明レベルであって、キリスト教が生まれた頃の2000年前の文明レベルではありませんから。

■共産趣味を超えられるか■

風の谷の住人は、火をちょびっと使うと言います。しかし、そのちょびっとなら良いの、基準はどこにあるもでしょうか? 火の7日間で高度な文明が滅んだ黄昏の時代でも、現代文明より遙かに進んだ文明です。日本でも江戸時代に、こんな進んだ文明はイヤだと、山中に隠遁生活をして、原始人のような生活をしていた人もいたとか。でも、現代人の私たちから見たら、江戸時代の文明なんて、ぜんぜん遅れています。チャップリンの『モダン・タイムス』もそうで、進みすぎた文明批判というのは、いつの時代も繰り返される、無難で手堅い警句です。

このnoteでは、共産主義思想が、実はユダヤ・キリスト教の千年王国思想の焼き直しだと、指摘しましたが。けっきょく、宮崎駿監督は、高畑勲監督から注入された共産趣味(主義ではない)にある時期から距離を置き始め、『もののけ姫』では文明肯定に微妙にシフトチェンジしたように思えます。ただ、それを完全に認められず、矛盾する発言も多いです。文明の問題を克服するのは、文明しかない───という境地に達したかどうか。『君たちはどう生きるか』で確認したいです。

ううむ、何やら示唆的な。

三日後に、結論は出るので、現時点での思いを。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

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