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強力マイクロ波で大深度地下から無尽蔵のエネルギーを得るMITの研究

◉地熱発電は、太陽光発電や風力発電と違って、安定して24時間発電できるという点で、有望な再生可能エネルギーです。というか、太陽光も風力も、ベース電源になりえませんから。なにしろ日本には活火山が108山あり、世界の火山の7~9%ほどを占めています。でも、実際はイロイロと問題もあって、なかなか普及しない面もありますね。特に問題なのが、掘削の問題なんですが、ここに関してMITの研究が、面白そうですので、noteにしておきますね。

【地下から無尽蔵のエネルギーを得る――MIT、強力マイクロ波を使って大深度地熱井を掘削】fabcross for エンジニア

MITのプラズマ科学核融合センターとスピンアウト企業Quaise Energyが、「ジャイロトロン」と呼ばれる強力マイクロ波(ミリ波)発生装置を用いて、深い地殻層の岩石を溶融して地熱井を掘削し、地熱エネルギーを取り出す壮大な計画を推進している。休止した火力発電所の土地を利用し、温泉地や火山帯地域にある従来型の地熱発電所よりも深い地熱井を掘削することで、既存のタービンや送電網インフラを有効活用し、経済性の高いカーボンフリー発電を行うのが狙いだ。2026年までに、岩石温度が500℃に達する深さまで掘削できるパイロットプラントを用いた発電を開始する予定だ。

https://engineer.fabcross.jp/archeive/220725_geothermal-wells.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、イエローストーン国立公園の写真だそうです。

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■マイクロ波で岩盤を溶かす?■

MIT──Massachusetts Institute of Technology、マサチューセッツ工科大学の略称ですが。世界最高峰の理系大学のひとつとして、名高いです。で、強力なマイクロ波で地下大深度まで穴を穿《うが》ち、地熱を取り出す根痛井戸を掘削するという、さすがに早大な計画。でも、具体的に〝2026年までに、岩石温度が500℃に達する深さまで掘削できるパイロットプラントを用いた発電を開始する予定〟とのこと。これが実現すれば、地熱発電の在り方が変わるでしょうね。

地熱発電の場合、現在だとボーリングによって穴を彫り、ある程度の温度の温泉源を見つける必要があります。初期調査段階でも数百メートルから2000メートル程度の坑井掘削すると、コストは数千万円から数億円になるそうで。で、この中から有望なものを1000メートルほど掘削して、温泉を汲み上げるポンプ設備を設置した場合、さらに1億円ほども費用がかかるんだそうで。で、掘ればかならず温泉源が見つかるはずもなく。

■地熱発電所が普及しない理由■

以前もnoteで書きましたが、日本最大の地熱発電所である大分県の八丁原発電所の出力はわずか11万kWで、一般家庭約3万7000軒の需要を担う能力しかありません。日本最大でも、地方都市分の電力しか得られない現実。北海道の泊原子力発電所の発電設備容量の合計は207万kWで、比べ物にならないことが解るでしょう。単純計算で、泊原子力発電所の代わりになるベースロード電源として地熱発電所を作ろうと思えば、北海道各地に八丁原発電所レベルが20箇所は必要です。

原子力発電所を完全に地熱発電で代替しようと思えば、八丁原発電所の444倍の発電力が必要です。そのレベルが全国各地にあるかと言えば、実際は火山って地域によって、かなりの偏りがあります。星野之宣先生の『ヤマタイカ』でもネタにされていたように、宇佐八幡宮から伊仙神宮の間には、ほぼ火山がありません。関西・中国・四国はかなり厳しい。温泉地は多数あっても、それを発電に使うとなると、厳選の枯渇の問題がありますから、地元では反対運動が起きるでしょう。

https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/katsukazan_toha/katsukazan_toha.html

■開発が進まぬのは理由がある■

444箇所の発電所を造るとなると、ボーリングによる調査はその何倍になることやら。100本に1本ぐらいの確率であっても、全国で5万箇所ぐらいは試掘してみないとダメでしょうね。その中で、地熱発電所まで持っていける熱量と湯量のところが、どれぐらい在るか……。いずれにしろ、数千億円から数兆円単位の予算が必要であろうことは、素人でもわかります。でも、地熱発電はそこらへんを深く掘れば、簡単にできると思ってる人が多いようです。

そんなに簡単なら、専門家がとっくに計画書を出して、政府も実行していますよ。「原子力発電推進派による陰謀で、地熱発電が進まなかったんだ!」とか、左派言いそうですが。いやいや、安定した電源確保は政府にとっても大事。だって、最大の圧力団体である経団連からしても、原子力発電だろうが地熱発電であろうが、安定した電力供給は、産業界の絶対的要求ですから。そういう陰謀論であれこれも蘇芳をふくらませる前に、ちょっと調べれば素人でもわかることは多いですよ?

■核融合技術の研究の副産物?■

大深度から地熱を取り出せれば、温泉などの観光地や景勝地とはバッティングせず、場所もあまり選ばない可能性があります。この研究、実は核融合技術の副産物的なところで、生まれたってのも興味深いですね。ときどき「核兵器の研究や軍事研究に、なんの意味がある?」という人もいます。日本学術会議とか、大学での軍事技術研究に反対する組織もあります。しかし、核爆弾の研究から原子力発電が生まれ、その延長線上に核融合の研究があります。

MITのプラズマ科学核融合センターは、核融合技術におけるプラズマの研究に長く取り組んできたが、プラズマの加熱に用いられているジャイロトロンを、ドリルビットに代わる掘削法とすることに着眼した。

https://engineer.fabcross.jp/archeive/220725_geothermal-wells.html

水爆もまた、核融合による大量破壊兵器。残念ながら、そういう研究が人類の生活を豊かにする部分と繋がるのもまた、事実。アインシュタインの相対性理論は、発表されたときはなんの役に立つか、多くの人にはわかりませんでしたが。相対性理論が正しいから、自動車のGPS機も安全に動かせますし。技術は技術であって、それをどう使うかは人間次第。ポリシーとしてはまったく否定しませんが、他人に押し付けるのは違うと思いますね。

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