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ノーベル生理学・医学賞受賞にカリコ博士とワイスマン博士

◉mRNAの研究で、ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授とドリュー・ワイスマン教授のノーベル生理学・医学賞の受賞が発表されました。これは、かなり異例のスピードですね。ノーベル賞の科学三賞は寿命との闘いとも言われ、その研究が社会の役に立つことが確認されてからなので、30代前半で発表した研究が、80代になって認められて受賞なんてことも、ざらですから。本来はノーベル賞級の研究だったのに、間に合わなかった人は山のようにいます。コロナ禍で、大きな成果を発揮したmRNAでしたから、このスピード受賞に繋がったのでしょう。素晴らしいです。

【ノーベル受賞のカリコ氏ら会見「賞のための研究ではない、大切なのは役に立つものを作ること」】読売新聞

 【ワシントン=冨山優介】新型コロナウイルスワクチンの開発に貢献し、2023年のノーベル生理学・医学賞受賞が決まった米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)とドリュー・ワイスマン教授(64)は2日、米ペンシルベニア州の同大で記者会見に臨んだ。カリコ氏は「何かの賞のために研究しているわけではない。大切なのは役に立つものを作ることだ」と強調した。
(中略)
 また、科学者へのメッセージを問われ、「スポットライトを浴びたいのであれば、俳優や女優になればいい。でも、自分が問題を解決したいと思うのであれば、あなたは科学に向いている」とエールを送った。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20231003-OYT1T50108/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、ノーベル博物館だそうです。

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■波乱万丈の研究者人生■

カタリン・カリコ博士は、ハンガリー出身なんですよね。高校の時から、その才能は高く評価されていて、生物学で最優秀の生徒に与えられる第1回イェルミ・グスターヴ賞を受賞。しかし、ハンガリー人民共和国の経済は一党独裁の硬直した経済政策でボロボロになり、研究費が打ち切られ。アメリカに職を求め、理解を得られ読んでくれる大学もありましたが、当時は出国制限やドルの持ち出し制限もあり、大変な時代。アメリカに移住しても、旦那さんが清掃夫の仕事で支えてくれたとか。この話を「選択と集中はクソ」とすり替えて持ち出す人がいますが、もっとクソなのは社会主義共産主義でしょうに。

【娘のテディベアにお金隠し米国移住したカリコさん、研究費申請が通らずポスト降格も…受賞に「誰かが冗談を言っていると思った」】読売新聞

 カリコさんは2日、ノーベル財団によるインタビューで、ノーベル賞の授賞決定を伝える電話を受けた時の心情を屈託なく語った。

 ハンガリー東部の小さな町で生まれ、大学で生化学の博士号を取得。国内の研究機関に就職したが、1985年に研究費が打ち切られ、夫と幼い娘の3人で米国への移住を決めた。

 米メディアによると、当時のハンガリーは100ドル以上の外貨を国外に持ち出すことが禁じられていた。そのため娘の「テディベア」のぬいぐるみの中に、かき集めた金を隠して持ち込んだという。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20231002-OYT1T50225/

後に移ったペンするバニア大学でも、研究費の助成金が打ち切られ、職を辞する羽目に。もう、波乱万丈というか、映画になる人生ですね。研究費はもらえず、終身雇用のテニュアも外され、本当にmRNAの研究は冷遇されていたようで、記事とかWikipediaを読む程度でも、よく諦めずに続けたなぁと。ドリュー・ワイスマン教授との出会いがあって、この世界に貢献した研究がようやく、日の目を見たことを思えば、まさに「スポットライトを浴びたいのであれば、俳優や女優になればいい。でも、自分が問題を解決したいと思うのであれば、あなたは科学に向いている」の言葉が、胸に迫ります。

■研究の難しさと広がり■

他のnoteを書くために、レーザーとか調べてみると、基礎的な研究論文は、かのアインシュタイン博士の1917年の論文『Zur Quantentheorie der Strahlung(放射の量子論について)』が、レーザーとメーザーの理論的基礎を確立したとのこと。ううむ、100年後の未来では、核融合から海水淡水化、医療から音楽機器まで、使われまくっているんですが。やはり、理論から応用され、実用になり、人々の生活に役立つまでは、50年とか100年のスパンで見るしかないんですね。目先の研究成果を追っていては、こんな割にあわないことはないです。

【カリコ氏と15年のつきあい、東京医科歯科大・位高教授「非常に気さくでオープンな人」…mRNAを治療に使う同じ志の研究者】読売新聞

 mRNAを使った治療薬の開発を進める東京医科歯科大の位高啓史教授(mRNA創薬)は、ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)と15年ほどのつきあいがある。位高氏はカリコ氏について、「非常に気さくでオープンな人。mRNAを治療に使うという同じ志を持った研究者として、対等に付き合ってくれた」と語る。

 カリコ氏が、mRNAに関する研究成果を出して間もない2008年頃、学会で本人から研究内容を説明してもらったことが、自身の研究を始めるきっかけの一つになった。それ以降、学会などで意見交換してきたといい、「当時は、mRNAを薬に使うなんて、信じてくれる研究者はほとんどいなかった。ちょっと変わったことをやっている研究者という位置づけだった」と振り返る。

 位高氏は、mRNAを活用し、関節の軟骨がすり減る病気「変形性関節症」の進行を抑える新薬などを開発中だ。「mRNAを薬として使うことにより、これまで有効な治療薬が無かった病気への新しい治療法が生まれるだろう」と話す。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20231002-OYT1T50220/

こうやって、研究成果が認められることで、似たような研究をしている研究者への理解が進む、これが大きいんですよね。mRNAは応用範囲も広く、さらなる研究が進んでいますが。さりげなく、位高博士の研究もちゃんと紹介していて、この記事は好感が持てますね。変形性関節症は高齢者のみならず、スポーツ選手も栗湿られている疾患ですから、こういう研究が進んでほしいですし。こういう形で、カリコ博士たちの研究に加えて、他の研究への興味関心や、情報を提供する。これが新聞の役割のひとつ。「汚染水が~」なんて野党議員の声を垂れ流すことが、報道なのか? 自分は疑問です。

■ノーベル賞に拘らない■

そして、おなじみの韓国のノーベル賞狂想曲。そろそろ、俳句の季語に入れたいですね。日本も、バブルが方空きする前の80年代は、ノーベル賞が取れないとマスコミは嘆いていたもんです。そりゃあ、取れればしばらくは飯の種になりますからね。湯川秀樹博士のノーベル物理学賞の受賞が1949年。配線に打ちひしがれていた日本人には、よくわからんがすごい科学の賞を、受賞されたぞと大騒ぎに。その次の朝永振一郎博士が1965年、江崎玲於奈博士が1973年ですから、日本人には10年に一度しか取れないような、すごい賞でしたから。福井謙一博士のノーベル化学賞が1981年、利根川進博士のノーベル医学生理学賞が1987年と、物理学以外も受賞するようになりましたが

【【社説】やってきたノーベル賞シーズン、指をくわえて見ているだけの韓国】中央日報日本語版

ノーベル賞シーズンが始まった。スウェーデンノーベル委員会によると、2日の生理学・医学賞を皮切りに、3日に物理学賞、4日に化学賞など科学部門の受賞者発表が続く。5日には文学賞、6日には平和賞、9日には経済学の受賞者が公開される。ノーベル賞はダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの母国であるスウェーデンだけではなく、世界中が認める世界最高の賞だ。特に科学技術世界では他の名高い賞でさえ「○○分野のノーベル賞」という別称がつくほどノーベル賞の権威は特別だ。ノーベル科学賞受賞者の名簿を時代別に並べてみると、それ自体が人類の科学発展の歴史という事実がノーベル賞の位置を新たに確認させる。

韓国社会は毎年9~10月になれば「ノーベル賞煩い」で忙しくなる。学界や関連団体ではノーベル賞関連行事が相次いで開かれる。毎年受賞者発表シーズンになると、韓国内の誰が有力な候補なのかという話が出回りはするが、結局何もなしで終わる。隣国の日本と比較して「我々は何をしているのか」という嘆きも続く。「国内総生産(GDP)に対する研究開発(R&D)投資は世界1、2位を誇るのに、ノーベル賞をなぜ受賞できないのか」という批判が出てくることもある。発表が残っているので見守るしかないが、今年も韓国のノーベル科学賞受賞者の輩出は難しいものとみられる。

https://japanese.joins.com/JArticle/309684

。90年代はついにゼロ。ここで、日本の基礎研究はダメだと、さんざん叩かれたのですが。2000年代に入ってから、怒涛の受賞ラッシュ。国籍を変更された方もいますが、受賞された研究自体は日本国籍で、日本時代のもの。

2000年:白川英樹(化)
2001年:野依良治(化)
2002年:小柴昌俊(物)
2002年:田中耕一(化)
2008年:小林 誠(物)・益川敏英(物)・下村脩(化)・南部陽一郎(物)
2010年:根岸英一(化)・鈴木 章(化)
2012年:山中伸弥(医)
2014年:赤﨑 勇(物)・天野 浩(物)・中村修二(物)
2015年:梶田隆章(物)・大村 智(医)
2016年:大隅良典(医)
2018年:本庶 佑(医)
2019年:吉野 彰(化)
2021年:真鍋淑郎(物)

今後、日本からノーベル賞は減るという意見もあります。長い長い平成不況で、研究費が潤沢でなくなったせいもあります。でも、個人的にはこんな人物のこんな研究に、科研費がこんなに出たのかと、呆れることも多々あります。そういう部分で、真っ当な再配分が行われることを願います。はっきりしてるのは、こういう研究は選択と集中よりも、薄くてもいいから広く、研究費をばらまくこと。mRNAの研究を見ていても、それは実感します。願わくば、多くの研究者の研究が、どんな形でも報われることを願います。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


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