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第四世代炉と核融合発電と

◉日本の大手マスコミが、原子力発電についてなかなか報じないので、ついこういうエネルギー関連のnoteが増え気味ですが。ロールス・ロイスというと、イギリスの高級自動車メーカーで、皇室御用達のイメージですが。ジェットエンジンを開発している数少ない企業で、発電用のタービンも開発しています。日本で言えば三菱グループのような会社。第四世代原子炉の開発にも、関わっています。

【ロールス・ロイスが小型原子炉16基建設。270億円超を助成する英国の「思惑」】Forbes

ロールス・ロイスが原子力発電事業に乗り出し、16基の高性能小型原子炉の建設を進めている。その発電量は大型の原子炉を上回り、1基あたり最大出力44万kWのエネルギー生産が見込める。

イギリスの公共放送局BBCは、ロールス・ロイスが先導役を務める小型モジュール炉(SMR)開発企業連合の発表を受けて報道を行った。本プロジェクトを推進するのがこの連合であり、イギリスで16基のSMRを建設する計画が制定された。
(中略)
SMRは1基で44万kWの電力を生み出し、イギリス中部の都市シェフィールド全体の電力需要をまかなうことができる。専門家の予想によると、1基あたりの発電コストは最大26億2000万ドル(約2726億円)だ。

正確には、航空機のジェットエンジンやエネルギー関連の機械を製造・販売している工業メーカーがロールス・ロイス・ホールディングスで、自動車会社がロールス・ロイス・モーター・カーズですが。なにしろ157億2900万ポンド、日本円で23000億円以上の売り上げ。アメリカのGEに継ぐエンジンメーカーですから。そんな企業が10年掛けて小型モジュール炉16基建設とか、重みが違いますね。

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■小型モジュール炉の可能性■

経済誌Forbesの記事だけあって、イロイロと数字が挙げられていて、勉強になりますね。北海道の泊原子力発電所の1号機と2号機の定格出力が57.9万kWで、3号機が91.2万kWと第三世代炉としては川内原子力発電所の1号機と2号機の89.0万kWと、似たような数字。この数字と比較すると、1基で44万kWというのは、なかなかの数字。第四世代炉の小型モジュール炉は3分の1程度とされていましたので。

福島第一原子力発電所の6号機が110.0万kWの出力ですから、44万kWは悪くない数字。中国では2015年に初の商用型超高温ガス炉の建築が決定、2017年に建築着手、今年2021年に60万kW級の高温ガス炉が稼働する予定。ただし、中国の超高温ガス炉は、日本のモノほど高温を出せず、原子力製鉄や熱化学水素製造や原子力エチレン焼成、原子力石炭液化は難しいという指摘も、以前に読みました。

■核融合発電の可能性■

個人的には、超高温ガス炉は水素製造にも使えるしで、アンモニア発電とセットで相補的に発電できると良いなと、そう思います。古くて固い岩盤は必要ないですし、冷却に水を使わないので、水素爆発もメルトダウンも起きづらい。なので、建設場所を第三世代炉ほどは選ばない。出力の弱さは、福島第一原子力発電所のように数を用意することで、カバーできるでしょうし、各県に分散させるが吉でしょう。

そして、夢の発電とされる核融合発電についても、こんな情報が。フランスでは2025年の稼働を目指し核融合実験炉ITERの建設が進められ、日本では茨城県那珂市にある量子科学技術研究開発機構で実験装置JT-60SAの建設完了、2021年4月から本格的な実証試験がスタートと。永遠の〝あと30年〟が、なかなか縮まらない核融合発電ですが。だいぶ現実的な30年に近づいてきましたかn。

【ベンチャー続々進出、「核融合発電」は脱炭素の新たな選択肢となるか。4月稼働の実験炉が実現の試金石】ビジネスインサイダー

太陽の内部で起きている水素同士の核融合反応を地上で再現し、その際に生じる大量のエネルギーを発電に活かそうという大胆な発想から考えられた核融合発電。
フランスでは現在、2025年の稼働を目指し核融合実験炉「ITER」の建設が進められています。

■現実的な今後30年■

現実的には、第三世代炉を安全に留意しつつ稼働させ、あと数十年は使い切り、順次廃炉。そして10年後を目処に第四世代炉への置き換えを図り。超高温ガス炉の特性を活かして水素・アンモニア・石炭液化などで他の発電の多様性を広げ、20年後を乗り切り、他の第四世代炉の開発を目指し。核融合炉が30年後に実用化できれば良し、できなくても凌いでいくという感じでしょうか。専門家の意見が、もっと欲しいです。

残念ながら日本では、文系記者の科学音痴が酷く、原発怖い怖いと言霊をひたすら振り撒き、福島県をフクシマとカタカナ表記して呪いをかけ、甲状腺癌の過剰診断にストップをかけるどころか、不安を煽る。処理水を汚染水と報道する朝日新聞とか、活動家と見紛う記者が、科学的な根拠よりお気持ちと真実とやらを振りかざす始末。どうにかして欲しいですわ。興味がある方は、下記リンクも参照してください。

こちらの記事【英ロールス・ロイス社、2029年までにSMR初号機の完成目指すと表明】によれば、イギリスの小型モジュール炉の建設コストが約17億5000万ポンド(約2500億円)と聞くと、洋上風力発電の研究のために注ぎ込んだ600億円のムダが、痛いですね。菅直人総理大臣時代の、全原発停止で失われた国富と併せて、正しく科学を活かす知恵が無いと、けっきょくは大損をこく、ということですね。

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