見出し画像

ウェブトゥーンの未来

◉韓国の情報の深掘りでお馴染みの、楽韓Webさんによれば韓国のウェブトゥーンが中国市場から、完全撤退とのこと。まぁ、そりゃそうでしょうね。日本やアメリカの他の産業と同じで、中国市場に幻想を観て進出しても、ノウハウだけ吸い取られて終わり。製造業と違ってサービス業は、ノウハウを奪われやすいですし、そうでなくても課金文化の違いがありますしね。個人的には、ウェブトゥーンは3D映画と同じで、一定のポジションは占められても、主流にはなり得ないと思います。

【韓国のウェブトゥーン、中国市場から完全撤退……韓国メディア「中国でもウェブトゥーンは読まれているのになぜ?」】楽韓Web

 全世界を席巻し、5年後には4兆円市場を打ち立てる(予定)の韓国のウェブトゥーン。

 日本で書かれた「ウェブトゥーンしか読まないって大学生がいる」との記事を大々的に韓国で報道していたりもしましたね。
 そんなん一部でしょうけども、まるでそんな大学生ばかりだって勢いで報道してました。

https://rakukan.net/article/503012902.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、ウェブトゥーンのロゴです。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉



■狙いは日本市場■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。アメリカの方でもウェブトゥーンは苦戦しているようで。課金の文化が弱いのですから、当然ですね。そもそも、ウェブトゥーンの縦スクロールって、文字が縦書き文化だからこそ、シックリくる部分があります。つまり、日本・韓国・中国・台湾・モンゴルなど、東アジアの中華文明の影響が強い地域で、受ける文化と言えます。横書き文化の欧米では、目の流れとスクロールの流れが、縦書きほど一致しないんですよね。

もっとハッキリ言えばウェブトゥーンは、マンガの国内市場があまり大きくはない韓国の出版社が、世界最大のマンガ市場である日本を狙って、持ち込んだ文化ですからね。韓国における電子コミックの市場規模は2019年で8805億ウォン(約845億円)、2020年1兆億ウォン(約967億円)、2021年は1兆538億ウォン(約1109億円)と、順調に伸びてはいますが。2020年で6126億円を超え、2023年は前年比2.5%増の6,937億円にもなる日本市場とは、比べものになりません。世界進出とか、掛け声で。狙いはあくまでも韓国の6倍近い日本のマンガ市場です。

でも、現実は厳しく。マンガを読み慣れた層や、速読が出来る層には、ウェブトゥーンはまどろっこしいんですよね。後述しますが、ある点においてはウェブトゥーンは、利点もあるのですが、制作する側がどこまで解っているか、疑問に思います。一時はウェブトゥーンが世界を席巻するぐらいに言ってた方々も、最近はトーンダウンして、マンガと比較したり対立するモノではないとか、ウェブトゥーンはマンガとは異なる表現で棲み分けできるとか、微妙に言い方を変えていますね。

■狙いは版面権?■

日本は、著者の権利が相当に強い国です。なので著作権法では、出版者(=出版社)に対しては、著作権も著作隣接権も与えていません。これに対し、出版者側は出版者保護のための「版の権利、版面の権利」を版面権と仮称、これを国に認めさせようとしてきました。例えば音楽だと、レコード会社がレコードの原盤を作成すると、原盤権はレコード会社のモノであり、作詞者も作曲者も歌唱者も演奏者も、権利は主張できません。多数が製作に関わるので、お金を出したレコード会社の権利になるには、まぁ納得です。

レコード会社はその原盤から、昔ならレコードやカセットテープを作り、後にCDやデジタル配信の曲を作り、販売しました。この原盤自体も、売買できるわけです。ウェブトゥーンは、元々漫画家が描いたマンガを、縦スクロール用に配置し、必要ならトリミングもします。吹き出しや擬音の位置を変更し、場合によってはフルカラーに着色したり。ゆえに、作者が100%の権利を主張できる旧来のマンガに比較して、出版社に都合が良い表現形式と言えます。で、実際に『小悪魔教師サイコ』では出版社とトラブルになり、裁判になっていますね。

いったん、旧来の形式で描いた漫画を、ウェブトゥーンにした場合なら、元原稿の権利は100%漫画家のモノですが。加工されたウェブトゥーンは出版社と教導著作権のようなモノですから。出版社側がトラブルで出さないとなった場合は、出版権を引き上げて他社から出す、と言うことが出来ません。いわんや、最初からウェブトゥーン用に書き下ろされたマンガは、権利関係で今後、トラブルが増えそうです。ウェブ系出版社って、そうでなくても著作権や出版業界の慣例に疎い、新興の所が多いので。

■少女誌系が金脈■

さて、批判ばかりでは荻上チキ氏みたいですから、ウェブトゥーンに対する建設的な提案をば。日本では、少年誌の方が少女誌よりも市場が大きく、ウェブトゥーンもパイが大きな少年誌系を目指しがちですが。実際は、ウェブトゥーンのまどろっこしい表現は、アクションが中心の少年誌系マンガよりも、内面表現重視の少女誌系のマンガの方が、向いているんですよね。なぜそう言えるかといえば、実際にコマ割りの文法を教え、ウェブトゥーンを描いてるプロにもアドバイスしてるから。MANZEMIネーム講座は、そういう場でもあります。

そもそも人類は、微妙な表情から真意を見抜くテストでは、女性の方が男性よりも2倍近く好スコアだったとか。アフリカの草原に人類の先祖が進出し、直立二足歩行を始めた頃。オスは草原で狩りに、メスは子供や老人と洞窟などに隠れていたわけで。だから、男性は物体の動き=アクションに反応し、女性は狭い空間で寄り添うので相手の心理を読む能力が発達した訳で。歌舞伎で言えば荒事と和事。マンガはそのコマ割りの特性から、横方向のアクションを描くのに適しており、縦スクロールのウェブトゥーンとは相性が悪いんですよね。

モノローグを多用する少女漫画は、ウェブトゥーンに相性が良く。実際、韓国のウェブトゥーンだと『シンデレラを大切に育てました』や『ニセモノ皇女の居場所はない』や『本物の娘が帰ってきた』とか、かなり面白いし、読みやすいんですよね。これらは、小説原作のウェブトゥーンというのも、アクションに頼らず、謎解きや心理描写に優れているから、というのはあるでしょう。ただ、それでもコマの割方に改善の余地は感じます。MANZEMIネーム講座の受講生でも、女性漫画家のウェブトゥーンのほうが、感覚的・感性的なぶん、シックリくるんですよね。

まぁ、縦スクロールを前提とした、アクションも工夫されつつあり、まだまだ発展途上ですが。コマ割り自体を、女性に任した方が、良さそうだなと思っています。個人的には、縦スクロールなら4コマ漫画の復権の方が、速いと思うんですけどね。


◉…▲▼▲インフォメーション▲▼▲…◉

noteの内容が気に入った方は、サポートで投げ銭をお願いします。あるいは、下記リンクの拙著などをお買い上げくださいませ。そのお気持ちが、note執筆の励みになります。

MANZEMI電子書籍版: 表現技術解説書

MANZEMI名作映画解題講座『ローマの休日』編

MANZEMI文章表現講座① ニュアンスを伝える・感じる・創る

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ