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専門性なき新聞ビジネスの危機

◉新聞についての未来を考える座談会が、ABEMAで開かれたようです。参加者は新聞社勤務経験があり、かなり 突っ込んだ内容になっています。毎日新聞が富山県での配送を中止するなど、新聞社を取り巻く状況は厳しく。でも改革のための動きは見られませんね。せいぜいが早期退職者の募集で、人件費カットぐらいなもので。

【どこまで「紙」にこだわるのか…全国に届けられない新聞ビジネスの危機 佐々木俊尚氏「今の新聞に深く突っ込んだ専門性が無い」投資家「40年全く変わっていない業界は日本のメディアだけ。改革すべき」】ABEMA Prime

 創刊150年の歴史を持つ毎日新聞が、今年9月末をもって富山県内の配送を休止すると発表。「全国紙」と呼ばれる朝日・毎日・読売・日経・産経の5紙の中で、配送休止が出るのは、今回が初のケース。富山県内の去年の販売部数は、推計840部だったが、大阪の工場から輸送するコストや印刷費などの負担も増加したことで、休止の決断が下されたという。富山県での取材体制は維持しつつ、県内読者にはデジタル版への移行も促し、希望すれば郵送も可能だ。全国紙トップの読売新聞も、30年前は1000万部を超えていたところが、現在は618万部にまで減少。今後、全国紙は「紙」にこだわるビジネスモデルを維持できるのか。『ABEMA Prime』では、新聞社OBらが出演し議論を繰り広げた。

https://times.abema.tv/articles/-/10135768?page=1

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■記者クラブ頼りの取材力■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。日本の新聞は、幕の内弁当みたいなもので。社会面や政治面や経済面や文化面やスポーツ面などなど、一通り揃ってはいるのですが。そこには専門性が薄く、ダイジェスト的な記事が多いんですよね。庶民が社会の情勢を大掴みする分には有用ではあっても、中身が薄い。これがアメリカの新聞 だと、取材班を組んでひとつの事件を掘り下げるのですが、そこでも取材力が問題になるわけで。日本の新聞記社に、取材力は期待できませんからね。

 新聞各社からも大量のネットニュースが配信される中で、どこまで「紙」にこだわるのか。佐々木氏は、新聞とネットで記事の「深さ」に言及した。「情報の持っている意味が新聞時代とネット時代で変わっている。新聞の情報は基本的に内容が薄い。自分の専門分野について新聞記事を読んでみるとわかる。一方でネットには専門家が書くような深い情報の記事がたくさん転がっている。新聞は多くの人が薄く広い記事を読む時代のもの。今のネット時代には情報リテラシーがあれば、深く突っ込んだ記事がどんどん読める。自分の好みの記事だけ読んでしまう“タコツボ化”が起きて、情報格差と分断が広がっている側面もあるが、深い情報を学んでいる人たちがいるのも必要で、新聞はそれに応えられていない」。多くの人に読まれる前提で「浅く広い」記事を載せている新聞が、時代にマッチしていないという指摘だ。

日本の警察は優秀で、またその権力を使っての調査能力の高さゆえ、社会面の記事になるような情報が、大量にありますから。新聞記者というのは、要するに記者クラブ制度という、御上と持ちつ持たれつの関係の中で、警察情報を下請けとしていただき、記事にする商売。社会部出身の新聞記者の思い出話とか、いかに警察から情報を取ったかの、夜討ち朝駆けの話ばかりなのは、それが理由です。特別取材班を組んで、何ヶ月も地道に取材するなんてことは、よほど確証のあるネタでないとやらない傾向が顕著です。

■文化部の高レベル■

そんな、薄く広くの新聞に、わざわざお金を払ってまで読む価値があるのか? 自分はたまにスポーツしを購入しますが、はっきり言えばスポーツ紙で十分という面はありますね。専門のスポーツ関連記事は充実しており、ついでに社会・政治・芸能・経済なども、部分的には一般紙より詳しく、そうでない部分でも8割方は同じような情報が載っていますからね。一般紙でなければならない理由なんて、冠婚葬祭の情報や文化面ぐらいですか? 社説や国際面などは、イデオロギーによるバイアスがかかった内容が多いですから。

  「紙」を離れても、新聞社は生き残れるのか。佐々木氏はネットで読めるデジタル版についても解説した。「サブスク、要するに定額月額課金で成功しているのは経済紙だけ。日本だと日本経済新聞、アメリカだとウォール・ストリート・ジャーナルだし、イギリスならフィナンシャル・タイムズ。一般紙で唯一成功しているといえば、ニューヨーク・タイムズだ。もともとはニューヨークの地方紙でしかなく、部数は数十万部ぐらいと少なかった。実は潜在的な読者が世界中にいたから、デジタル版で読めるとなった瞬間、1000万人まで読者が増えた」。経済という専門性、ニューヨークという世界的に注目される大都市のローカルニュースという価値は、デジタル版になっても失われることがなかった。「我々は今の時代、もっと深く突っ込んだ専門性のあるメディアを求めているのに、今の新聞はその力量を持っていない。特ダネ競争も21世紀の今、そんなことは誰も求めていなくて、今起きている問題の背景は一体なんなのかという深い分析が読みたい。そこにいまだ、重きが置かれていないから信頼を失っている」と踏み込んだ。

ニューヨークタイムズは、ローカル紙だけどオピニオンリーダーのクオリティペーパーという、独自のポジションを持っていますからね。そして、取材班を組んで、ときには数年にわたる取材。そりゃあ、お手軽な炬燵記事を書く日本のマスコミとは、読み応えのレベルが違うし。日本では『プロメテウスの罠』レベル。ジリ貧の新聞社にはニューヨークタイムズのように、自社の社員をそうやって教育する余裕もないし、ノウハウもない。たぶん、毎日新聞に続いて、朝日新聞も地方から撤退し、大都市中心のブロック紙にならざるを得ない。でも、そこからさらにジリ貧になり、関東と関西のみになるでしょう。

■平家・海軍・国際派■

ただ、時事通信社や桜ういろう通信社のベタ記事と大差ない新聞ですが。実は、文化面はレベルが高いんですよね。多分に、オタク的な気質が発揮されやすいジャンルで、しかも会社のカネで趣味に近いことを仕事でやれるため、蓄積されやすいので。新聞社の文化部というと、『美味しんぼ』の東西新聞文化部のイメージですが。別の究極のメニューを作ってるわけでなく、文化全般の取材の中で、プロフェッショナルが育ちやすいのでしょう。政治・経済・軍事・外交・社会など、共産主義思想の悪影響が強く、ダメダメなんですが。

 紙からネットへの移行が避けられないとも言われる中、「新聞」というメディア事業の価値は今、いかほどのものか。ドイツ人のエコノミスト、イェスパー・コール氏は「投資家の観点から見ると、40年間全く変わっていない業界はメディアだけ」だという。「メディアも記者もプライドはすごく高いが、エコノミスト、投資家からすれば、今のメディア業界でどう儲けるかに対しては(企業の)不動産のことだけで、コンテンツや情報に関してはマイナーだ。そんなことがあるのか。やはり新聞もテレビも抜本的な改革が必要だと思う。アメリカではワシントン・ポストを、アマゾンのジェフ・ベゾスが『紙に存在価値がある』という自信があって、なんとかしようと買収した。改革を日本でもやるべきではないか」と、情報産業としての価値を取り戻す改革の必要性を訴えた。

もうひとつ、あんがい新聞社で有能なのは、海外に赴任している記者。これは、平家・海軍・国際派と揶揄される日本文化の投影で。新聞社では、非主流派なんでしょうね。朝日新聞の牧野愛博記者とか、文在寅政権が嫌がるぐらい、高い取材力と広い人脈で、貴重な情報を得ていましたし。海外特派員の情報は、海外在住の日本人とは、やはり情報の質が違います。ただ、新聞社に、そこに力を入れる余裕があるのかは、不明ですが。新聞社の文化部が、出版機能を持ち、出版社化する未来を、自分は予想しておきます。


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