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バイオテクノロジーの話3題
◉個人的には、バイオテクノロジーネタは大好きなんですが、なかなかまとめてnoteにする機会が少なくて。エネルギー関連ネタ同様、あまり一般的な人気はないのですが、コメントを残してくれる熱心な人がいるという点でも、両者は似ていますね。狭くても 深く刺さるネタ、ということで。
【岡部、収穫量3倍の海藻養殖装置 海の脱炭素需要狙う】日経新聞
建設資材メーカーの岡部は、従来の3倍の量の海藻を育てる養殖装置を開発した。複数の品種の海藻を一度に育て、生産効率を高める。海藻などが吸収する二酸化炭素(CO2)「ブルーカーボン」を扱う事業者を対象に、装置の構築から海藻の育成までのサービスを提供することを想定している。
ブルーカーボンは光合成によって海藻に吸収、蓄積された炭素のことを指す。森林など陸地の自然吸収に匹敵する潜在性があるとされている。...
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■3倍収穫の海藻養殖装置■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。従来の3倍の量の海藻を育てる養殖装置を開発って、すごいですね。海藻を分解する腸内細菌を、日本人は持っている そうなのですが。外国人ではほとんど 例がないようです。四方を海に囲まれた島国の日本人は、その環境に合わせて進化しているんですねぇ。昆布から出汁を取り、わかめの味噌汁やヒジキ、寒天を美味しくいただく民族ですから。海藻食は、日本の独自の食文化。
海藻といえば、ヒジキやアカモクが含まれるホンダワラの仲間を、洋上で育ててバイオマスとして利用する、なんて話題もありましたね。世界6位の排他的経済水域を持つ日本ですから、そういう構想は可能性を感じますね。少なくとも、貴重な森を伐採してベースロード電源になり得ない太陽光パネルを敷き詰める環境破壊より、よほどマシです。洋上でホンダワラ生産に、この従来の3倍の量の海藻を育てる養殖装置が、転用できたら面白そうです。
■二酸化炭素吸収細菌量産■
こちらは出光による、二酸化炭素吸収細菌を量産の話題。京都大学発のスタートアップ企業Symbiobeとの共同研究ということで、事業化も見据えた、かなり本格的な研究のようですね。ヨーロッパなどでは、石炭火力発電所を一方的に敵視し、規制する 方向ですが。日本の石炭火力発電所は、めちゃくちゃ高効率なのを無視しているのも、問題ですが。むしろこういう、二酸化炭素を吸収する細菌を量産し、減らすための別の方法論を考えた方が、よほど 建設的ではないでしょうか?
【出光、CO2吸収細菌の量産技術 京大発新興と実証へ】日経新聞
出光興産は5日、京都大学発スタートアップのSymbiobe(シンビオーブ、京都市)と協業に向けて基本合意したと発表した。二酸化炭素(CO2)を吸収する細菌の量産技術の確立と高機能化を目指す。出光は脱炭素技術への投資を進めており、新規事業創出とCO2排出量の削減につなげる。
シンビオーブは光エネルギーを受けるとCO2などを吸収する性質を持つ「紅色光合成細菌」の製造設備の開発を進めている。CO2を取り込んだ紅色光合成細菌はアミノ酸などを製造するため、肥料や飼料として活用できるという。
紅色光合成細菌の名前は、以前から耳にはしていましたが。光合成と言うと、光合成色素の種類によってクロロフィル型(cholorophyll-based)とレティナル型(retinal-based)があるそうですが。理科の教科書にも載っている植物の葉緑素は、クロロフィル型。どうしても、葉緑素イコール緑色のイメージがありますが、カロテノイドの蓄積にって、赤色や褐色のモノが紅色光合成細菌。植物と違って細菌ですから、培養も効率的にできるでしょうし。
タンパク質の元となるアミノ酸を紅色光合成細菌で大量に生産し、畑の肥料や家畜の飼料に使えるのも、大きいですね。両方とも日本は外国からの輸入に、大きく頼っていますから。場合によっては洋上プラントで大規模生産すれば、コレまた国土面積自体はさほど広くなく、しかも山がちな日本としては、有効でしょう。こちらの技術にも期待したいですね。日本の未来は、素材研究・ロボット工学・iPS細胞研究・バイオテクノロジー・海洋開発などに、かかっていますから。
■光合成細菌を窒素肥料へ■
上の話題とも被りますが、こちらは理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターの研究。海で育つ非硫黄紅色光合成細菌であるRhodovulum sulfidophilumは、窒素と二酸化炭素を体内に取り込み、固定する性質があるようで。窒素を固定というと、大豆や蓮華草などのマメ科植物の根に共生する根粒菌が有名ですが、海中の細菌でも、そういう性質があるんですね。これまた興味深いです。しかも、コチラは海で育つので、最初から洋上プラント向きですね。
https://www.riken.jp/press/2024/20240611_1/index.html
【光合成細菌を窒素肥料に -窒素を空気中から固定する細菌を無機肥料の代替として利用-】理化学研究所
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター バイオ高分子研究チームの沼田 圭司 チームリーダー(京都大学 大学院工学研究科 教授)、シャミタ・ラオ・モレ-ヤギ 客員研究員(京都大学 大学院工学研究科 特定助教)、京都大学 大学院農学研究科の木下 有羽 助教、元木 航 助教(研究当時)らの共同研究グループは、破砕・乾燥処理した海洋性の非硫黄紅色光合成細菌[1]のバイオマス[2]が作物栽培の窒素肥料として利用可能であることを明らかにしました。
本研究成果は、既存の窒素肥料に替わる持続可能な窒素肥料の開発に貢献すると期待できます。
この非硫黄紅色光合成細菌を破砕・乾燥処理したバイオマスは、重量比で11%もの窒素を含有してるとのこと。比率はわからんですが、田んぼに植えるレンゲソウなどよりも、明らかに多そうですね。田舎の人間でないと、落花生やレンゲソウなどマメ科植物の根っこは、見たことないでしょうけれど。根粒菌はその名の通り、根に粒状のポチポチとした形で共生していて、小さなものですから。その植物全体の中では、微々たるものですから。
そのバイオマスを肥料として利用すると、植物がバイオマス由来の窒素を直接的に取り込んでいることが、確認されたとのこと。海洋性の細菌が作ったものでも、特別な処理が必要なく、吸収されるんですね。陸上の植物と海中の植物では、その塩分濃度の違いで ずいぶん 違った面があるのですが。でも生命はそもそも、海から生まれましたから、当然なのかもしれませんね。こちらも、洋上の大規模な生産プラントで、バイオテクノロジーによる窒素肥料の生産という、海洋国家の特性を生かした産業になればいいですね。
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