石油高騰で経常赤字16兆円
◉ロシア軍によるウクライナ侵攻によって、石油・石炭・天然ガスなどのエネルギー問題も、ずいぶん身近になりつつあります。自分は自動車やバイクどころか、運転免許証も持っていませんので、一般の人よりも実感は薄いのですが。それでも、42年ぶりの経常収支が赤字転落と聞くと、やっぱりなぁ……と。プーチン大統領の暴挙が、世界経済全体にも影響を与える。他人事ではいられないんですよね。
【原油130ドルで経常赤字16兆円、42年ぶり転落 日経試算】日経新聞
資源価格の高騰で2022年度の経常収支が42年ぶりに赤字に転じる可能性が出てきた。日本経済新聞の試算では、為替が1ドル=120円、原油が1バレル130ドルなら、22年度は16兆円の経常赤字になる。円安が輸出金額を増やして経常赤字を減らす効果が低下し、資源高と円安で国外に資金が流出する影響が大きくなる。
経常収支が赤字になれば、年間では1980年以来、年度では統計が遡れる96年度以降で初めてとなる...
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、タンカーで検索したらすごくいい写真がいっぱい出てきましたが、夕日とタンカーという組み合わせがいいですね。
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■輸出と為替と製造業■
ロシアは資源大国で、ある意味でソビエト崩壊後のロシア共和国の経済を支えていたのは、石油・石炭・天然ガスといった豊富な地下資源による、積極的な輸出でした。しかしこれらの地下資源というのは諸刃の剣の面もあります。中東の産油国などもそうなのですが、エネルギー資源で儲かると、工業製品などの2次産業が育たないんですよね。為替の面で自国通貨が強くなって、輸出産業が育ちにくくなる訳で。
逆に言えば、そういう部分での価格競争にさらされないサービス業、パソコンなどのアプリケーション開発でロシアが強いのは、最低でも8時間は製造業が弱いことの裏返しでもあります。日本の場合は、円安誘導によってようやく安倍政権の時代に国内の製造業が一息つけるようになり、工場などの国内回帰が進んだのですが。今回のプーチン大統領の暴挙によって、原材料費が高騰してついに赤字転落の可能性が。
■水素に期待する岸田政権■
このような危機的状況に対して、岸田政権は水素に力を入れるという方針を、より名曲にしているようです。ここら辺は、世界最大の自動車メーカーとなったトヨタが、かなり水素エンジンに力を入れています。岸田総理大臣のお膝元である広島も、マツダ自動車という国内の有力自動車メーカーを抱えていますからね。地元の要望とも一致するのでしょう。自分も、水素エネルギーと水素エンジンには、かなりの期待を思ってはいるのですが……ががが。
【ウクライナ危機で水素に脚光 岸田首相が大胆な支援策】産経新聞
緊迫するウクライナ情勢を受け、液化天然ガス(LNG)や石炭など化石燃料の安定供給に不安が広がる中、燃焼時に二酸化炭素を出さない水素の燃料への活用に向けた取り組みが進んでいる。9日には、日本とオーストラリア間で液化水素を運搬する実証実験を記念した式典が神戸市で開かれ、岸田文雄首相ら政府関係者が出席。水素の導入拡大に向けた支援策を示唆するなど、早期商用化への期待が高まっている。
それよりも、岸田政権は優先的にやるべき事が、あるでしょうに。ハッキリ言えば、原子力発電所の順次再稼働。無能な方の菅元総理大臣の強引なやり口によって、日本の原子力発電所はほとんどがストップしてしまい、火力発電のために毎年膨大な額のお金が出ていっているわけで。安くて安定した電力の供給というのは、都市インフラに背乗りしている朝日新聞の元編集委員のような人間には実感がなくても、貧者には直撃します。
■イギリス流の政治力■
ウクライナを電撃訪問した英首相ですが、原発再稼働ですら決断できない日本の政治家に比較して、積極的に攻めの姿勢を見せていますね。原子力発電所を8基を新設するという方針を、打ち出したようです。良くも悪くも、こういう状況に追い込まれた時に、イギリスが見せる政治力というのはやはり、世界的にもトップクラス。未だに、脱原発に躊躇するドイツとも違う、積極果断な姿勢。グレタさんもニッコリでしょう。
【「プーチンの脅しに影響されないため」イギリスは原発8基新設へ エネルギー自給目指し欧州で原発新設や延長の動き】東京新聞
【ロンドン=加藤美喜】ロシアのエネルギー依存脱却を目指す欧州で、原子力発電所の新設や延長の動きが出ている。ロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギー安全保障の観点から電力自給を高める狙いだが、高コストや安全面から懸念の声も上がっている。
英政府は7日発表の新エネルギー戦略で、2030年までに最大8基の原発新設を承認する方針を表明。50年までに電力需要の25%を原発で賄う目標を掲げた。洋上風力や太陽光、水素エネルギーも促進し、30年までに電源構成の95%を低炭素エネルギーにするとしている。
イギリスは、ジェットエンジンの世界的メーカーでもあるロールスロイス社が、メルトダウンしづらい構造で安全性のより高い第4世代原子炉の開発にも、積極的です。第四世代炉のひとつである高温ガス炉の商用炉稼働を2029年に設定するなど、原子炉夢発電の研究にも余念がありませんから。言霊信仰のように、原子力発電怖い怖い怖い……と連呼している日本の反原発運動とは、レベルが違いますからね。
■現実的で長期的な政策を■
しつこく書き続けますが、高温ガス炉はその名の通り超高温が発生する構造があり、その超高温を利用した原子力製鉄などが期待されています。また、その超高温で石炭の液化や、水素生成も期待されています。電気というのは今のところ大規模に貯めておくことができない面があります。もちろん揚力発電など、夜間の安価な電力を利用して水力発電の水をダムに戻すという技術もありますが。それほど大きな電力にはなりえませんから。
しかし水素という形で、エネルギーを液体として保存しておくことはできます。極端な話、原子力発電で電力を供給しつつ、超高温で水素を生成してベッドエネルギーを備蓄しておくということも可能。茨城は大洗の、高温工学試験研究炉 (High Temperature engineering Test Reactor:HTTR) はその点で、先端をいっていたのですが。無能な方の菅元総理が(以下略)。日本が立ち止まっている間に、中国は昨年9月に商用実証炉が臨界に達しました。
言うまでもなく、エネルギーは何か一つに頼るよりも分散しておいた方がいいのは言うまでもなし。オイルショック以前の日本は、石油火力発電に頼りすぎていましたからね。しかし推力はもうロケーションが限られており、再生可能エネルギーは今のところベースロード電源にはなりえませんから。現状では、原子力発電所の再稼働によって電力供給を安定化させ、第4世代原子炉の研究と開発に注力し、その余力で他の発電の研究を続けるしかないでしょう。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ
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