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ラノベ作家の年収8000万円問題の雑感

◉なんか、テレビ番組でライトノベル作家の年収が8000万円で、楽して儲かる商売と紹介されたようで。まぁ、自分はラノベ作家ではありませんが、出版社に10年勤務し、今はフリーランスの編集者で、大学時代にも従兄弟が出版社に勤務してた関係で、ほぼ30年ほどもこの業界に関わっているので。平均で8000万年の年収は、あり得ません。もっと売上が大きな漫画家ですら、本当に儲かってるのは上位10%だけですから。その10%だって、平均で8000万円はないです。

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■上位10%は儲かるのが世の常■

いやぁ、そりゃあ年収8000万の作家もいる、人生にピークでその年だけ8000万円という人はいるでしょうけれど。それが平均的な姿ではないですからね。そのレベルの人間は、片手の数でしょう。あと、確かに小説家や脚本家、漫画家は動かないのでカロリーの消費量は低いかもしれませんが。それがイコール楽というのも、飛躍した発想ですね。人間は、一時間同じ場所に立ってるより、1時間歩いたほうがかえって楽に感じる人間が多数派ですし。だいたい、精神を病む人も多い商売なのに。

昔、出版業界に入ったばかりの頃、先輩編集者に「漫画家の総数は3000人ぐらいで、毎年300人ぐらいがデビューし、300人ぐらいが廃業する」と言われましたね。CLIP STUDIO PAINTで知られるセルシスの推計では、3000人から6000人ぐらいだとか。ちょっと古いのですが、こちらの統計を見ると、どうもラノベ作家は少なくとも600人ぐらいいて、200人が新規に入って200人が出ていく状態。しかし、『小説家になろう』や『カクヨム』が人気で、人数は鰻登りのようで。

■新陳代謝は10%ぐらい?■

なので、自分はラノベ作家はだいたい総数は新人の10倍の2000人ぐらいいるのではないか……と思います。それで、開店休業状態の人や、専業でやれていない新人や中堅、ベテランも多いでしょうから。漫画家ほどではないけれど、似たような数字なんでしょうね。ハードルは漫画家より低いので、今後もっと増えるかも。アニメーターも、諸説ありますが4500人から6000人ぐらいとの説も。才能の世界ですから、だいたいそれぐらいに収斂するのかもしれませんね。

ちなみに、大相撲は前相撲の新弟子から横綱まで、750人ほどがいるそうです。でも、給金が出るプロの力士は十両以上の70人ほど。幕内は40人ちょっとです。今は新弟子検査の合格者は45人前後に落ち着いているそうですが、柏戸・大鵬の柏鵬時代は新弟子が200人以上いたそうですが。入門と廃業のバランスを考えると、幕内力士と同じ数ぐらいが入門して、廃業しているのでしょうね。70人ほどは新弟子が必要なはず。そりゃあ、外国からスカウトせざるを得ません。こういうところに、大相撲の衰退を感じます。

■出鱈目なテレビ番組■

さて、本題に戻して。こういうデータで、適当に番組作りをするテレビ局の、雑さに呆れます。バラエティ番組なんだから目くじらを立てるなとか、貧乏人のイメージよりお金持ちのイメージなんだから良いじゃんとか、そういう意見もあるでしょうけれど。そういう部分で、妙なレッテルを貼られちゃ、たまったもんじゃないです。けっきょく宮崎勤死刑囚と、オタクに貼られたレッテルと同じで、現実と乖離したイメージは、害のほうが大きいんですよね。現実問題、宮崎死刑囚のような人間は33年間、オタク界隈から出てきていないんですから。

ちなみにこの番組、楽して儲かる職業のランキングは、こんな感じだったそうです。

 ①位 ライトノベル作家
 ②位 消防官
 ③位 建築家
 ④位 クワガタ養殖
 ⑤位 大工

デタラメですねぇ〜。どれも大変な職業なのに。野球選手は週に5日試合をしてるのに、サッカー選手は週に2日だから楽だ、レベルの話ですね。江戸時代は、大相撲の興行は年に2場所、期間も10日間だったので「一年を二十日で暮らすいい男」なんて川柳も生まれましたが。力士は、本場所の興行がない時期は地方巡業に出掛けていますし、日頃の鍛錬は欠かせないわけで。表層で他業種を理解したような気になるのは、自分もやりがちですが。でもコレはないです。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ