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「ナチスは良いこともした」と民主党政権とリベラルと

◉「ナチスは良いこともした」は、巷間言われるところ。アウトバーン建設で、結果的にケインズ経済学と同じことを実践し、第一次世界大戦での莫大な賠償金に苦しんだドイツ国民を救ったとか、フォルクスワーゲンの生産で需要を喚起したとか。

【新書の役割――「ナチスは良いこともした」と主張したがる人たち】現代ビジネス

DIG 現代新書クラシックス(7)群像×現代新書のコラボ企画「DIG 現代新書クラシックス」の第7弾(『群像』7月号掲載)は、甲南大学教授の田野大輔氏による、石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(2015年刊)の紹介です。
「ナチスは良いこともした」と主張したがる人たちの心理とは? 不正確で一面的な情報に惑わされないために、入門書が果たす役割を示します。

でも、これらの政策は、誇大に喧伝されたモノというのが、筆者の主張。自分などもそういう、雑な理解をしている部分もあり、とても読み応えがありました。オススメの本も、さっそく購入しました。そこで感じたのはナチスの評価と日本の民主党政権を評価する人の類似性。

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■ナチスの善政?■

ナチスの政策って、ニューディール政策を先取りしたとも評されるアウトバーン建設の公共事業で失業解消、フォルクスワーゲンの普及促進以外にも、けっこうありますね。世間に流布している代表的なところで、だいたいこんな感じでしょうか? もちろん、これ以外にT4作戦とか、ものすご〜く不味いモノもいっぱいあるのですが。あくまでも世間一般に流布してる俗説を。

・ユダヤ人大資本への増税
・高利貸しの追放
・労働者への減税
・生活保護の拡大
・救貧活動の重視
・老人福祉の強化
・高等教育の無償化
・少子化対策
・大規模店舗規制
・価格統制

これを知って、ギョッとしたのは真摯な人でしょうね。日本の現在の左派の主張と、恐ろしく一致しませんか? 民主党政権時代は良かったという人に、コレがナチスの政策という点を隠し・ユダヤ人を削除して提示すれば、一部の政策は意見が割れても基本線は大賛成って人は多いんじゃないでしょうか? ちなみに高利貸しの追放は、聖書では高利貸しを禁止してるのですが、異教徒相手なら良いと、ユダヤ人に多い職業でした。つまり、ユダヤ人差別の狙い撃ち政策。

■岸信介の善政?■

それでは、ついでに日本のリベラル(これも括弧付きの"ネトウヨ"同様に定義が曖昧になりつつありますが)が蛇蝎のように嫌う、岸信介内閣の主要な政策を見ていきましょうか。ハッキリ言えば、安倍晋三前総理に対する左派の異常な憎悪も、60年安保闘争を潰し日米安保を更新した岸信介への憎悪を、江戸の敵を長崎で討つように、ぶつけているように思えます。では岸信介は具体的に、どんな悪辣な政治を行ったのか?

・1000億円の減税
・国民皆保険制度の導入
・最低賃金制度の導入
・国民皆年金制度の確立
・独占禁止法の改正に意欲
・高度経済成長の礎を用意
・汚職、貧乏、暴力の三悪追放の抱負
・自治省の設立
・対米自主外交
・国連中心主義
・国連安保理非常任理事国に当選
・米英の核実験を国連で批判
・ネール印首相と核実験禁止問題を討議
・国連安保理で核兵器廃絶決議を提出して成立
・国連提出のレバノン紛争での決議案が採決
・アジア重視外交を展開
・アジア各国との戦後賠償に積極的
・日米地位協定の改善
・沖縄等返還の合意

あらら。まるでリベラルが言い出しそうな内容ですね。もっとも日本のリベラルは言うだけ、口先だけで実行も実現もできませんが。でも、岸信介は違った。東京帝国大学を次席卒業という文句が付けようもない成績で卒業し、農商務省や商工省で要職を歴任した官僚。東条英機内角の倒閣に動き、戦犯として訴追もされず。これだけの政策を行い、当時は批判されまくった日米安保の改訂も、今となっては日本にとっては必要だったという評価が、輿論調査でも明白。こうなると、リベラルが岸信介を嫌うのは嫉妬、あるいは自分の青春を否定したくない団塊の世代の感情論?

■左派のルーツは■

田野大輔教授は、ナチスは左翼や社会主義者ではないとして、他にも『ヒトラーを「左翼」「社会主義者」と見なしてはいけない理由』という記事も書いています。ただ、今回の記事も含めて、ではなぜナチスやヒトラーや岸信介は左翼や社会主義者に見えるのか、と言う点には、キチンと答えていないように思えます。違う理由や根拠を幾ら並べても、それは「あれはスズメではない」という理由は並べても、なぜスズメに見えるか、その根本的な問いかけと理由の説明については、曖昧にして避けてるように見えます。

その真意は自分には解りませんが。自分なりに解釈するならば、現在の左派の思想のルーツが俗流共産主義が薄まった、鵺的な存在だということ。その共産主義思想がユダヤ・キリスト教の千年王国思想を焼き直した疑似科学であること。むしろ純化された宗教であることを、言及したくないように見えます。岸信介が国家社会主義に傾倒していたように、北一輝の国家社会主義は天皇制と社会主義の折衷というか混淆のような、奇妙なキメラとして出現しましたが。ナチスも本質はそういう鵺で有りキメラであったと。

■コインの裏と表■

「あれは鵺である、キメラである。だから○○と呼んではいけない」と言いながら、なぜキメラになってしまうかを、説明しない。「遺伝子的に近しいから」とは、言いづらいんだろうなぁと愚考。日本の自由民権運動も、日本の右翼と左翼は同根で、仲の悪い血の繋がった兄弟なんですよね。討幕派と佐幕派だって元は同じ徳川家の家臣。それが、薩長の外様が倒幕に成功し、冷や飯ぐらいになった佐幕派が最初は反政府活動で、西南戦争以後は言論で政府を批判し、それが右翼と左翼に分かれたのですから。そりゃあ、兄弟ですよね。

それは、非暴力不服従のキング牧師と、過激な実力行使を厭わなかったマルコムXぐらいの差です。その差を鳥類とコウモリぐらいとてつもなく大きいと考えるのか、スズメとペンギンぐらい近いと考えるか。そこを誤魔化したい。なるほどライオンとコウモリとゾウとイルカとでは、全く別の生物に見えますが。形態や機能から考えるか遺伝レベルで考えるかで、見え方は違います。康有為が革命の論理を保守派守旧派の聖典である論語に求めたように。右も左も保守も革新も、咲く花は色も形も季節も違えど根は一緒のことが多いです。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


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