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尻呼吸でイグ・ノーベル賞

◉今年も日本人研究者が、イグ・ノーベル賞を受賞しました。毎年ユニークな研究で、楽しませてくれるイグノーベル賞ですが、実は学問的には大事な部分を含んでいると思います。日本の基礎研究が、本当の危機に直面するのは、この賞が取れなくなった時でしょうね。

【“尻呼吸”が実現? ユニークな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」 日本人研究者らが受賞】livedoorニュース

 ユニークな研究に贈られるノーベル賞のパロディー版「イグ・ノーベル賞」が発表されました。ことしは「お尻で呼吸ができる」ことを発見した日本人研究者らが受賞しました。

 12日、東京医科歯科大学の武部貴則教授らの研究グループに、「多くの哺乳類がお尻から呼吸ができる」ことを発見したとして「イグ・ノーベル生理学賞」が贈られました。

 武部教授らはドジョウなどの一部の生物が肛門を通して腸内から酸素を取り込んでいることに注目し研究を進めました。当初、酸素ガスを直接哺乳類の腸内へ注入する方法を試しましたが、酸素の吸収量が少ないことや、腸が破裂するリスクがあり、別のアプローチを取る必要があったということです。また、全く新しい研究分野だったため、武部教授らの活動を支援する環境が整っていなかったことや、資金面での課題もありました。

https://news.livedoor.com/article/detail/27176232/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、豚のイラストです。可愛いので、使わせていただきました。

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■腸で呼吸する■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。新世紀エヴァンゲリオンのLCLは、ジェームス キャメロン監督の映画『アビス』の中に登場した、肺を液体で満たして呼吸の酸素変換を効率的にする、というシーンの影響でしょうけれど。個人的にはあの映画、とても面白かったのですが。ヒットメーカーのキャメロン監督の中では、あまり興行成績が振るわなかった部類でした。なので、外国人にもエヴァのほうが、人口に膾炙してる部分もあるでしょうね。

 武部教授らの「腸換気法」は、完全に肺の機能が失われた患者の「肺呼吸」を代替するものではありませんが、人体の治療に応用した場合、従来の人工呼吸器やECMO(=人工心肺装置)を使った治療に比べ、体への負担を軽減できることが見込まれるということです。

同上

一見するとユニークな研究ですが、人の命を救う医療の重要な研究の一部でもあります。小学校の頃、クラスでドジョウを飼育していると、酸素が少なくなると水面から口を出して空気を吸っており、肺ではなく腸から吸収しているという話を聞いて、驚いた記憶が。実際、ドジョウは空気を吸い込んで、お尻から気泡を出していました。この研究もまた、その延長線上にあるんでしょうね。人は肺のみにて呼吸するに非ず。実際、金粉ダンサーも、皮膚呼吸ができないために長時間のダンスは難しいそうです。

■遊び心とノーベル賞■

韓国では国民的悲願の、ノーベル賞科学分野での受賞なのですが(ノーベル平和賞は金大中元大統領が受賞)。ノーベル賞に執着するあまり、韓国ではノーベル賞受賞の科学者を招いての講演会が、盛んなそうで。そこで必ず聞かれるのが、「どうやったら韓国はノーベル賞が取れるのか?」という質問だとか。はっきり言ってしまえば、そんなことを言ってる内は、ノーベル賞は取れないでしょう。ノーベル賞級の研究となると、ゲームの攻略本のように、こうやれば取れるなんて必勝法は、ありませんから。

ひょっとしたら自分の一生をかけた研究が、全く無駄に終わるかもしれない覚悟を持って、それでもなお研究者の道に進む覚悟と情熱がないと、ダメでしょうね。理系の成績優秀者が研究職に進まず、猫も杓子も医者になりたがるような状況では、運よく誰かがノーベル賞を受賞しても、その後何十年も2人目が出ないことになるでしょう。どうにも東アジアには、一点豪華主義的に業績を出して、他のジャンルでも同じようにできると、自分で自分を誤魔化す悪癖があります。日本もその傾向があるのですが、韓国は特に顕著ですね。

ノーベル賞を取りたいなら、まずはイグ・ノーベル賞の充実。これを外せないと思うんですよね。そういえば昨年、韓国から3人目のイグ・ノーベル賞受賞者が出ましたね。これはすごく良い傾向で、研究自体に遊び心があり、すぐには役に立たない、将来的に何の役に立つかもうわからなくても、そこにチャレンジする姿勢が、イグ・ノーベル賞には必要ですから。アインシュタイン博士の相対性理論だって発表当時、それが何に応用できるかなんて、分かっていなかったんですから。今では、カーナビにも応用されていますけれどね。

■学問は道楽■

話をイグ・ノーベル賞に戻して。江戸時代の日本は、和算が発達します。関孝和はベルヌーイよりも先にベルヌーイ数を発見するほど、独自の発達を見せます。でもコレ、当時の日本人は数学を一種の遊び=道楽として、楽しんだ結果なんですよね。当時の実用的な数学書である『塵劫記』が、1627年に京都の吉田光由によって出版され、ある版で答えを書かない〝遺題〟が出題され、読者に挑戦状を叩きつけたわけです。これをアマチュア数学家が競って解き、数学ブームが巻き起こったわけで。

物理的な成果を求めることは大事ですが、そればかりでは自ずと限界がありますね。ノーベル賞クラスの研究となると、ある意味で宝探しのような冒険でもありますから。冒険の結果得られる宝物が欲しいというより、冒険 自体を楽しむ心がないと、長続きはしませんからね。毎年このイグ・ノーベル賞の結果を聞くと、世界中には本当に面白い研究をしている人々がいて、それを楽しむ 精神が、この賞自体に満ち溢れています。末長く 続きますように。


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