尻呼吸でイグ・ノーベル賞
◉今年も日本人研究者が、イグ・ノーベル賞を受賞しました。毎年ユニークな研究で、楽しませてくれるイグノーベル賞ですが、実は学問的には大事な部分を含んでいると思います。日本の基礎研究が、本当の危機に直面するのは、この賞が取れなくなった時でしょうね。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、豚のイラストです。可愛いので、使わせていただきました。
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■腸で呼吸する■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。新世紀エヴァンゲリオンのLCLは、ジェームス キャメロン監督の映画『アビス』の中に登場した、肺を液体で満たして呼吸の酸素変換を効率的にする、というシーンの影響でしょうけれど。個人的にはあの映画、とても面白かったのですが。ヒットメーカーのキャメロン監督の中では、あまり興行成績が振るわなかった部類でした。なので、外国人にもエヴァのほうが、人口に膾炙してる部分もあるでしょうね。
一見するとユニークな研究ですが、人の命を救う医療の重要な研究の一部でもあります。小学校の頃、クラスでドジョウを飼育していると、酸素が少なくなると水面から口を出して空気を吸っており、肺ではなく腸から吸収しているという話を聞いて、驚いた記憶が。実際、ドジョウは空気を吸い込んで、お尻から気泡を出していました。この研究もまた、その延長線上にあるんでしょうね。人は肺のみにて呼吸するに非ず。実際、金粉ダンサーも、皮膚呼吸ができないために長時間のダンスは難しいそうです。
■遊び心とノーベル賞■
韓国では国民的悲願の、ノーベル賞科学分野での受賞なのですが(ノーベル平和賞は金大中元大統領が受賞)。ノーベル賞に執着するあまり、韓国ではノーベル賞受賞の科学者を招いての講演会が、盛んなそうで。そこで必ず聞かれるのが、「どうやったら韓国はノーベル賞が取れるのか?」という質問だとか。はっきり言ってしまえば、そんなことを言ってる内は、ノーベル賞は取れないでしょう。ノーベル賞級の研究となると、ゲームの攻略本のように、こうやれば取れるなんて必勝法は、ありませんから。
ひょっとしたら自分の一生をかけた研究が、全く無駄に終わるかもしれない覚悟を持って、それでもなお研究者の道に進む覚悟と情熱がないと、ダメでしょうね。理系の成績優秀者が研究職に進まず、猫も杓子も医者になりたがるような状況では、運よく誰かがノーベル賞を受賞しても、その後何十年も2人目が出ないことになるでしょう。どうにも東アジアには、一点豪華主義的に業績を出して、他のジャンルでも同じようにできると、自分で自分を誤魔化す悪癖があります。日本もその傾向があるのですが、韓国は特に顕著ですね。
ノーベル賞を取りたいなら、まずはイグ・ノーベル賞の充実。これを外せないと思うんですよね。そういえば昨年、韓国から3人目のイグ・ノーベル賞受賞者が出ましたね。これはすごく良い傾向で、研究自体に遊び心があり、すぐには役に立たない、将来的に何の役に立つかもうわからなくても、そこにチャレンジする姿勢が、イグ・ノーベル賞には必要ですから。アインシュタイン博士の相対性理論だって発表当時、それが何に応用できるかなんて、分かっていなかったんですから。今では、カーナビにも応用されていますけれどね。
■学問は道楽■
話をイグ・ノーベル賞に戻して。江戸時代の日本は、和算が発達します。関孝和はベルヌーイよりも先にベルヌーイ数を発見するほど、独自の発達を見せます。でもコレ、当時の日本人は数学を一種の遊び=道楽として、楽しんだ結果なんですよね。当時の実用的な数学書である『塵劫記』が、1627年に京都の吉田光由によって出版され、ある版で答えを書かない〝遺題〟が出題され、読者に挑戦状を叩きつけたわけです。これをアマチュア数学家が競って解き、数学ブームが巻き起こったわけで。
物理的な成果を求めることは大事ですが、そればかりでは自ずと限界がありますね。ノーベル賞クラスの研究となると、ある意味で宝探しのような冒険でもありますから。冒険の結果得られる宝物が欲しいというより、冒険 自体を楽しむ心がないと、長続きはしませんからね。毎年このイグ・ノーベル賞の結果を聞くと、世界中には本当に面白い研究をしている人々がいて、それを楽しむ 精神が、この賞自体に満ち溢れています。末長く 続きますように。
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