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幸楽苑V字回復の理由

◉近所に幸楽苑はないため、そんなに頻繁に利用するわけではないのですが。福しんとか幸楽苑とか日高屋は、安くてそこそこのレベルの食事ができる中華料理店、というイメージがあります。しかし先代社長の時代に赤字に転落し、社長が交代したのですが。新体制になって業績が回復したようです。デフレを脱却して、賃金アップの時代に外食産業はどうあるべきか、参考になりますね。

【トップ交代でラーメンチェーン「幸楽苑」大復活の衝撃…奇をてらわない原点回帰で客数が回復】集英社オンライン

3期連続の営業赤字で沈みかけた幸楽苑ホールディングスが大復活を遂げている。2024年3月期に営業利益率0.1%というギリギリの黒字転換を実現すると、今期は2.3%まで高める計画を立てている。客数の回復も目覚ましい。2024年6月の既存店客数は前年同月比で1割増となった。
同社では昨年6月に新井田昇氏が社長を退任し、父親の新井田傳氏が会長兼社長に就任したが、早くもトップ交代の効果が出ているようだ。

https://shueisha.online/articles/-/251097

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、幸楽苑のラーメンです。

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■ブルーオーシャンは何処に■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。なるほど郊外のロードサイド店が主軸の店舗展開だったから、さほど郊外に出かけない自分が、あまり幸楽苑を見かけなかった理由ですね。逆に日高屋は、どこにでもある印象です。都心部の店舗は確かに利益率は高いのですが、東京の異常な地価と賃料をカバーできる企業は、そんなに多くないですからね。ここら辺の事業展開の基本的な戦略は、とても重要です。都心の方が儲かるという単純な戦略では、回復もおぼつかなかったでしょう。

幸楽苑は郊外のロードサイド店が主軸の店舗展開を行っている。都市部や繁華街が中心の日高屋と比べて立地面では有利だった。ロードサイドへの出店に強いすき家は、吉野屋、松屋よりも回復が早かったし、同じ理由でコメダ珈琲店もドトールやサンマルクなどと比較して客数減の影響は限定的だった。

郊外店の場合は、出店自体が容易ですし、土地代や賃料の圧迫が少ないですからね。かつて、ザ・グレート・サスケ選手がみちのくプロレスを立ち上げた時、数百人程度の客入りで大丈夫なのかと疑問を持ったライターが、その点を質問すると。地方の体育館や公民館を借りての興行なので、使用料金が5000円とか1万円で済むこともあるんだそうで。東京ドームや後楽園ホールの高額な使用料金を考えれば、確かにその使用料金なら2000円の客が100人でも、ペイできますからね。その経営戦略の目の付け所に、驚いたものです。1992年に旗揚げして、今も存続しているのですから。

■チョコレートラーメンの愚■

日本の場合は、怪しげなコンサルタント業が、効果も疑わしい方法論を経営者に吹き込み、迷走させることがしばしば起こります。経営なんて、そんな劇的な変化は難しく。地道な改善と工夫の積み重ねが、経営の王道なのですが……。幸楽苑は前社長時代、チョコレートラーメンなんて、馬鹿なことをやってたんですね。話題になればそれでいいという、馬鹿マーケティングの典型例ですね。郊外店が主軸のチェーン店に、そんなメニューで嬉々としてやってくる新規客が、リピーターとして定着するはずもなし。まさに目先の話題を追った結果。

新井田昇氏が社長に就任してからは、季節ごとに変化する新メニューの投入、新型コロナウイルス感染拡大によるメニュー構成の変更、物価高を背景とした一部商品の値上げなどを行った。

これらはいずれも創業当初の原理原則から外れていたものだった。幸楽苑の迷走ぶりを象徴したメニューがある。2020年に期間限定で発売したチョコレートラーメンだ。

醤油ラーメンをベースにカカオオイルを加え、チョコレートとショウガをトッピングしたというもの。その味については賛否が分かれるとして、この商品がバズを狙ったマーケティング先行のものであることは明らか。

地方の村興しイベントなどでも、東京のコンサル会社がやってきて補助金を食い物にし、何の成果も残せないどころか、ダメージさえ 与えることもしばしば。極端な話、これが都心中心の日高屋であったならば、チョコレートラーメンも多少は、成功した可能性はあるでしょう。セントラルキッチンでやるにしても、柔軟な対応が可能でしょうから。でも、郊外店が主力では、各店舗でチョコレートラーメンを用意するのは、負担でしかありませんからね。

どうにも、プロの漫画家になるにはpixivやTwitterやInstagramなどのSNSでのフォロワー数を増やしましょう系の、マーケティングと同じで。数だけ増やしても、質を考慮しないと無意味ですから。100円を払ってくれるファン10000人と、10000万円を払ってくれるファン100人では、同じ100万円の売上でも、その内実は大きく変わりますから。何が正解かではなく、どこにブルーオーシャンがあるのか、そこを見極めて、ニッチを見つけるのが大事であって。軽佻浮薄なコンサルに騙されない、そこが大事かと。

■デフレの呪縛を解き放つ時■

値上げをすれば客が離れる、だから値上げできないで、デフレのスパイラルに苦しみ続けた、平成の30年間。マスコミがまた、デフレの時代にインフレは悪という、江戸時代や戦後の狂乱物価の時代の価値観で、値上げを攻撃してきましたから。でも重要なのは、適度なインフレ状態の方が経済が回っているということ。値上げしたら売れなくなる商品に固執するのではなく、値上げしてもお客さんが納得するような商品に注力すること。何度も書いていますが、安いというのは絶対的な価値ではなく、相対的な価値でしかないです。

その点、価格のお得感を全面に出し、満腹感が味わえるセットメニューを強化したトップ交代後の幸楽苑の方がファンの信頼度は高まるだろう。

幸楽苑の代表的なメニューである「中華そば」はかつて290円だった。現在は490円だ。値上げによって客離れを引き起こしたとする報道もあるが、その価格に見合う価値が提供できている限り影響は限定的なはずだ。

経営者に求められるのは、値上げによって離れる客と、そこで得られる利益を天秤にかけ、利益を優先する姿勢でしょう。かつて、Apple社のMacintoshが、シェアが低かった頃。経営コンサルタントは値段を下げてシェアを取りに行くべきだと、口を揃えていました。でも天才経営者スティーブ・ジョブズは、ポルシェやフェラーリのシェアはもっと低くても誰も気にしないと、値下げを拒み続けました。結果、安さが売りだったDellはシェアトップから転落。IBMはパソコン事業を中国に売却し、多くのパソコンメーカーが事業撤退しました。

Microsoft社は、Windows機に比べてMacはこんなに高いと、莫大な広告費をかけてネガティブ・キャンペーンを張りましたが。その結果、Macは高級機というブランドイメージが高まり、逆にパソコンショップでは利益率の高い高級機種が売れなくなる、なんて状況が生まれ青息吐息。そりゃあ、高級機種も低価格機も、同じ1ライセンスのMicrosoft社としては、50万円の高級機種 1台 よりも、5万円の低価格機 10台が売れた方が、儲かりますからね。でも、正しかったのはジョブズの経営戦略だったわけで。

そんなことを思い出しました。


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