ちんこを見るために一致団結した記憶

・1000字強。


 中学生の頃の記憶。

 「斉藤さん」というアプリが流行していた。流行していたとはいってもスマホ所持者は仲間内でもごく一部だったので、市営の体育館で頭を寄せ合い、一台のスマホの斉藤さんを見ていた。田舎の平日だったので他に人はいない。

 その遊び方が、実に趣味が悪かった。

 斉藤さんは、リアルタイムで暇な人とランダムにマッチし、音声通話やビデオ通話を開始するという暇つぶしアプリだ。しかし、出会い目的、引いては局部の見せ合いに使う人間がやたら多く、マッチしてもこちらの性別を確認すると即切ってしまう人間も珍しくなかった。

 ある日、友人8人くらいで1台のスマホを覗き込んで他人の会話を聞いて楽しんでいたのだけど、その友人の一人である女子が「ちんこ見たくね?」と言い出した。ちんこRTAの開始である。いかに早く、出会い厨らしき男性とマッチングし、相手の性欲を引き出し、ビデオ通話に持ち込み、ちんこを引き出せるかを試したくなったらしい。

 当時、多感な時期の悪ガキたちは(私も含めて)全員ノリノリだった。


ー 出会い厨の、愚かなちんこが、見たい ー


 その女子は色々と試し、やがて運よく「ほどよい出会い厨」とビデオ通話までこぎつけることに成功。ちんこを見せて貰える運びとなった。こちらはまんこを見せる約束だが、悪ガキにそんな約束を守る気はさらさらない。ちんこを引き出すだけ引き出したら、ひき逃げ。

 しかしそこで相手が一言。

「そこ、他に人がいない?」

 こちらが市営の体育館でビデオ通話している以上、至極当然の疑問。さすがに出会い厨と言えど体育館で局部を露出することには抵抗がある。

「いないよ」

 と答えたはいいが、こちらは数人の悪ガキがスマホを覗き込んでいるのだ。

 唐突に開催される、ちんこを賭けたかくれんぼ。広々とした体育館には遮蔽物がなく、隠れようと思ったらかなり向こうの方まで歩く必要がある。

 目くばせ。目くばせ。やるぞ。アレをやるぞ。

 女子はゆっくりとスマホを持ち上げ「誰もいないよ~」と言いながら体育館全体をゆっくり映す。他の奴らは抜き足差し足で、スマホと同じ速度で女子の背後を周回する。移動する死角だ。

 全員が笑い声をこらえるので必死だった。笑ったら最後、ちんこを逃してしまう。

 その時の、グルーヴ感……! ちんこを見るために悪ガキで塊になって足音をたてないよう歩く、一致団結感……! 大人になった今では二度と経験できない記憶として脳内に深く刻まれている。


 結果、ちんこは見れました。

 おわり。

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