【1/9】まさかいかさま

・1900字強

・またも電車エピソード

　ある朝、電車で爆睡キメながらスマホから結構な音量の音楽を垂れ流していた男がいた。その向かいの席に座っていた男子高校生二人組が「やる？やっちゃう？」的なことを囁き合ったあと、そのうちの勇敢な一人が、爆睡スマホ野郎に手を伸ばし始めた。列車内のみんなの視線は静かにそちらへ向いた。男は番犬ガオガオの要領でスマホの音量調節ボタンを押し、音楽を止めることに成功した。車内は音一つたてず「よくやった」の会釈に満ちた。

・Chessformer

Chessformer on Steam

・約５００円で約５０ステージだから、１ステージあたり約１０円か（そういうケチくさい計算をするな）

・良いパズルゲーだった。本当に１マスも１駒も無駄がなく、画面の全てが必然で固まっていて気持ちがいいね。パズルゲーム特有の「一度通ったギミックを別の方法でまた通る」みたいな面白さもある。

　作者、あたまい～くてすげ～……

・やはり……「ルール説明のないパズルゲーム」ってめちゃめちゃ面白いね……私が知ってるのだと、The witness、klocki、Understandとか……

　ルール説明がないこと自体は別にそこまで美しいわけではないのだけど、そこよりも「そもそも説明が必要になるような複雑なルールではない」という設計になっている点が美しい。Chessformerは見た目通りチェスの駒を使ったパズルゲームなので、ルール説明がなくてもどうすればいいかわかる。

　そしてルール説明のないゲームは往々にして、画面内の情報量が少なくてよい。ゲームにおいて、画面内の情報量は少ないほど美しい……

・今思いついた「粗探し」の対義語、「砂金探し」

　褒められる点を探すこと。

・賭博破戒録の方のカイジ

賭博破戒録 カイジ

・またしても……ッ！またしても……ッ！

・してやられた……ッ！

・がっ……！がっ……！

・「最初の三巻だけキンリミで無料である」という疑似餌につられ、「あらお得」と思って食いついたが最後、その針には返しがついていて抜けない……ッ！気づけば残りの１０巻も全て購入している……！

・許さんからな……！福本伸行……！

・ほんとに、みんな、お得だと思ってキンリミ入ったらダメよ。面白い漫画との出会いがありすぎて破産するよ。

・カイジという賭博がテーマの漫画、登場人物全員が利己的に動いてるから気持ちがいいんだよね。みんな人生が懸かってるからイカサマくらい普通にするし、イカサマは見破れない方が悪いのだ。

・カイジは基本的に、一匹狼の丸腰主人公 vs 国家規模の闇組織という構図のバトルでお話が進んでいく。ここで重要なのは、「なぜその闇組織は主人公を暴力で押さえつけないのか？」という点だ。闇組織なのだから、カイジにイカサマを見抜かれても「へえそうですか」と平気な顔をすればよいし、カイジに大負けしても「金は払わん」の一点張りをすればよい。そんな中、なぜカイジにフェアに接してやる必要があるのか……？という背景が毎回ちゃんと固まっているのがよい。というかカイジが固めていることもある。「ゲームはフェアにやるのがスポーツマンシップだ」などという姿勢の利他的な人間はいない。

　そしてそれはアカギという漫画も同じだ。ご都合の介在余地がなくてよい。

　やはり私は「利己」で固められたお話が好きだな。リアルでは利他的な人間が好きだけど、フィクションでは利己的な人間が好きだ。上手く言い表せないけど、利己は目的に向かった一筋の線に沿ってキッチリカッチリ動くけど、利他はフワフワしてるからメリハリがない。

・剣道とかもあんまり好きじゃない。「相手への敬意を欠いた行為全般」が反則とされていて、その定義も割と審判次第だからだ。

・永田さんの日記のとある回、全体的に名言なので全文引用したいんだけど、有料マガジンだけあってあんまり引用すると剽窃になっちゃいそうなので一文だけ……一文だけ引用したい。

　「麻雀において、誰かが和了しそうな時に大明槓するのって迷惑だし止めた方がいいんですかね」的な質問に対する回答文。

・それで言ったら、あなたが勝つのが他3人においては最も迷惑だからね。あなたが大負けすることでしか、他の人の得にはなり得ない。あなたが勝つ限り、みんなが不幸。それが麻雀。それは理解してほしい。

　これよな。迷惑だろうが失礼だろうが、利己的に勝利を目指すのは当然なのであって、使える手段は全部使えばいいんだよね。

・何の話だよ。まあ要は、カイジやアカギは登場人物全員がスポーツマンシップを欠いているイカサマ暴力野郎ばかりなのだけど、それでもフェアなゲームをしなければいけないくらい背景が必然で塗り固められているから最高ですという話。

・おわり