【日記2022/5/5】鑑賞者にも干渉
・1700字強
・これからどんなにテクノロジーが発展しても、ホラー映像を作ったり鑑賞したりする界隈、特にモキュメンタリーの界隈では「ハンディカメラ」「VHS」「アナログ放送」という概念の知名度はあまり落ちないんじゃないかなと思っている。
アナログ放送特有のノイズ、ビデオテープ特有のノイズはかなりホラー作品の怖さに貢献しているので、もしビデオをすっとばしていきなりDVDが発明されたり、アナログ放送をすっとばしてデジタル放送が発明されていたら……と思うとゾッとするね。
1000年後のモキュメンタリーでも家庭用ハンディカメラとVHSが登場してたらいいな。
いや、VHS自体は忘れ去られても、ノイズや砂嵐だけは「なんか呪いといえばノイズと砂嵐があるもんだ」みたいな風習だけ残っていて、呪いのブルーレイを再生して砂嵐になったりするのかな。スマホで事故物件を撮影してたら、霊に襲われて転倒、映像に色々なノイズが走って砂嵐からの暗転すんの……
・「心霊マスターテープ」やべー面白かった
私の中で星5の作品だ。珍しいことよ。私の中の星5。
マジのネタバレ感想を書くので、私の感想を読んでる暇があるなら本編を見て欲しい。ジャンルはホラー/モキュメンタリーかな。作中のカメラで撮影された映像のみが視聴者に見せられる。
有名な心霊/ホラー関係の映像監督やディレクターなどがたくさんレギュラー役/本人役として出てるというのも見どころらしいのだけど、私は誰一人として知らなかったのでそこはまあいい。知ってる人からしたらすごい大作なんだろうな。全員演技が自然なのもすごい。監督ってみんな演技も上手いもんなのか。
お話の主軸は、日本で初めて市販された心霊ドキュメンタリーが「知られざる心霊世界」というタイトルのビデオテープであるらしいというふわっとした噂話をもとにそのVHSを追うというもの。動機も「そのVHSを見つけないと呪われて死ぬ」みたいな非現実的な動機づけではなくて、とても自然でよい導入。
やはり私のように「特定厨のケ」がある人間にとって、「普通の人間なら辿り着けないはずの情報に、推理/聞き込み/有識者とのコンタクト/観察/決め打ちなどの使える手段を全て使ってアクセスする」というお話は非常に刺さるんだよね。それも、首の皮一枚で繋がっていてマジでギリギリアクセス可能な情報であるほどハラハラするよね。VHSのガビガビ画質も「これが発見されるのがあと数十年遅かったら失われていた」という儚さがあってよい。
「変な家」に代表される雨穴さん作品群も同じ良さがあったし、実写シャーロックホームズもかなり良かった。「君の名は」も若干そういう描写があったかしら?
後半でそのVHSが発見された瞬間は戦慄したね……その安くて小さな箱に、それが歴史の分岐点であるという「輝き」とか、それがこれから多くのホラー監督を動かすという「磁力」を感じた……日本のどこかで埃を被っていた小さなゴミが物語の鍵になってるの、アツいね……
オチも非常によかった……量産されており呪いのビデオというわけでもなかったビデオが急に呪いのビデオとしての機能を発揮し、その役目を終える瞬間、非常に美しい……
壊れたビデオテープを修復して視聴したけど、別に衝撃の新事実が発覚するというわけでもなく、なんなら視聴者は既に知っていた事実が改めて提示されるだけなのに、しかしそれが確実に呪いであることは共感できる……
これ、オカルトのパワー抜きで完全にヒューマンホラー(ひとこわ)にしても成り立つお話……ではあると思うので、個人的な好みで言ったらヒューマンホラーにしてほしかったというのはある。
やはりモキュメンタリーというのはリアリティが他とは桁違いだね。多少のご都合的展開があっても「まあこれはフィクションでなく現実だしそういうことも起こるでしょ……」で片づけられるのが強い。
実際に有名なホラー監督たち本人がホラー監督役として出ているので、マニアの方々からしたら本当にどこからがフィクションでどこまでが現実なのかが(良い意味で)混乱するのではと思った。
ホラー的面白さよりもそのVHSを特定するゾクゾクワクワク的面白さの方が強かった印象。ネタバレ感想を読んでしまったそこの君も観てくれ。
・蛇足だけど続編の方はあんまりだった。あれはあれで面白くはあるのだろうけど、1と2では面白さの方向性が違って、2の方は私に合わなかったという話。
・おわり