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USJ、ネスタリゾート神戸、ハウステンボス…森岡毅さんがテーマパーク・レジャー施設再生で無双できる理由

こんにちは!全国で日帰り温泉事業を手がける「温泉道場グループ」の宮本まさきです!

僕たちは全国で日帰り温泉を展開していますが、そのほとんどが赤字経営に陥っていた施設を事業譲渡や運営代行というカタチで再生しています。

赤字経営からの回復、V字回復ときくとみなさんの頭の中には誰が浮かびますか?マーケティングに興味のある方であれば、多くが「USJ再建」で知られる森岡毅さんのお名前を挙げられるのではないかと思います。

森岡さんが率いるマーケティング会社「刀」は、昨年も7月に兵庫県の「ネスタリゾート神戸」の経営権を取得したり、10月に長崎県の「ハウステンボス」の運営支援に入るなど、レジャー施設やテーマパークの再生には必ずといっていいほど名前が挙がります。

森岡さんや刀の動向にはいつもワクワクさせられっぱなしですが、今回は、僭越ながら同じハコモノ事業者という目線で語ってみたいと思います。

甲子園60個分の広大な敷地を有する「ネスタリゾート神戸」

「ネスタリゾート神戸」という施設はみなさんご存知でしょうか?神戸の山間部にある、ホテル・温泉・コテージ等がある、超巨大複合リゾートテーマパークです。

年金保養施設「グリーンピア三木」の跡地にオープンしたレジャー施設で、2017年には関西を中心に展開している温泉施設「延羽の湯」の新店舗が敷地内に誕生しましたので、僕もお風呂目当てで訪問しました。

当時の感想は・・・「とにかく広い!」

・バブル時代を思わせるような巨大ゲート
・ゲートの中も車で移動
・広すぎて全体像が分からない

「すごい、これどこまでが敷地・・・?広いー広すぎるー!」と、子どものような感想で恐縮ですが、とにかくその敷地の広さが目につきました。また、全体的にバブルの雰囲気が残っていて、施設などもいちいち豪華です。

ちなみに、僕のお目当てだった「延羽の湯 野天 閑雅山荘」は、和風隠れ家系温泉で、露天風呂、岩盤浴エリアも広く、間違いなく日本最高クラスです。極力たくさんのお風呂屋さんを巡るという目的で、同じ店舗にはあまり行かないようにしていますが、あそこはもう一度行きたいと思うほどです。

画像引用:延羽の湯 野天 閑雅山荘

さて、敷地内を車で回りながらウロウロ見ていると、プール付きコテージを作っている最中で、「大阪圏のインバウンドや、芦屋宝塚の富裕層向けに作っているのかなー」と漠然と考えていました。

おそらく当時はまさにそんな構想だったと思うのですが、その後新型コロナウイルスによるインバウンド需要の消滅により、「ネスタリゾート神戸」も極めて厳しい状況に追い込まれたことは想像に難くありません。

「ここからどうやって舵取りしていくんだろう」とウォッチしていたタイミングで、なんと森岡さんがサムティとタッグ組んで仕掛けるというニュースが飛び込んできました。

このニュースを目にした僕の率直な感想は「まじで!?」ではなく「やっぱりそうなるよね!?」でした。

なぜなら「ネスタリゾート神戸」をどうこうできる会社が、もはやこの日本に、他には存在しないからです。

本稿のタイトル「森岡毅さんがテーマパーク・レジャー施設再生で無双できる理由」の答えは、まさに、「他にできる人がいないから」の一言に尽きます。

「甲子園60個分の敷地」は、「ディズニーランド+ディズニーシー」より広い

そもそも「ネスタリゾート神戸」は、ハコモノとして超ハイスペックです。

  • 甲子園60個分の広大な敷地

  • 日本最高クラスの温泉

  • 一泊10万円クラスのプール付きコテージ

など強みも伸びしろも十分あるのですが、ハコモノ事業者として見ると気になる点が二つ。

① 敷地が広過ぎる
② 印象が薄い

敷地面積は全部で230万㎡あります。と言ってもパッとイメージが湧かないと思うので、主なレジャー施設で比較してみましょう。

  • マザー牧場 250万㎡

  • ネスタリゾート神戸 230万㎡

  • 姫路セントラルパーク 190万㎡

  • ハウステンボス 152万㎡

  • USJ 54万㎡

  • 東京ディズニーランド 46万㎡

  • 西武園ゆうえんち 20万㎡

  • 東京ドーム 4.6万㎡

  • 甲子園 3.8万㎡

こうやって比較してみるとよく分かるのですが、ネスタリゾート神戸は森岡さんがこれまで手がけてこられた、USJや西武園ゆうえんちよりも5倍近い面積があります。

もはやちょっとした町であり、敷地内の移動は車がないとできないです。比較対象がサファリパーク、牧場、公園などになるので、単体の「テーマパーク」というよりも「複数のテーマパークが共存している」ような業態になるように思います。

ちなみに僕は和歌山県出身なので、東京ドームで例えられるよりも「姫路セントラルパークより大きい」と言われた方が「マジで!」ってなります。あえて「東京ドーム50個分」ではなく、「甲子園60個分」で表現するところに、森岡さんの茶目っ気的な地元愛を感じます(笑)

あえての「甲子園60個分」!

スーパー銭湯業態とネスタリゾート神戸の意外な共通点

さて、僕は先ほども書いたようにスーパー銭湯の運営に携わっているのですが、スーパー銭湯とネスタリゾート神戸のような複合型リゾート施設にはある共通点があります。

それは、「業務の守備範囲がめちゃくちゃ広い」ということ。

飲食、宿泊、お風呂、理容美容、ゲームセンター、アクティビティやイベント企画、清掃…など、ソフトからハードまで、サービスから設備機器のメンテナンスまで、ありとあらゆることをやらなくてはいけません。

なので僕は常々、「スーパー銭湯を経験しておけば、その後どの業界にも行ける」と言っています。

一つひとつのプロはいても、それを全て取りまとめてマネジメントできる人材はとても貴重です。スーパー銭湯でもそうなので、ネスタリゾート神戸のような広大な敷地となるとなおさらです。

僕は視察の間、「すげー!広いー!」と感激しながら同時に、「これメンテナンスやマネジメントどうやるんだ…無理じゃん」と勝手に胃が痛くなっていました。

あれほどの規模の施設で、全体像を理解した上で戦略をたて、利益を上げながらマネジメントをできる人や団体は、日本には森岡さん以外にいません。ここは断言できます。

なので今後、不採算化したテーマパークや大型リゾート地の再生は、全て森岡さん率いる「刀」が担っていくんだろうな…と予測しています。

「ネスタリゾート神戸」今後の展開を勝手に予想

さて、そんな「ネスタリゾート神戸」が今後どのように変化していくのか。勝手に予想をしてみたいと思います。

予想① アウトドアの定義を広くとって初心者全振り! わざわざ遊びにくるテーマパークに

現在のエリアマップを見ても、基本的に園内は車で移動しながら、アクティブなエリアとホテルステイエリアに分かれているのがわかります。

僕がオープン当初に伺った時は、アクティブなエリアがほとんどなかったので、温泉+ホテルで長時間滞在するレジャーが少ないイメージでした。それを解消するべくアクティブエリアを増やして来たのだと思います。

実際、経営権発表から今日までの間に、ホームページもかなりアクティブ感の強い仕様に変更されているようですね。

画像:公式サイトよりスクリーンショット(2023/4/10時点)

予想② ラスベガスの高級リゾート。豪華絢爛な施設を徹底PR

ネスタリゾート神戸の売りは「大自然」ですが、大阪からの集客を考えたとき近くには奈良や和歌山もあります。近年はグランピング施設も各所にできているため、自然豊かな場所というだけで人を集めるのは難しいと思います。

そんな中、他を寄せ付けない破壊力を持っているのが、豪華絢爛・ラグジュアリーという言葉が相応しい、ロイヤルスイートのコテージです。

画像引用:ネスタリゾート神戸 公式サイト「ロイヤルスイ―ト」

(以下、ウェブサイトに掲載の紹介文)
これぞ、リゾートの最高峰

ネスタリゾート神戸の宿泊施設において、その最高峰となるロイヤルスイートC。 1,000m2を超える敷地に、キッチン付きのリビングルーム、マスターベッドルーム、ゲスト用ベッドルームを備え、天然温泉をお愉しみいただけるバスルームもご用意いたしました。

インバウンド需要も見込み、今後はこのリゾート感もネスタリゾート神戸の大きな強みとしてPRしていくことを、予想しています。

なお、料金は180,000円~。4人で泊まれば一人あたり45,000円~。ワンちゃんOK、温水プール付き、敷地面積1,000㎡超でこの価格は、かなりお得ではないでしょうか。

広域集客と足元集客を両立させる

多くのマーケターと同じく、僕も森岡さんや刀の取り組みは自社でのマーケティングの参考にさせていただいています。

その1つが、「商圏」の考え方で、広域集客と足元集客を両立させるというあり方です。

「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか」という有名な書籍の中で、USJ再建のために考えられた3段ロケット構想が紹介されています。

1段目のロケットは、テーマパーク事業の最大のボリュームゾーンでありながらUSJの長年の弱点だった「家族連れ顧客(ファミリー)」を取り込むこと。
そこから生み出したキャッシュをテコにして打ち上げる2段目のロケットは、遠方からゲストを集客できる「ものすごい何か」を作って、関西依存の集客構造から脱却すること。
(以下略)

「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」p26

書籍の中では、大阪を中心とした関西の集客を取り戻すと同時に、さらに東京など全国からお客様を呼び込み関西依存型の集客構造から脱却するために行った施策について具体的に書かれています。

さて、私が社長を務めている旅する温泉道場という会社では、三重県四日市市で「おふろcafé 湯守座」というスーパー銭湯を運営しています。

四日市市の人口は31.1万人。もともと赤字だった施設の運営を引き継いでいるという状況からお察しの通り、地元のお客様だけで事業を成り立たせていくのはすごく難しいのです。

そこで鍵となるのが、車で1時間弱の距離にある人口230万人の大都市「名古屋」の存在です。

「名古屋から、どれくらいお客様に来てもらえるか?」
施設の運営には欠かせない視点です。

名古屋のお客様は、ただお風呂に入るだけであれば、名古屋のスーパー銭湯で事足ります。名古屋のお客様を意識し台湾料理のメニューをご提供したり、東海エリアでウチしかやっていないと言えるような演出と体験を季節ごとに仕掛けたりもしています。

広報も、名古屋で読まれている雑誌や媒体に目をつけ動いています。

もちろんトリッキーな演出ばかりをしていれば地元のお客様が離れてしまうので、地元のお客様向けには回数券を用意したり、毎日風呂にいらっしゃる方向けのビンゴ大会を開催したり…と地元のお客様、遠方のお客様どちらにも喜んでいただけるよう手探りでバランスをとっています。

森岡さんへ・・・お風呂のことなら温泉道場まで!

USJの事例から多くのことを学ばせていただいておりますが、「ネスタリゾート神戸」の運営にも今後、森岡さんたちがさらに積極的に関わっていかれるだろう中、どのような変化が起きていくのか楽しみにしています。

大阪・神戸からの集客はもちろん、中国地方やあるいは関東からどのように人を呼び込むのか。その仕掛け方も勉強させていただきます!

また、森岡さんのリゾート施設・テーマパークの再生に、もしかしたら私たち温泉道場がもつお風呂の知識と再生ノウハウが役にたつことがあるのではないか?とも密かに思っています。

お風呂について何か気になることやお手伝いが必要なことがありましたら、いつでもお声がけください!

宮本昌樹@温泉道場グループCHRO

1986年生まれ、和歌山県出身。27才の時に地域活性を目指して株式会社温泉道場入社。支配人を2年間経験したあと、店舗リニューアル開発・コーポレートブランディング、フランチャイズ事業などを経て、HR部門に注力。2019年より、温泉道場グループ1人目の社長として、三重県の株式会社旅する温泉道場の社長を兼任している。

Twitter:https://twitter.com/masakimiy

(編集協力:伹馬 薫)


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