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連載小説「戊辰鳥 後を濁さず」

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土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 全85話で完結。約55000字となりました。街から文学が生まれるのではなく、街づくり文学を目…
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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

あらすじ 戊辰鳥 後を濁さず ―つちのえたつとり あとをにごさず― 第一部「釜場」 三月十五日(金)  農家であり地主であるトキ家の跡取り娘として生まれた私は、二十歳の時、祖父の養子となり、祖父からボロアパートを一棟譲り受けた。  表向きはトキ家の血を絶やさないためとなっているが、実際は広大な土地を持つ祖父から相続を受けるためである。  医師が祖父に宣告したおおよそ三年後までに私は相続税として多額のキャッシュを用意しなければならない。そのため、ボロアパートを解体し、そ

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第47話

五月一日(水) 「大敗だった。」と、言って悔しそうにしている。  今朝までジンベエザメらが宿泊していた四部屋全てを掃除するので、昼からモグラを呼んだが途中で飽きたのか、別室でテレビをつけて遊んでいる。  どうやら衆議院議員補欠選挙をテーマとして扱ったワイドショーを見ているようだ。 「モグラには関係ないだろう。今は掃除をやってくれ。もっと面白い番組を見よう。」  と、言ってリモコンを取り上げたがチャンネルを一周して結局戻ってきてしまった。もっとこういう時に当てはまるマシな

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第48話

五月二日(木) 「今日は、ここイグアナ福祉館にお集まりいただきありがとうございます。  この問題について、まずは私なりの解法をみなさまに提案いたします。  それは、このイグアナ地区に大規模排水処理施設を建設し、耕作のできなくなったこの土地一帯を調整地とするものです。施設で適正に処理された水は、ヒツジ川に放流いたします。  驚かれているでしょう。残念ですがこれが私の精一杯の提案です。  しかしこれでは今後、処理水が流れる地域で生活していただく方々がでることになります。  その