過ごしやすい季節ゆえ

職場にいたずら電話がかかってきた。

職場名を名乗り、自分の名字を名乗り、受話器に耳を傾けたところ「はぁ…はぁ…」と間隔が短く、荒い呼吸が聞こえる。男性特有の、声の低さを含んだ吐息である。

救急車、または警察を呼ぼうとして間違ってかけてきてしまったのかと思い、「大丈夫ですか?!」と問いかける。

「いま…アナルに…バイブを…突っ込んでいます…」

丁寧な実況中継を受ける。
when、who、howがきちんと説明されていて感心する。

彼は一体どこに "はぁはぁ" しているのかを考える。

アナルにバイブを突っ込んでいるため、純粋に気持ちがよい。
第三者に状況を説明できていることが気持ちよい。
若そうな女が電話に出たため、気持ちが高ぶり気持ちがよい 。
自分が実況中継したことにより、どんな反応が返ってくるのか考えただけで興奮して気持ちがよい。

「あ、はい、それは何より。(電話)切りますね」と優しく語りかけ、そっと受話器を置いた。

うだるような蒸し暑さが息を潜めると、蚊が再び姿を現すようになるが、こういった電話主も元気になってくるのかもしれない。

電話を切ってから、どういった形状のものなのか、質感はどのようなものなのか、長さはどのくらいで、事前にきちんと処理などをしたのか、そのアイテムはAmazonなどで手に入れたのかなど、尋ねたら喜んでくれたのか、はたまた向こうから電話を切られることになったのかなあ、と考えたが、職場の電話を使ってその掘り下げはマズイよな、と我に返り、話に花を咲かせなかった自分を褒めたのであった。

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