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IT系のお兄さんと書き物

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読んだ小説、観た映画などについて、ふと考えたこと、あとたまに創作をまとめています。ここだけは特にテーマを設けずに自由に書いています。書いている本人が実は一番楽しいのかもしれません。
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#エッセイ

言葉は全然完璧じゃない

僕らは普段、言葉を使うことで自由にコミュニケーションができると思っている。でも言葉自体はとても不確かな存在で、自由に伝えたいことを伝えたいように伝えることが実は結構難しい。 例えば「悲しい」という単語。悲しいシチュエーションは星の数ほどあるのに、その全てを「悲しい」とたった一言で表せてしまう。 それはつまり朝目覚めたら愛犬のペムが亡くなっていた時も、ポケモンのガチャガチャでルージュラが3連続で出た時も、好きだった女の子が友達と付き合い始めた時も、その全てが「悲しい」で表現

無責任でいられること

随分と昔から鈴木敏夫のジブリ汗まみれというラジオのpodcast版を聞いている。もうだいたい全部聞いてしまって、ラジオ音源なのになぜかDVDになっているやつも購入し、今は昔聞いた話を適当に選んでたまに聞く。 面白いのはいつ自分が聞いたかで同じ話なのに印象が違うこと。そういう時に、話を聞くと言うのは、だから多分に自分の状態を反映するものなのだと実感したりする。 鈴木さんはスタジオジブリのプロデューサーで宮崎駿と高畑勲の2人とずっと昔から映画を作っている。でもだからといってこ

海と毒薬 遠藤周作

ボランティアとして、途上国の小学校でパソコンの先生をしばらくやっていたことがある。海に面した灼熱の特に何もない街で、のんびりと現地の子ども達と遊んだり笑ったり、たまに怒ったりもしながらパソコンを教えていた。 こういう話を人にすると大体「良いことをしたね」というような反応が返ってくることになる。それはもちろん嬉しい。 でも僕自身は僕の心の中に根ざしているものが何か知っている。だから自分の中では「良いことをした」という実感をあまり持つことができないでいる。正直に話せば、ボラン

意味が宿るとき

ホルンという金管楽器を学生の時にずっと吹いていた。プロになりたいと真剣に練習していた時期もあった。結局音楽家への道は選ばなかったし選べなかったけれど、大学を卒業するまではずっとホルンを吹いていた。中学生のときに始めたからその期間は10年ほどになる。 でも大学を卒業するときにすっぱりとやめた。不思議とあまり未練のようなものはなかった。ただ少しだけ寂しくて、ぷかぷかと浮かぶ寄る辺のない木片になってしまったようなそんな不安が残った。 自分の楽器を手放したときに、それは同じ楽団の

宇宙太陽光発電

チャーリーとチョコレート工場という映画にもなった本には、実は続きがあってその中ではなぜかチャーリー達がみんなでガラスのエレベーターに乗って宇宙に行く。当時小学生だった僕も流石にエレベーターで宇宙はちょっと馬鹿げているなぁと思いながら読んでいた。(話自体は割と面白い) だから高校生ぐらいのときに実際に宇宙エレベーター構想が世の中に存在していると知ったときには流石に驚いた。漫画ワンピースの空島編の始まりは「人が想像しうることは、全て実現するのだ」的な格言とともにガレオン船が空か

抱擁、あるいはライスには塩を 江國香織

細雪が好きでその話をしていたら、ある友人が「江國香織が細雪を書いたらこうなる」というコメント付きでこの本を勧めてくれた。高校生の頃に江國さんの本を読んでそれからずっと自分の中では不倫小説の人という失礼極まりない(本当にごめんなさい...)認識をしていたから、むしろ興味が湧いて手に取った。 結局誰かは不倫はしているんだけれども、というか不倫のスケールはむしろ上がっているんだけれども、それが物語の中心にはなっていないところが昔読んだ江國さんの本たちとは違っていて、個人的にはとて