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秋桜が揺れている。 秋桜を見ると、僕はどうしたって思い出さずにはいられない。 * * * 「秋桜の香りを知ってる?」 ひとりきりで泣いていたら、突然声をかけられて驚いた。 小学校に入る前。家族で遊びに行った公園で、みんなとはぐれてしまったのだ。 パパやママに会えない、もう帰れない。 泣きながら歩いていた時だった。 驚いて顔を上げると涙もひっこんだ。 見ると、僕よりも少し大きいくらいの女の子。 シパシパと瞬きすれば、まつげに残っていた涙がひとつだ
走らない選択肢は俺にはない。 だが同時に、走るという選択肢もない。 正反対の事象が成立するなんてありえないと思うだろう? そうでもないんだ。 走らなければならない、でも走るわけにはいかない。 俺の心を読んでいるひとがいるなら、この気持ちがわかるだろうか。 走るか、走らないか。 心を読んでいるひとよ、君ならどっちを選ぶ? ……誰が俺の心を読んでいるというのだ。 むしろ読まないでくれ、頼む。 俺はただ、トイレに行きたいだけなんだ。 今、すぐに