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ショートショート

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シロクマ文芸部に参加して書いたショートショートや、単発で書いたショートショートです。 ※ すべてフィクション ※ ジャンルはごちゃまぜ ※ 一話完結です。ショートショート同士の繋… もっと読む
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2023年8月の記事一覧

夏の終わりの勇姿 #シロクマ文芸部

「ヒマワリへの放水開始、10秒前ーー!!」  そう掛け声がかかると大声でカウントダウンが始まった。 「じゅーう! きゅーう!」  8月のお盆を少し過ぎたころ、この町のヒマワリ畑で行われる伝統行事。  伝統、とはいっても今この町にいる誰もその起源を知る者はいない。口頭伝承のように、書物や記録は一切残っていないのだ。  それでも絶えることなく、知られている限りでも80年以上は続いているらしかった。それは町の老人たちの「ワシらぁがこどもの時分からあったわな」という話によるもの

擬態語ウォーキング #シロクマ文芸部

 ただ歩くだけではつまらない。  そんなことを思うのは間違っているのかもしれない。しかし、つまらない。  運動する習慣を取り入れるはじめの一歩として、少し前から始めたウォーキング。  ウォーキングでは痩せないという説もあるが、効果があってもなくても、まず習慣にするためなのでそれほど重要ではない。それにまだ肥満でもない。今後のために、だ。  つまらなさの一因はそこだろうか。つまり切羽詰まってやっているわけではなく、真剣味が薄い。  一緒に歩く仲間でもいれば違っただろうか。

文芸部の友だち #シロクマ文芸部

 文芸部に所属している僕の友達は、小説を書いている。僕にも読ませてくれることがあるその小説は、どうやら僕たちの日常が舞台になっているらしい。  そのため、というのか、そのせい、というのか。彼はいつでもなんでもネタにしたがる。  僕の失敗したこと成功したことはもちろん、どうでもいい普段の会話からだってなんとか小説にできないかと、うんうん唸っているのが彼の日常だ。  僕としては、『小説』として大げさに書かれている僕の失敗談が基になっている話なんかは、やっぱり恥ずかしいのでやめて

平和が訪れるとき #シロクマ文芸部

 平和とはどんな世界にあるのだろう。  彼が誕生したその瞬間、——いや、遥か昔からずっとここは戦いの世界だ。  彼も、彼の仲間も、彼らが戦う相手も、戦う理由はわからない。もはや戦う理由があるのかさえ、わからないままだ。  彼らは人間によって造り出された。  始まりはもちろん人間同士の戦いであった。しかしそれではおさまりがつかなくなった。  そうして造り出されたのが殺戮のためのロボット。  人間同士の戦いは、ロボット同士の戦いへと託された。  世界のあらゆる叡智の結晶として