子供にはウイルスと石鹸の説明をしてもどうせ理解できない

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コメントを見ていると「子供にはウイルスと石鹸の説明をしてもどうせ理解できない」「今は嘘でも手を洗わせるのが大事」という意見が一定数見られます。

でも、「本当のことを教えて、子供が事象の概略を理解し、さらに手を洗うようになる」方法があったとしたら、それに反対する人はいませんよね。

子供は賢くなるし、病気は防げるし、いいことずくめではないでしょうか。そんな上手い手があるでしょうか?

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小1の娘の親なので、同世代の子供が大人に質問する場面はよく見かけます。その時に私が感じるのは、「子供には理解できない」ということではありません。

「大人って説明が下手だな」ということです。批判されるかもしれませんが偉そうに書くと「私ならもうちょっとうまく説明できるな」ということです。

とはいえ、ほとんどの大人は人に説明することを日常的にやってきていませんから、説明が下手でも自然なことです。

事象をそのまま伝えても語彙の問題もあるので、たしかに「子供にはわからない」でしょう。しかし適切にモデル化し、概念を伝えることができれば、大半の概念は理解できます。

それなのに始めから「子供にはわからない」と考えている人が多いようです。「子供にはわからないから説明しない」と本気で信じている節があります。私の意見では「適切にモデル化し、概念を伝える」ということができる大人が少ないように思います。「子供にはわからない」のではなく「子供にわかるように説明できない」場合が多いのではないでしょうか。

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例として、食事について、我が家での説明をご紹介したいと思います。

娘は子供の例に漏れず、食事をすぐ残そうとします。お菓子はできるだけ食べようとします。以前はよく「なんで?」と言いました。「なんで食べなくちゃいけないの?」「なんでお菓子食べちゃいけないの?」

もちろん、栄養学についてそのまま説明をしても「子供にはわからない」でしょう。

私は娘が3歳くらいの時にこう説明しました。

「ご飯の中には元気になるもとが入ってるんだよ。だからご飯を食べると元気になる」「お菓子の中には元気になるもとが少ない。だから、お菓子をたくさん食べてもご飯を食べないといけないんだよ」

この説明は「栄養」を「元気のもと」と置き換えています。これも不正確な表現ではあります。「元気とは」ということを突き詰めると間違った理解を生む可能性はあるかもしれません。

いちおう、娘はこの説明で納得し、以後、「元気のもと」をとるために食事をするという理解でいました。

5歳頃になり、もう少し複雑な概念を理解できるようになった時には、説明をアップデートしました。

「あなたがご飯を食べるのには2つの目的がある」「一つは成長して素敵な大人になること」「もう一つは、病気にならずに健康に過ごすこと」

それから、栄養についてもできるだけ正確に伝えます。

「ご飯の中には『えいよう』というものが入っている。お菓子にはえいようはあまり入っていない。だから、大きくなるため、病気にならないために、お菓子ではなくご飯を食べた方がいいよ」

それ以来、娘が「食べたくない」「残したい」と言うと私が「なんで食べないといけないんだっけ?」と尋ねます。娘は「大きくなるため」など答えます。私が「そう。大きくなるため、病気にならないためね」と言うので、彼女にとっては耳タコです。今は小学1年生ですが、一言一句間違えないで答えるでしょう。そして当然のことながら「なんで食べなきゃいけないの?」と言うことは一度もありません。答えを知っているからです。父がどう答えるか予想がついているからです。

それで彼女が残さず食べるようになるかというと、そうでもありません。やはり「食べられない」という時も多いです。お菓子も大好きです。でも、仮に「食べられない」と言う時でも、彼女は「なぜ食べた方がいいか」「食べないとどうなるか」ということを理解しています。だから最低限食べてから交渉してきます。

「〜はがんばって半分食べたから残していい?」というように「えいようはとった」というアピールをしてきます。それがもっともなら、私は残してもいいよ、と伝えます。合理的だからです。

最近は特に、保育園や小学校での食育、カミさんの方針もあって、肉や卵などのタンパク質を娘に食べるよう奨励しています。娘は肉より野菜や果物が好きですが、「お肉や卵は体を作るもとだから」と食べさせるようにしています。野菜は「病気にならないために」という感じです。

十分、子供でも理解できていると思います。「お化けが来る」と脅す必要もありませんし、嘘をつく必要もありません。

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「コロナウイルスが石鹸で活性を失う」という情報が出た際に、私は娘に説明しました。

「よく手を洗ってください。コロナウイルスは石鹸に触れると弱くなります。だからしっかり手を洗っていればたぶん大丈夫です」

それ以来、娘はきちんと理解して手を洗っています。いや、どうでしょう、もしかしたら目の届かないところで手を抜いているかもしれません。それでも、彼女は手洗いの効用をほぼ正しく理解しています。誰に訊かれても恥ずかしくない回答ができるはずです。

親だって、ふだんから説明をしていないと説明が上手くなりません。私はできるだけ正確に、わかりやすい説明を心がけることで、じぶんの説明の練習にもなると思っています。

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