ゲンロンSF創作講座第2回実作感想を24日金曜日までに読めただけ書いてく。


継名 うつみ スキット・スキャット・スキャタラー

梗概時点では、オモシロ言語バトルをやられるのかなと勝手に期待したのですが、そうではなかったですね。

様々な事情を持つ人間が船に乗り込み、その人のエピソードを両替してくれる。そういった所で、アンリは新たな故郷をそこに見いだす。

また、祖母の言語を別星系の言語との恋文としたのは、梗概にはないアイデアでしたね。なるほどおもしろいなと思いつつも、言語を両替してマンション最上階を勝ち取る、といったゲーム的な面白さから外れてしまったのは少し残念でした。

梗概を読まずに読んでいれば、又違った感想があるのかもしれません。
全般的に、アンリの目的も、大きくはつかめず、落としどころも後半に提示されたべつの惑星への旅となっていて、設定に対して物語が上手に絡まっていない惜しさを感じました。


花草セレ(はなくさせれ) 梅歌を齧る

文字数のせいもあるかもしれないですが、ものたりなさを感じました。

味覚センサという小道具の扱いは、もうすこし書いた方が良かったと思いました。数値化されて味気ないものになっていることに憤る主人公への共感をもっと高める情報が欲しいところです。

叙情的に描かれるシーンの切り取りも、もう少しエピソードがほしいと思います。幼少の友人関係、恋愛模様などがあればもっと、主人公の孤独感が引き立ったと思います。そういった出来事の後、すべてに絶望した青年が白梅に出会うことにより蘇る。その「救われた感じ」がもっと必要で、そうであれば「堕とされた」という悲しみも、より伝わってくる気がしました。


猿場 つかさ 君と蹴鞠だけをしていたかった

すごい。これを書ききるとは――
ところで、中大兄皇子と中臣鎌足ってラインハルトとキルヒアイスみがありませんか?

 尼を救出した際、鎌足は尼を鞠のように打ち上げた。朝廷の儀について打ち合わせると門番を言いくるめ法興寺に入り込み、仏塔の下で待つ尼に近寄らせ、山門や塀の遥か上へと蹴り上げて、邸の庭で待つ中大兄の元へ送り、軽やかに受けさせたのだ。

上の描写がやばいい。何が起こっているか完全に理解し、笑ってしまう。
個人的には「ああ、尼が飛ぶ。」あたりがハイライトになってしまった。
前半はかなり面白いが、後半はいろいろと発散してしまった印象が拭えない。

本作は、壮大なスケールのお話なので、まとまりきっていない点は惜しさを感じる。天皇制と大日本帝国、それに狂わされた蘇我入鹿。というのが、最後にもう一度、中大兄皇子が旧日本軍を切って捨てるまで繋がらない。

また、物の怪召喚バトルは悪くはないのですが、良くもない。ここは夢枕獏先生などを参考とすべきか?何にせよ、描写がこの辺だけ弱く、戦闘的な動きのあるシーンは著者の書きぶりとはあまり相性がよくないのかなとも感じた。このほか、梗概と比べ、蛇は良いキャラクターになっている。窪の描写も良い。奇妙な感じが伝わってくる。

全体のバランスの歪さ(おそらくもう少し長編にした方が合う気がする)。特に、旧日本軍の扱いについては、もっとしっかりと扱ったほうがよく感じた。このために、ほかの時代の描写を犠牲にしてもいいかもしれない。帝国に憧れた蘇我入鹿。そこをもっと描かれているところが見れると、仇役として際立った気がする。

長谷川京 熒惑の信仰者たち

「螢惑の信仰者たち」の感想、長谷川京は長編を書け!|方梨もがな|note


ここまで@0621

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