「熒惑の信仰者たち」の感想、長谷川京は長編を書け!

https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/students/hasehiro/5651/

この記事は、ゲンロンSF創作講座第2回実作「熒惑の信仰者たち」を読んだ感想です。Twitter上でざっくり感想を述べたところ「くわしくききたいどす」とのお声をいただいたので、以下、やらせていただきました。
お許しください!

#1  11000字(D7000 E4000)
登場人物及び世界設定。ここは◎。ただし、書き出しとして妥当かは△かもしれない。
(最もインパクトがあるとしたら、#0として火星の大地の描写から、ではないだろうか。)
イルミヤーー火星での現在進行形の問題、ぶち当たる私、そしてメイに思いを馳せる。
E
メイの出自(ちょっと安直すぎるつなぎだ。本来は別人だと思えるくらいがいいはず、というかテスカトリポカみたいな効果狙ってるでしょ絶対!足りてないよ)。脱出まで。

#2  9000字(D3000 E6000)
技術会議。(これは効果的には成功していない。ここのリアリティはもうちょっとできたと思う。)
主人公動機付け。
E
新生活。油田の宗教。トッラ。全世界インターネット。大脱出。タトゥー(ここ詰め込み過ぎ)

#3  9000字(D6000 E3000)
再現実験開始、イルミヤについて(ここめっちゃ面白い!!)
イマジナリー・メイ登場!(ここは無理やりが過ぎる!)
torraの発見(ここはもっとわかりやすく、おもしろくかけるはず。おそらくは#2のEを膨らまして、関連情報を事前に開示しとくとか)
E
メイ視点のメイ×レイカ
故郷の死。トッラの復活。(2のEが詰め込まれすぎていて、ここでの感情移入が困難。また、物語中に天才・超人キャラの人間的な心中を描き切れていない。)
ちょうど5年後、(ちょっと飛びすぎでしょ!)
イルミヤの本当の意味(地球外少年少女的な、ウィアー的な、そういったものを狙っているのは解るが、足りない!)

#4  4000字(D2000 E2000)
ロイの死(さすがに無理やりすぎ。ロイが物語中でここまで脇役すぎて、正直誰だっけとなったレベル)
死んでいたのは別人だった(この展開そのものは◎。問題はこのあとにレイカの話がないこと。)
E
種明かし(独白になってるのがまじでもったいない。これはレイカと対話すべき内容では?)
エモい死(悪くはないけどよくわからん。もったいない)

総評
読ませるがつまらない。なぜか。ページが足りてないから。
物語に対して文章が充足しているのが#1だけという印象。#2以降はそれぞれ文字数を概算2倍にしても問題ない。
以後の展開をつまらなくしているのは、圧倒的に描写すべきところがされていないからに思える。
例えば、#2Eでの生活は、もっと書ける内容がある。
また、Dのサイドでは、あえて抑えていると思うが、ベンチャー企業の面白いところをもっっっと描くべき、そこは強みなんだから!長谷川作品のトリックスターは絶対いたほうが面白い。(スーパーライクのラザロ、パンデモニウムダラーのG・Aのポジション)
あと、女性同士の恋愛描写は逃げずに書いたほうがいい!
そして、この36000字を読ませる筆力はすごいので、全然3倍にしても読める!保証する。

そんでもって、一度長編で書けるだけ書いた後なら、短編の長さにするときの目安が得られるんじゃないか。
規模感、展開量、ストーリーボリューム、そういったところの凸凹感が、作品から面白さを奪っている。
そしてこれは、文章が下手とか、アイデアが足りていないとか、ではなく、ごく単純に文章の総量が作品に対して不足しているからではないだろうか。

これが先のツイートをもうちょっと詳しくした内容です。
いかがでしょうか。

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