OSIRIS-RExカプセル帰還 〜初期分析について〜

noteを再開した途端、こんな素敵なニュースが出るなんて運命としか思えませんが笑

NASAの探査機、OSIRIS-REx(オシリス・レックス、現地の発音だとオサイリス・レックス)のカプセルが地球に帰還したとのことです。

小惑星Bennu(これも日本語読みだとベンヌですが、英語だとべヌーのような発音をします。惑星の呼称に関しては国名と似たような感じで、様々表記揺れがあったりしますがそれはまた別の機会に)からのサンプル、つまり試料を持ち帰ってきたということですね。

私ははやぶさ初号機やはやぶさ2のサンプルを分析する研究室にいましたので、まさにかつての専門ど真ん中のワクワクする話題です。

プロジェクトの概要などは他に色々なメディアが書いているでしょうから、少しニッチなところで、この後まず最初に行われるであろう「初期分析」について少し書いてみようかと思います。

カプセルの中に封入されたサンプルは、この後予定されているラボに運ばれて分析されます。
その際、いきなり詳細な分析をするのではなく、まず「初期分析」と呼ばれるざっくりとした分析が行われます。

これは何のためかというと、おそらくカプセルの中には多くの石の粒が入っているはず(入っているといいですね…!)なので、それを大まかに分類するために行います。
目的をいくつかに分けてご説明しますね。 

①採取した試料の全体像を捉えるため
持ち帰ったサンプルは、まず一定期間はプロジェクトに関わる研究者が独占して分析・研究をします。
サンプルリターンミッションは無事に実行され、サンプルを持ち帰ってきただけで貴重なので、まずは「こんな石がありました」というだけで大きな報告論文になります。
それを書くために、ざっくりと採取したサンプルの分布を調べるのです。

②その後の分析によりよい試料を分配するため
持ち帰った岩石は全て同じ分析にかけられるわけではありません。
無機物を分析する人もいれば、有機物を分析する人もいます。特定の化合物を見つけたい人もいます。
なのでまずはできるだけ破壊しない形でそれぞれの石粒の特徴を掴み、プロジェクトチーム内それぞれの分析・研究に最適な試料を分配する役割もあります。

③公募研究に向けて
ある一定の期間が過ぎると、サンプルの分析はプロジェクト外の研究者にも門戸が開かれます。
その際、希望する研究者は「こんな研究がしたいのでこんな石をこのくらいください」というプロポーザル(つまり提案書)を書きます。
そこで採択された研究者に試料が分配されるわけですが、その際もある程度試料の概要がわかっていることで応募者は自分のやりたい研究ができるかどうか判断しますし、採択され試料を提供する際にもそのデータを参考に希望に沿った石が配分されるわけです。

…と、こんなところでしょうか。
このような初期分析を経て、各専門の研究者の手にわたり、詳細な研究がなされていきます。

かつての記憶を呼び覚まして書いてみましたが、もし界隈の方で「もっとこうじゃないか」みたいなコメントがあればぜひお待ちしています笑

はやぶさ2のサンプルが帰ってきたとき、私の恩師である北大の圦本教授は「玉手箱を開けたよう」と表現していましたが、OSIRIS-RExにとってはまさに今がそのタイミングです。
何が出てくるのか、はたまた出てこないのか、いちファンの立場として期待したいと思います。

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