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美術品として、オモチャとして。ドールハウスから広がるミニチュアの世界

「ミニチュア」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

“小さなもの”という意味のミニチュア。街の情景を小さく再現したジオラマや、食べ物を小さくしたミニチュアフードなど、近年のミニチュアには様々なものが存在しています。

そんなミニチュアにも起源があり、それは「ドールハウス」とされているのです。もともと建物や内装を小さく施したドールハウスから派生して、ジオラマやミニチュアフードなどが誕生しました。
さて、ミニチュアの起源ともなるドールハウスは、一体いつ頃から誕生したのでしょうか?
本記事では、ドールハウスの歴史をご紹介いたします。


大人のためのドールハウス

ドールハウスの最も古い記録は、紀元前のエジプト文明にまで遡ります。しかし現在のような趣味におけるドールハウスの誕生は、16世紀初頭にドイツ・ババリア地方の公爵アルブレヒト5世が熟練の職人たちに作らせたものからはじまりました。

アルブレヒト5世の肖像画
(Public Domain /‘Portrait of Albrecht V’ by. Hans Muelich Image via WIKIMEDIA COMMONS)

残念ながらこのはじまりのドールハウスは火事によって焼失してしまいましたが、現存する最古のドールハウスはドイツにあるゲルマン国立博物館にて保存されています。

その後17世紀から18世紀にかけ、貴族の人々は公爵アルブレイト5世のように、職人に自身の屋敷を再現したドールハウスを作らせるようになりました。熟練の職人の手がける精巧なドールハウスは、地位や名声を表すものとされていたのです。

また1600年代後半になると、オランダの裕福な貴族やコレクターたちは、美術品の収集品にドールハウスを加えるようになりました。その理由には、本物のように再現された巧みな作りと象牙や銀などの希少な材料が使われていたことから、大変価値のあるものだと認識されるようになったからです。

そうして収集されたドールハウスはキャビネットに入れられ、インテリアとして楽しまれたといいます。このことから、当時のドールハウスには扉のついたものが一般的でした。

子どものためのドールハウス

これまで高価な美術品として扱われていたドールハウスですが、18世紀末になると産業革命の影響により、既製品のドールハウスが大量生産されるようになりました。
その後19世紀になるとドールハウスの値段が安価になり、一般市民にも手の届きやすい存在となったのです。以前はキャビネットに入れられた扉付きのドールハウスが一般的でしたが、大量生産によって扉のついていないものが増えていきました。

一般市民でも手が届きやすくなったドールハウスですが、女の子のいる家庭では教育玩具として買い与えるようになります。これは日本の“おままごと”のように、生活ルールなどの一般常識をドールハウスを使って学ばせるためでした。
こうしてドールハウスは人々の手に渡るようになり、インテリアやオモチャとして普及していったのです。

さいごに

今も昔も大人から子どもにまで親しまれているドールハウスの歴史、いかがでしたか?
はじめは裕福な層だけの楽しみでしたが、産業革命のおかげで現代のように大人から子どもまで気軽に親しめるようになりました。

教育の一環として女の子に買い与えられたドールハウス。一方で男の子にはブリキの兵隊(スズの兵隊)が買い与えられていたそうです。これはのちに「ミニチュアゲーム」の起源にもなっています。

また、19世紀後半までは現在のようにスケール(縮尺)の定義などは決められていませんでした。このミニチュアの定義が決められたのは、20世紀初頭。英国王女の一つのアイディアがきっかけになっています。

ミニチュアの世界はドールハウスを軸に、大きく枠を広げていったのですね。小さくても壮大なミニチュアの魅力は、まだまだ広がっていくでしょう!

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