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フランス、西アフリカ、新植民地主義、そして競争(翻訳)

この記事は、2022年8月17日にANKASAMの公式サイトに投稿されたセムレ・チャグレ・アタマー氏による↓の記事を日本語に訳したものです。中学生の訳なので、不正確なところもあるかもしれませんが、ご了承ください。

2022年7月31日、マリ政府はフランスのエマニュエル・マクロン大統領 に対し、「新植民地主義」の姿勢を放棄するよう求めた。同声明では、フランスはマリおよび同地域への軍事的・経済的なプレゼンスを利用し、「新植民地主義」政策を進めていると非難されている。軍事面ではアルカイダなどのテロ組織との戦いを理由にフランスが国内に設置した基地が、経済面ではフランス銀行で印刷され、マリを含む西アフリカ7カ国で使用されているCFAフランが、この批判のおおまかな論点だ。 この二つの事実はフランスによる西アフリカの安定化のための手法として提示されているものの、同時に、パリに対する西アフリカ諸国からの反感の原因となっている。また、マリによる声明は、西アフリカの植民地全体におけるフランスのあり方についてもスポットライトを当てている。

西アフリカに位置するマリでは、イスラム教徒が大半を占めている。19世紀末より「フランス領スーダン」という名の下でフランスの植民地だったこの国は、1960年に独立を果たした。1992年の選挙までは独裁政権が続き、部族間の激しい対立と強力なテロ組織の両方がマリの政治を混乱させ続けてきた。2013年に彼らがフランスに軍事介入を求めたことは、マリの公用語がフランス語であることとあわせて、現在の植民地に関する論争の根底をなしている。また、この問題はマリに限らず、他の西アフリカのフランスの旧植民地国家でも生じている。

西アフリカにおけるフランスの植民活動は、1637年にセネガル川の大西洋側で始まり、時間をかけて内陸部へと広がっていった。フランスの植民地主義は、フランス第五共和政が始まって間もなく、セネガル、モーリタニア、マリ、ギニア、コートジボワール、ブルキナファソ、ベナン、ニジェールにまで広がり、そこで拡張を終えた。フランスは300年以上にわたって、西アフリカで奴隷となった人々を売買するなど、さまざまな方法でこの地域の資源と人々を搾取してきた。つまり、パリの行政府は植民地を通じてフランス経済を発展させたのである。

他の旧宗主国たちと同様に、フランスは植民地時代以降も旧植民地との結びつきを維持した。フランスの経済システムの現実は、搾取者と被搾取者の関係という枠組みの中で形成されたものである。植民地は一般に、主要なサプライチェーンの外で原材料を産出する地域だ。独立後も植民地は「市場」とみなされ、フランスのような資本主義国家に有利に働くシステムを作り出している。

マリでは2020年8月と2021年5月に軍事クーデターが発生し、同国の治安危機に加え、政治危機も顕在化した。フランスは2013年、イスラム過激派の反乱に対抗するため、初めてマリに軍隊を派遣した。しかし、2020年初め、パリはこの国の軍隊を撤退させることを発表した。マリ政府報道官のアブドゥライ・マイガ大佐は、2022年7月25日から28日までの3日間、ベナン、カメルーン、ギニアビサウを訪問したマクロン大統領の発言を受けて、「マクロン大統領には、新植民地主義的で、父権的で、国粋主義的な姿勢を永久に捨て、マリ人以上にマリを愛せる人はいないことを理解してほしい」と述べている

マクロンは、訪問中のマリ情勢に言及し、マリ国民が主権を表明し、テロリスト集団との戦いを継続するための枠組みを作るなど、本質的な責任を負っていると述べた。また、マクロンはマリ政府とロシアのPMC(民間軍事会社)であるワグネルの関係にも言及したが、マリの意思決定者はワグネルグループがマリ政府に雇用されるとの主張を否定している。

経済的に、フランスはマリの意思決定者にとって重要な資源供給国であると考えられているものの、近年は中国のシェアがフランスを上回っており、パリ政府は北京やモスクワとの影響力競争の中にいる。実際、フランスが「新植民地主義」と評される政策の背後には、これらのアクターとの競争関係がある。

ここで、この地域における競争の力学について述べておこう。中国は西アフリカにおいて最大の投資家であり貿易相手国である。一帯一路のプロジェクトの中で、沿岸諸国の港湾の存在は、中国にとって魅力的なのだ。また、西アフリカ諸国が中国に関心を持つのは、北京が欧米と異なり、投資の見返りに「民主化」を求めないからだ。

一方、中国は海賊やテロ活動の枠組みの中で安全を確保するために、地域の国々に軍事的な支援も行っていた。例えば、北京は2017年、アフリカ待機軍(CADSF)に対して1億ドルの資金援助を行った。中国は、この地域の治安状況を改善し、自国の投資相手を保護しようとしているのだ。現状、北京は西アフリカにおけるパリの影響力に対し、とりわけ経済的な側面で挑戦している。

ロシアがアフリカ諸国との商業的関係を年々増やしていることは見て取れる。同時にモスクワによる西アフリカ地域での政策では、軍事訓練や兵器提供が前面に出ている。例えば、フランス軍のマリからの撤退以降、同国ではワグネルグループの活動が活発化していることが確認された。(加えて、ワグネルグループがロシアの利益に奉仕していることを強調しておこう)

これらの競争相手の存在に応じて、フランスの西アフリカ諸国との関係は、新植民地主義的な方針で作られている。この状況は、同国の植民地時代の過去と密接に関連していて、パリは自国の利益を達成するために植民地主義の論理に基づいた行動を取っている。しかしながら、これらの政策は、「民主主義」や「人権」といったヨーロッパの価値観を表面上用いながら実行されている。かたや西アフリカ諸国は、何世紀にもわたって搾取されてきた影響で、危機の渦に引きずり込まれている。これが反植民地主義的感情を誘発し、その結果、この地域では中国やロシアの影響力が高まっている。したがって、マリや西アフリカ全般において、宗主国としての過去を持つフランスの影響力が低下することは明白であり、ロシアや中国の影響力が増すことは不思議ではない。

アンカラに拠点を置くシンクタンクの記事でした。ANKASAMはその立地からかロシア関連の情勢に敏感で、興味深い事柄を多く取り上げています。この記事も、普段アフリカに関心を持っていない方でもわかりやすくおおまかな情勢の流れについて書いていて、ぜひとも日本でも共有していきたい、と思い翻訳させていただきました。

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