革命のアボカド
マグロ丼に添えるためのアボカドを切っていた。
種を避けながらグルリと一周切り込みを入れて、真っ二つに切る。種の取り除き方はいろんなやり方があると思うんだけど、私は包丁の下の部分(「刃元」というらしい)で、種をガッと刺して取る。
種と実の結束が強いときは、なかなか取れないこともありますが、大体はそれでスポッと取れます。
いつものやり方で、種にガッと刺したとき、同時にシュルッという滑る音がして、刃元がサクッと私の手のひらの下の部分(月丘というらしい)に収まった。
「え…!??あ、あっつぅ〜〜!あ、いたい!!」
痛さよりアツさが一番にくる衝撃。
手のひらを見ると綺麗な太刀筋が一本。
パックリと割れて、肉が見えている。
痛みとは裏腹に、出血には時間がかかりそうな感じ。
そこですぐに気づいた。
「私の手、まだ切られたことに気づいてない!!」
まさに北斗の拳状態。
「お前はもう死んでいる」の直前である。
起きかけた赤子をあやしてまた眠らせるように、真っ二つになった月丘をもう片方の手でギュッと閉じ、何もなかったのだと手に思い込ませる。しかし、これで誤魔化せる時間など数秒だ。
急いでキズパワーパッドを貼り、月丘が「アベシ!!!」と言い出す前に傷跡を塞ぐことに成功した。
貼った後、キズパワーパッドの下で静かに血が滲んでいたが、もう大丈夫。私は安らかな顔で傷を撫でながら「おやすみ」と言った(言ってない)
そうか。傷って、気づかなければ痛くないものなのか。
なんてことを考えていると、私の中でふと、ある事件が重なった。
ここから先は
1,075字
私の脳、肉体の創作代とさせていただきます。 ありがとうございます。