和田浩明『彼女はなぜ、この国で』

ウィシュマさん死亡事件は、最低でも業務上重過失致死罪、いや違う、そんななまやさしいものではない。
この事件こそ不作為による殺人罪ではないだろうか?
病気の症状を訴え、病院に連れていってほしいとのウィシュマさんの必死の訴えに対して、頭から詐病と断じ、病院に連れて行かずに死に至らしめた入管側の判断には、もし、病気が本当で、治療が遅れたことで結果としてウィシュマさんが死ぬようなことがあっても、それはそれで仕方がないという未必の故意があったのではないだろうか?/

入管施設、いや日本の入管制度そのものが、フランツ・カフカ「流刑地にて」の処刑機械なのだ。/

◯収容所での死亡者数(1993年〜2022年):26人/
死因:病死(脳血管疾患や心筋梗塞など)16人、自殺8人、暴行死2人/
(山村淳平著『入管解体新書: 外国人収容所、その闇の奥』)/

この数字は、氷山の一角に過ぎないだろう。

【入管内の医療対応は普段から不十分で、「病気が重症化して命の危険が生じると仮放免にするケースが多い。(施設内で)死んだら都合が悪いからでしょう」】(NPO「北関東医療相談会」代表 長澤氏)/

ウィシュマさんの死は、決して初めてのケースではなく、最後でもないだろう。
なんとしても、この非人間的なシステムを変えなくてはならない。/

合計4年半も入管施設に収容され、心と体を病んだイラン人のサファリさんは、法廷での意見陳述で、声を振り絞った。/

【「オーバーステイ(略)は間違いない。でも、私たちは人間ですよ。日本が好きだから30年いる。帰れない理由がある。命にかかわる問題だから帰れない。そこをちゃんと調べないで、自分らであなただめ、だめ、だめと言われたら、私たちはどうしたらいいのか。今まで日本で暮らして日本の文化が体に染みついている‥‥‥どうして入管はそうやって私たちをいじめるのか。私たちは日本という国に助けを求めているのに、どうしてそうやって私たちを蔑むんですか‥‥‥ほとんど刑務所と同じ扱いじゃないか。どうして?ほかの国だったらともかくさ、ここは日本だよ‥‥‥」】/

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