チョコレイト工場の町を走りながら幸せについて思う
仕事を終えて自転車をこいで帰宅する途中、チョコレイト工場の横を通り過ぎる。甘い香りが空気に充満して、マスクを外して深く息を吸い込む。実際に食べているわけじゃないのに、口の中が甘くなる。はあ、幸せ。
マッキーこと槇原敬之の歌詞に出てくる町に住んでいる。町にチョコレイトの香りがするのは冬だけ。風向きの関係なのだろう。甘い匂いが立ち込める冬は、だから嫌いじゃない。
順調だったわけじゃない。離婚を考えたこともある。子供の病気もあった。全部がいい思い出だったとはまだ言えない。
でも50年、この町で暮らしてきた。世界で一番素敵な恋だったかどうかはわからないけれど、この町で恋をして結婚し、子どもを育てた。世界で一番かどうかはわからないけど、それなりに幸せ。
仕事とライターの2足のわらじは大変だけど、そこそこ経済的な余裕も持てるようになったし、余裕が出てきたら夫との関係も平和になったし。子供は元気で来年就職が決まったし。これ以上何を望む?
堤防を走りながら、鼻歌でマッキーを歌う。幸せってなんだっけ……と途中で懐かしのCMソングに変わっていた。
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